誰かが俺を呼んでいる・・・





意識の深い深い場所で・・







ずーっとずーっと俺の名前を・・・・







薄く目を開けると共にゆっくりと覚醒してくる意識





急激に光を取り込んだ俺の視界が白くぼやける








─────二度目の恋の話しをしよう─────

「・・・た・・・なた・・・あな・た!」 「・・・ん・・・?」 「あなた!いい加減起きてください!  今日は優の結婚式なんですよ!」 「・・あ、ああ・・・」 ベッドの横に立ち俺を見下ろしているのは妻・・ 結婚してもう25年になる妻はすっかり出かける仕度をしている 「ああ・・」 「どうしたんですか?」 何も反応を示さない俺の顔をいぶかしげに覗きこんでくる・・ 「ああ・・ま・・きの・・・?」 懐かしい・・ 何十年ぶりかの呼びかけ・・ 「・・あなた・・?大丈夫ですか・・・?」 眉間に皺を寄せ夫である俺の顔をじーっと見ている妻の手にそっと触れる・・ 「牧野・・」 「あなた・・?もしかして・・?」 「ああ、思い出した・・ハァ〜・・」 そう言い終えて大きく息を吐き出す俺を 妻は信じられないといった表情で見ている だけど・・ やがて妻の大きな瞳に涙が溜まり・・ 口元を手で覆ったままゆっくりと瞳を閉じると 妻の瞳からは一筋の涙が零れ落ちた 「ごめんな・・長い間・・」 まだぼんやりとする頭の中を整理する 俺の名前は道明寺司 今年52歳になった 妻のつくしは51歳 結婚して25年 今日は長男の優の結婚式だ その朝に俺は遠い昔に失くしたままだった大切な記憶を取り戻した 何がきっかけだったのだろう? 何十年も思い出さなかった記憶を 今日取り戻せたのにはなにか意味があるのだろうか? だけど記憶を取り戻した今一番に思うことは つくしの事 ずっと俺の側に彼女がいてくれて良かった 本当に彼女で良かった          NEXT→
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