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─ 類 ─




司を見送ってそのまま家に戻ってきた俺に



お手伝いさんが小さな箱を手渡した






「類様、牧野様からこれをお預かりしてるのですが。」





「・・・えっ・・牧野から・・って、
 牧野がここに来たの?」





「はい。類様がお出かけになられたすぐ後にお越しになられて、
 これをお預けになってすぐに帰られました。」






受け取った白い箱を見つめながら



なんだか胸騒ぎがして急いで自分の部屋に戻り中を開けた






中に入っていたのは・・・・




花沢類様で始まる手紙と紙袋・・・







────────花沢 類 様



「突然の手紙でびっくりしたでしょ。
 ごめんね。

 私は今日、留学をする為に日本を離れます。
 みんなに黙って行ってしまうのは心苦しいけど、
 でも留学はいいチャンスだと思っています。

 私は、あなた達に出会えた事によって知った広い世界を
 見てこようと思います。

 今の私はまだ上手く笑う事は出来ませんが、
 それでも私は私らしく生きて行きたいんです。
 だから、しばらく一人でがんばってみます。

 みんなには花沢類からよろしく言っておいてください。


 それから、同封してある紙袋はもしも道明寺が私の事を
 思い出したら渡してください。
 本当は自分で渡せれば一番いいんだろうけど
 それは出来そうにないのでお願いね。


 こうやって手紙を書いていると、今までのいろいろな事が
 思い出されて書きたい事が上手く整理できないので、
 この辺で終わりにします。


 また、いつか、どこかで会える時を楽しみにしています。

 それまでお元気で。


 さようなら。
 
 ────────────牧野つくし」








手紙を読み終えてしばらく呆然としていた





でも何度か手紙を読み返しているうちに牧野らしいとも思った







ベッドに寝転がり窓から見える空に向って


何も言わずに行ってしまった彼女へ心の中でエールを送る







がんばれ!牧野!






穏やかな午後の日差しに誘われて心地よい眠りに落ちる・・



これからは夢の中で君に会えたらいいね・・・








─ つくし ─






空港に着いて搭乗手続きを済ませ


そろそろゲートへと向おうと歩き始めた時


私の名前を呼ぶ声が聞こえた





「牧野!」






聞き覚えのある声に振り返り声の主を探すと・・






「・・西門さん?」







予想外の人物が肩で息をしながら駆け寄ってきた・・




「・・ど、どうしたの?」






私の問いかけにも彼はいつもの笑顔で





「見送りに来た。」






と少し照れたように言った彼に思わず涙が溢れ出しそうになる・・




嬉しかった





何も言わずに行こうとしていた私を責める事なくただ笑顔で背中を押してくれる・・・





道明寺とも花沢類とも違う





彼なりのやさしさを私にくれる人





最後に背中を押してくれる人






彼に渡された電話番号





きっとかける事はないだろうけどお守りがわりに持っていこう








きっとどんなに離れていても



きっとどんなに時間が過ぎようとも



変わる事のない絆・・




それを信じて今は行けるところまで行ってみよう!













翌日、類は大学のカフェで昨日の牧野からの手紙をあきら達に見せていた




あきら達は何も言わずに黙って手紙を読んでいる






「そっか〜、あいつも行ったのか。」




「うん。」




「つくし、どこに行っちゃったんだろうね?」





「どこだろうね?でも牧野の事だからきっと
 何処に行っても大丈夫だと思うよ。」





「そうですね。先輩の事だから次に会う時は
 きっと私達をびっくりさせてくれますよ。」




「あ〜 もう私もうかうかしてられない!!
 つくしに負けないようにがんばらなきゃ!」





「そうですね、私もがんばりますよ!」





「お前ら二人ががんばるのって結構怖いかも!」




「なによそれ!ちょっとアッキーどういう意味よ!」





「・・・・えっ・・・あっ・・なんでもない!
 で、がんばるって・・とりあえずどうするんだ?」





「う〜ん、どうしよっか?桜子?」







「そうですね。とりあえず皆さんはちゃんと講義に出たらどうですかね?」






「ハハハハッ・・・桜子、それはいい考えだな。
 たまには真面目に講義受けてみるか!?」



「ところで総二郎の姿を今日見たか?」






「さっき見たけど。
 校舎の方へ歩いて行ったよ。」





「あいつまだこの事知らないんだよな?」





「言ってないよ。」





「そっか、じゃぁ教えてやるか。」




そう言って類とあきらが席を立った






「ちょっと待ってよ〜!滋ちゃんも講義に出る!
 それじゃぁね〜 桜子!あんたもちゃんと授業受けなさいよ!」




「分かってますよ!」






桜子も授業を受ける為にカフェを出て高等部の方へと歩き出す



不思議と足取りは軽かった・・・




それぞれが未来へと向って歩き始めた瞬間





いつの日か再び出会うために





その日を笑顔で迎えるために
















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