【65】







司はたった今、会議を終えてオフィスに戻ったばかりだった





秘書も下がらせソファーにどっかりと座り込みながら一息ついていた






「ったく!なんでこんな会議ばっか続くんだよ!」







思わず声に出た苛立ち




今日は朝から一日、会議室とオフィスの往復だけで過ぎてしまった



気がつけばもうこんな時間・・・





ソファーに体を深く預け左手でネクタイを少し弛める・・




オフィスに一瞬の静寂が降りてくる





こんな時、頭に浮かぶのはあいつの顔だけ・・




17歳のままの牧野つくし・・







会いたい・・



ただそれだけだった・・






時間が経てば経つほどに不安に押しつぶされそうになる・・






今、お前が目の前に現れてくれたら俺はもう何もいらないから・・



全て捨ててもかまわない・・



俺は二度とお前を離さないのに・・





そんな想いに身をゆだねているとふいに携帯電話が鳴った







『もしもし、司か?』





「ああ、総二郎か?」





『今大丈夫か?』






「ああ、会議が終わってオフィスに戻ってきたとこだ。」





『そうか、仕事まだかかりそうか?』





「いや、どうしたんだ?急用か?」







そう言いながら目の前に置かれていたコーヒーカップを取ろうと手を伸ばしかけた時だった・・・





電話口の総二郎が発した言葉が一瞬何を言っているのか分からなかった・・






『ああ、牧野が見つかったんだ。』






あまりにもあっさりと告げられた為、総二郎の言葉が上手く理解出来ず声が出ない・・






今・・牧野が見つかったって言ったのか・・?















俺の言葉に電話の向こうの司は黙ったまま


妙な沈黙が降りてくる・・







「おーーい!司!聞いてんのか?」




呼びかけると一瞬の間を置いて





『・・・ああ、聞いてる・・』




「牧野が見つかったんだよ!」





『ほ、本当なのか・・?!
 本当につくしなのか・・?!』






「誰が牧野の事でこんな冗談言うかよ!
 とにかくお前どうする?」





『どうするって!決まってんだろーが!今からすぐ行く
 お前、今、何処にいんだよ!?つくしも一緒なのか?』






司のあまりの声のでかさに総二郎は思わず電話から耳を離す





「いや、今は一緒じゃない。けどちょっと事情が複雑なんだ、
 確かめなきゃいけない事もあるからお前出てこられるか?」






『ああ、出られる・・けど、事情が複雑ってどういう事だよ!?
 あいつに何かあったのか?オイ!総二郎、教えろよ!!』





「電話じゃちょっと言いにくいから、今から言う店に来いよ。」





『分かった!すぐに行くから待ってろ!!』






そう言って電話が切られた・・・





俺の口からはもうため息しか出てこねぇー






「・・たっく、あいつは普通に会話が出来ねぇーのか?
 でっけぇ声で怒鳴りやがって!こっちは耳がいてぇーんだよ!」





「で、司は来るんでしょ?」








「ああ、すぐ行くから待ってろ!!だってよ!
 今頃、大慌てでこっちに向かってるだろうよ!」






「クックックックッ・・・」






「類・・お前・・この状況でよく笑えるよな!?」






「プックックックッ・・だって・・目に浮かばない?司の姿・・
 今頃、きっとリムジンの運転手さんに怒鳴ってるよ」






「ああ・・そうだな・・」






ハァ〜・・緊張感の欠片も見当たらない類の言葉に力が抜ける・・











【66】






しばらしくしてドアが勢いよく開いたかと思ったら司が飛び込んできた





飛び出して行く奴と飛び込んでくる奴・・






今日はきっとこのドアにとっては厄日だな・・



少し現実逃避しかかったところへ司の怒鳴り声で現実の世界へ・・







「オイ!つくしは何処だよ!?」







ハァ〜誰か一人でもまともに会話が出来る奴はいねぇーのか?





俺のため息になんか気付くはずもなく類がのんびりとした声で・・






「司、早かったね?」






もう、いちいち反応するのはやめよう・・



疲れるだけだ・・





「よお!とにかく座れよ!」







とりあえずいつもの軽い調子で声を掛け



もしもの時を考えて無理やり司を俺と類の間に座らせた






「何を呑気に話してんだよ!あいつは何処だ!?
 早く教えろよ!お前らつくしに会ったのか?」






「司、ちょっと落ち着けよ!あきらももうすぐ来ると思うから。」





「どういう事だよ!見つけたのはあきらなのか?
 それで、あきらは今、つくしと一緒なのか?」





「それもあきらが来れば分かるから。
 大人しく座ってろよ!」





「それにしてもあきら遅いよね?」





「そーだな・・もう着いてもいいころだと思うけど・・」






「お前らどう言うことなんだよ!?
 少しぐらい教えろよ!!」






司の怒鳴り声だけが響いている個室でやはり居心地が悪かったのか歩美が






「あの・・お取り込み中のところ、すいません・・
 私、そろそろ帰ります・・」






「誰だ!この女!?」






司のその声に反応したのは滋






「ちょっと、司!失礼な事言わないでよ!
 彼女は滋ちゃんの友達で橘歩美さんって言うの。
 そしてつくしのパリの大学の友達でもあるんだからね!
 今日、つくしが見つかったのだって彼女のお蔭なの!」






「パリの大学?!どういう事だ?!
 あいつパリに居たのかよ?
 類!本当なのか?」





「・・・どうやら、そうみたいだね。」






「そうみたいって・・でも、この前・・静もあきらもパリで見たのはつくしじゃないって・・
 あいつら俺にウソついてたってことか・・?」





「何か事情があったんじゃない?」






「ハァー?!俺に嘘つく事情って一体どんな事情なんだよ!」
「オイ!お前!何か知ってんのか?」







司は再び歩美に矛先を向けている・・・







「司!いい加減にしてよ!歩美が怖がってるでしょ!」
「ごめんね〜歩美、このバカ気にしなくていいから、
 それに歩美にもここに居て欲しいんだ、大学でのつくしの様子とか聞きたいし。いい?」







「わ、私は構わないけど・・いいの?本当に・・?」





「うん、大丈夫だよ!」







滋はそう言うと歩美を安心させようとニッコリと微笑んでいるけど


全く話しが見えていない司の苛立ちはピークに達しようとしている・・






「滋!つくしの大学ってなんだ!?」





「つくし、パリで芸大に通ってるらしいの。」







俺はあきらが来るまで俺達が考えている事を司に話すつもりはなかった


俺達が達した結論はあまりにも突飛すぎて現実感を伴っていない・・




だけど今にも暴れだしそうな司を落ち着かせるには


ある程度の事を話さなければこの場は納まらないと思った・・・







「滋!その先は俺が話すよ。
 司、今から話す事はあくまでも俺達が勝手に推測した事だから
 事実とは違うかもしれない。それでもいいか?」





「何でもいいから、さっさと言えよ!」






俺は今日一日に起こった全てを司に話した







途中、あきらが牧野と一緒だったというところで思いっきり胸倉を掴まれたけど


俺達が今日一日で達した結論・・・



牧野も記憶がないかもしれない・・




ことを伝えるとさすがに大人しくなった








「・・本当なのか・・?あいつの記憶がないって・・・
 それに子供がいるって・・・」






「ああ、多分な・・けどあきらにちゃんと確かめてみねぇーと分かんねぇ」






「ちきしょー!!あきらの奴、ずっとダマしてたのか!?」






「まだどういう理由で二人が一緒に居たのか分からないんだ!
 それを聞くためにあきらも呼んだから、もうすぐ来ると思うけど
 間違ってもいきなり殴りかかったりすんなよ!いいな!」






念を押す俺に司は無言のままだった






大丈夫か?今の俺の話し聞いてたか?












何なんだよ!あいつの記憶がないって・・




俺の事、覚えてねぇーのか・・?




どうしてこうなるんだよ・・




やっと見つけたのに・・





つくし・・




お前にはもう俺は必要ないのか・・?





ずっとあきらと一緒だったのか・・?




あきらの事、パパって呼んでる子供って・・




俺の子供だよな・・?





俺とお前の子供だよな・・・









【67】






やっとあきらが到着した





あきらの姿を見るなり司が立ち上がり



掴みかかろうとしたので総二郎が慌てて押さえ込んだ





やっぱり、こいつ・・俺の話し・・聞いてねぇー・・







部屋に入ってきたあきらは少し俯き加減で俺達から目を逸らしていた




「遅くなってすまない。」






「いいよ、こっち座れよ。
 何か飲むか?」






「いや、いい・・」





そう言ってあきらが座ったのはちょうど司の目の前





偶然、あきらと司はテーブルを挟んで向かい合う形になってしまった






司はまだ総二郎に片腕を掴まれたままであきらを睨み付けている





そこへ類が涼しい顔でいきなり確信に触れる






「ねぇ、あきら?
 牧野っていつから記憶が無いの?」






司から視線を逸らすように俯いたままだったあきらだったが


類の言葉には驚いたように顔を上げた






「・・お前ら・・なんで・・その事知ってんだ?」






「って事はやっぱり俺達の考えは当たってたんだね?
 今日、牧野に会ったけど俺達の事が分からないみたいだったから
 そうじゃないかなって思ったんだ。」






「そうか・・・」






「でも、どうして?あきらが牧野と一緒なの?
 まさか、あきらと牧野って結婚してるとかってないよね?」






「ああ、それは無い・・あいつは今、俺の妹になってる」





「いもうと・・本当だったのか・・?」






「牧野は6年前に美作家の養女になった。
 名前は美作櫻だ。」






「それは6年前から記憶が無いってことか?」





「そうだ。」






「ねぇ、あきら君?どうして?
 どうしてつくしこんな事になっちゃったの?
 お願い、教えて!」





滋があきらに縋り付くようにして聞いている・・・・






「6年前・・正確にはもう6年半になるな・・
 俺は車の中から雨に濡れて道端でうずくまってたあいつを見つけて
 屋敷に連れて帰ったんだ。どうしてあいつがあんな所に居たのか
 俺にもわからない。ただ屋敷に連れて帰ったあいつは熱がすごくて4日間意識が無くて、
 目を覚ました時は自分の名前すら覚えてなかった。」







「それじゃぁ・・先輩は自分が誰なのかも忘れてるんですか・・?」




「ああ、今でも思い出してない。
 牧野つくしって名前は俺が教えたから知ってるだけだ。」







「あきら、俺と類は今朝、メープルに居たんだ・・
 あの子供・・お前の子供なのか?」







「そうか・・今朝・・お前らも居たのか・・
 なぁ司・・俺があいつを屋敷に連れて帰った時、妊娠してたんだ、
 誰の子供かは言わなくても分かるだろ?」






「・・・俺の子供・・俺が父親なんだな・・?」





「そうだ、だけど櫻は子供の父親が誰なのか覚えていない。」




「だけど、それがどうして牧野があきらの妹って事になるわけ?」




「それは俺にも予想外だったよ。」




そう言ってあきらは初めて少しだけ顔を緩めた・・







【68】







ゆっくりと語られ始めた俺達の知らないあきらと牧野の時間







「俺はとにかく何も覚えてないあいつを放っておけなくて、
 親父にあいつが無事に出産するまで家で預かる事と
 後見人になって欲しいって頼むためにパリに行ったんだ。
 パリに着いたら待ってたのは俺の親父だけじゃなかった。」







「俺や総二郎のお父さんも居たんでしょ?」





「ああ、それに司の親父さんもな。」





「どうして?俺達の親父がそこに居たんだ?」







「親父達は牧野の事を知ってたらしい。
 ずいぶん前から司と牧野の事を知ってたみたいで、
 俺が聞いた時は全員”牧野のファン”だって言ってたからな・・」






「親父が牧野のファン・・?
 なんだそれ?」






「俺もそう思ったけど、とにかく俺がパリに行った時には全て決まってた。
 俺はそこで櫻を美作家で引き取る事、パリで俺と一緒に暮らすこと、
 櫻の情報を隠すこと、それに櫻の家族の仕事の事を聞かされて、
 後は俺が櫻を説得するだけだった。」






「親父がずっとあいつの事隠してきたってことなのかよ!?」






だから・・俺の横でいちいち怒鳴るな!




普通に話せ!







「あきらはそうする事が一番だって思ったんでしょ?」






怒鳴り声の司とは対照的に冷静な類の声だった







「ああ・・そうだな。
 あの時はそう思った。」






「でも、どうして司の記憶が戻った時すぐに教えなかったの?」






「あの当時はまだ出産前でパリでの生活にもやっと慣れはじめて
 精神的にも安定してきたところだったんだ。
 それに司は思い出したかもしれないけど櫻は何も思い出してないんだ。」






「それが俺に言わなかった理由だって言うのかよ!?」






「そうだ・・なぁ司?
 あの頃もし櫻が妊娠していて俺と一緒にパリに居るって知ってたらどうしてた?」






「そんなもん決まってるだろーが!
 すぐにあいつを迎えに行ったよ!」






「それで?」






「NYに連れて帰って、すぐに入籍したに決まってんだろ!
 分かりきったこといちいち聞くな!」






だから・・




怒鳴るなって・・!





「だから言わなかった。」






「あきら!てめぇー、さっきから大人しく聞いてりゃー
 勝手な事ばっかり言ってんじゃねぇーぞ!」






怒鳴ってはいたが大人しく座っていたので総二郎も油断していた



司がいきなり立ち上がりあきらに殴りかかった




慌てて止めに入ったが間に合わず部屋の隅まで吹っ飛んだあきら




滋と桜子に助け起こされたあきらの口元からは血が滲んでいた




まだ殴りかかろうとしている司を押さえ込みながら






「司!止めろ!
 類!ボーっと見てんじゃねぇー!手かせ!」







類は総二郎に言われて仕方がないという顔で司を止めに入った


さすがに二人に押さえ込まれて身動きが取れなくなった司は


大人しくなったが肩で息をしたままあきらを睨み付けている・・・






司の腕を引っ張り無理やりソファーに座らせようとしたけど


仁王立ちのままピクリとも動かない・・





そんな緊迫した雰囲気の中で全く周りの空気を読まない類が司を刺激する






「俺はあきらのした事、間違ってないと思うよ。
 もし俺があきらの立場でも同じ事しただろうし。」






・・ったく・・勘弁してくれよー類!



確かに・・俺だってあきらの立場だったら同じ事をしたかもしれないけど・・


今、それを言う必要ねぇーだろーが!





「類!これ以上、司を刺激すんな!」






類の言葉を聞いた司の怒りの矛先が今度は類に向かい始める・・






・・ったく単純バカ男!


いちいち反応すんな!!






「類!てめぇーもあいつに惚れてるからそんな事言ってんだろーが!
 お前も俺からつくしを遠ざけたいだけなんだろ!!」






・・どうして・・そうなる・・?





今にも飛び掛りそうな勢いの司の横で類は平然とした顔のままで






「う〜ん、確かに今でも牧野の事は好きだけど。
 それは関係ないよ。だって、今の司に牧野を会わせても牧野は幸せになれないもん。」






類・・



もう・・いい加減にしてくれ・・






「んだとーー!?」





もう勘弁してくれよ・・



話しがちっとも前に進まねぇーじゃねぇーかよ!!






類の言葉を聞いてさらに怒りのボルテージを上げてしまった司の前にいきなり滋が歩み出た









【69】








滋が司の前に立つと同時に物凄い音が部屋中に響いた・・・





『バシーーーン!!』






音の正体は滋が司の頬を思いっきりひっぱたいた音だった






その場にいた全員が驚きで動けない中で滋だけが






「司!いい加減にしなさいよ!!」





「滋、やめろ!」






総二郎が慌てて止めに入るが興奮している滋は止まりそうにない・・



今度ばかりは類もしっかりと司を押さえている・・・







「つくしは今、あきらが私達と会ってるって知ってるんでしょ?
 だったら痣なんて作って帰ったらつくしはどう思うと思うのよ!
 つくしの事だから自分のせいであきらが殴られたって思うに決まってるじゃない!
 きっとまた自分を責めちゃう!
 つくしを愛してるって言いながらどうして悲しませるような事ばっかりするのよ!」




「それにさっきつくしをNYへ連れて行くって言ったわよね?
 あんたそれでつくしが幸せになれるって本気で思ってんの?
 だとしたら本物のバカよ!!」






「なんだとー滋!てめぇーいい加減にしねぇーと女でも容赦しねぇーぞ!」






「殴りたければ殴ればいいでしょ!だからバカだって言ってんのよ!」
「記憶の無いつくしに自分が子供の父親だって言えばそれで済むと思ってんの?
 で、NYへ連れて行ってどうすんのよ!?」






「そんなもん決まってんだろーが!何度も同じ事言わせんな!
 俺にはあいつが必要なんだよ!それに子供の父親は俺だ!あきらじゃねぇ!!」





「そう!あんたにつくしが必要だからつくしは幸せになれるの?
 誰も知り合いのいないNYで子供と二人で忙しいあんたの帰りを待ってる
 だけの生活がつくしにとって幸せだって言うのね?
 どうなのよ!なんとか言ってみなさいよ!!」



一気に捲くし立て肩で息をした滋はそれでもまだ治まらずに




「そうだって言うんだったらあんたは本物のバカよね!
 司、全然成長してないじゃない!昔っからつくしの気持ちも
 考えないで自分の気持ちばっかり押し付けて、今だってそうでしょ?!
 あーもう!そんな司、見てたら無性に腹が立つのよ!!」






滋の言った事は間違っていない・・・



確かに今の牧野にNYで司と一緒に生活しろと言うのは間違いだ


そんな事をしたら上手くいくものもいかなくなる



司の気持ちも理解出来るがやっぱりあきらの下した決断は正しかったのだと思う




だけど滋に一気に捲くし立てられバカだと連呼された司も興奮が治まらない・・







「ハァー?!お前の腹なんてどうでもいいんだよ!!」





「あんたにじゃないわよ!自分によ!!」






「滋さん、落ち着いてください。」





見かねて桜子も声をかけるが・・






「私は落ち着いてるわよ!ずっと考えてたの。
 あの時、司とつくしを島になんて連れていかなければって・・
 こんな事になってなかったのに・・って
 私が余計な事したから・・」





涙で最後まで上手く話せない





「滋、そんな風に自分を責めるな。
 大丈夫だから牧野だってそんな風に思ってないよ。
 だからもう泣くな。」






総二郎がしゃくりあげるようにして泣いている滋を抱きしめ優しく背中をさすっている





「そうですよ滋さん、みんな分かってますよ」







「滋、すまない・・」






司だった・・




すっかりテンションダウンしてしまった司は






「分かってるよ、俺だって・・・
 だけどどうすればいいか分かんねぇんだよ!
 なぁ、あきら、あいつに会わせてくれよ。
 俺、あいつに会いたいんだ、今日までずっとあいつの事だけを
 考えて生きてきたんだ、頼む・・」






司に先ほどまでの勢いはもうない


今はただ肩を落として俯くだけ






「ああ、分かってる。
 今回はお前らに会わせてるために二人を連れて帰ってきたんだ。
 だけど今日は無理だ。」







「じゃぁ、いつならいいんだよ!」






「時間に余裕があるって言っても、一応俺も櫻も仕事で帰ってきてるんだ。
 それに今週末は二人を連れて福岡に行く事になってるから、
 帰ってきてからしか時間が取れない。」







「福岡・・?何があるの?」







「櫻の両親が今、福岡に居るんだ。
 まだ思い出してないけど一度会わせてみようと思って。」








「そっか、それじゃあ仕方ないね。
 俺たちも仕事あるし。」







「すまない、もう少し待ってくれ。」








「あきらが謝ることじゃないよ。
 そうでしょ?司?」






「・・あ・・ああ・・」






喉の奥から苦しそうに声を吐き出した司が心配で総二郎は司の肩に手を置いた・・







「ねぇ、つくし大丈夫だよね?
 私達、つくしに会えたのが嬉しくて驚かせちゃったよね?
 ごめんねって謝っておいて。」







「気にするな。櫻もお前らに謝っておいてくれて言ってた、
 驚いて話しも聞かずに逃げ出してごめんなさいって言ってたよ。」






「つくしに大丈夫だからって言っておいてね。」








「分かった。」




















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