自分の車を運転して空港に向う




NYの街中は相変わらずの渋滞で



ノロノロ運転だったけどなんとか時間には間に合った






ターミナルビルに入るとちょうど総二郎が到着ゲートから出てきたところだった







「総二郎!」







私の声に彼が軽く手を挙げてこちらに歩いてくる






「よお!」




「迎えにきたよ。」






「おう!サンキュ!」






すぐに二人で並んで出口へと歩き始めたのだけど・・





彼はいきなり立ち止まり私の顔を見ながら






眉間にしわを寄せて何やら考えている様子・・・









「なぁ・・もしかしてお前、自分で運転してきたりしてないよな?」





「してきた。」





「キーかせ!」





「ヤダ!」






「ダメだ!俺が運転する!早くキーをよこせ!」





「もう!」






しぶしぶ総二郎に車のキーを手渡す




彼は私の運転する車には絶対に乗らない





理由は・・・怖いから・・らしい・・のだけど








この前だって・・




“俺はまだ死にたくない!”



とか




“俺はお前と心中する気はない!”


とか






散々悪態ついて私から車のキーを取り上げていた







本当に失礼な奴!











彼の運転する車がマンハッタンに向けて走り出す





今回、総二郎がNYに来た理由は“お茶会”・・





仕事で来たのだ






「ねぇ お茶会ってどこの主催なの?」





「メープル」






一言だけの短い返事







「そう。じゃぁ今回はメープルに泊まるの?」







「いいや。お前のとこ。」







「そう。」







彼は最近では私のアパートに泊まっている





別に彼と付き合っているわけじゃないし



ましてやそういう関係でもない







ただ、私のアパートのゲストルームの一つが彼の部屋になっているだけ



だから合鍵だって持っている




たまにやってくるルームメイトみたいなものだ






たまにやってくると言えばもう一人




私のアパートの合鍵を持っている人物がいる





マットだ・・・



彼は不特定多数の“運命の女”の人と同時進行中なため



夜中に急に自分のアパートに帰れないという事態に陥る事がある






そんな時は緊急避難先として夜中に急に私のアパートにやってくる






夜中に眠っているところを叩き起こされるのはごめんなので


彼にも合鍵を渡してある





最近では慣れてしまったけど




朝起きるとマットがいてびっくりするという事がある






車の窓から外の景色に目をやっていると総二郎の声が聞こえてきた








「どうしたんだ?ボーっとしてるぞ。」







「・・あっ・・うん・・ちょっとね、考え事してた。」






「司の事か?」







「どうして急に彼が出てくるのよ?」






「なんとなくな・・」







「そう、でも案外当たってるかもしれない・・」







「何かあったのか?」







「う〜ん、今日は変な一日だな〜って思ってね。」







「変な一日?俺に言わせるとお前はいつも変だろ?!」








「・・失礼ね!私は普通よ。」







私の抗議の声も彼は軽く受け流して






「・・で、何があったんだ?」






「今日ね新聞に道明寺の事が載ってたの、
“熱愛発覚”って書いてあった。」







「気になるのか?」






「う〜ん、どうなんだろう?分からないんだ・・
 それにお昼にランチを食べてたレストランで花沢類に会った。」






「・・そうか、あいつもこっちに来てるからな。」






「うん。出張中だって言ってた。
 今日あなたも来るから一緒に食事に行こうって誘われた。」






「OKしたのか?」






「う〜ん。なんか急に花沢類に会っちゃって
 どう返事していいのか分かんなくて思わずOKしちゃったんだけど、
 大丈夫だった?」





「俺は全然OKだけど、お前話したのか?」







「ううん、時間がなかったから話してない。
 けど連絡先教えてくれって言われたから名刺は渡したけど。」







「ハハハハ・・・じゃぁ 類の奴、びっくりしてただろう?」







「うん。目がテンになってた。」







「そうだろうな。で、類から連絡があるのか?」







「うん。電話するって言ってたから、掛かってくると思うんだけど。」







「そうか。分かった。」







「ねぇ 総二郎・・・」






視線は外の景色に向けたままで・・






「何だ?」





彼も前を向いたまま・・






「私はもう牧野つくしじゃない?
 花沢類達が知っている牧野つくしはもう居ない?」







「いいや。今も俺の隣にいるよ。」







「ありがとう。」







「どういたしまして。」







車がゆっくりとマンハッタンへと入っていく








「お前、オフィスに戻るのか?」






「うん、一度戻らないとね。」






「マットはいるのか?」






「いると思うけど、どうかした?」






「久しぶりだから顔だけ見て行こうと思ってな。」






「そう。」









ビルの前に車を止め総二郎と一緒にオフィスへと戻った。






その時、私達を見つめる視線には気付いていなかった。
















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