【128】 【129】 【130】 【131】 【132】















【128】







道明寺の後について彼のオフィスへと入る






ドアを開けると彼が私の背中を軽く押した







「すご〜い!!」







櫻をオフィスへ招き入れると


彼女は大きな声を上げて窓へと向かって走り出した









俺のオフィスの窓は足元まで全面ガラス張りになっていて

中からは外の景色が見えるようになっているが外からは中は

覗けないスモークガラスになっている







櫻は窓に両手をついて下を見下ろしている









「ねぇ、ねぇ!すごいね!
 ほら見て!車があんなに小さく見える!!」







弾んだ声で子供のようにはしゃいでいる・・・









そんな彼女の笑顔を見ていたら俺の顔も緩んでくるのが分かる








こいつが俺に笑顔を見せてくれるのが嬉しくて

そっと後ろから抱き締めた








抱き締めた瞬間、櫻の身体に一瞬力が入ったのが分かったが

構わずに抱き締めている腕に力を込め直し髪に顔を埋めた







「どうだ?凄いだろこの景色・・?
 お前にも見せたかったんだ。」








耳元でそっと囁くと櫻が抱き締めている俺の腕を掴んで

小さく頷きながらありがとうと言った









その声を聞いた瞬間、俺の中で今まで我慢していた何かが弾けたのが分かった








櫻の身体を強引にこちらへ向けると顎を掴んで顔を上へ向けさせると口唇を塞いだ・・









腕の中で櫻が暴れているが構わずにキスを続ける・・・






しばらく暴れていたやがて観念したのか抵抗を止めて大人しくなった








俺はそれがOKの合図だと解釈してますます濃厚なキスを繰り返す









まぁ〜そうは言ってもキスしてるのは俺一人で櫻は俺のキスに応えてはくれてないけどな・・





それでも構わずにキスを続ける俺・・






櫻から口唇を離すことが出来ない・・・








どれぐらいの時間そうしていたのだろか・・?








ゆっくりと繋がったままの口唇を離すとキスの余韻を楽しむように

目を閉じて優しく抱き締めていた・・





が・・・






やっぱりと言うか・・・





変わらないと言うか・・・






櫻の渾身の一撃をわき腹に喰らった・・・








『グエッ・・!!』







一瞬、息が詰まる・・・









「なにすんだよ!イテーだろーが!!
 ったく毎回毎回、ちょっとは手加減しろよなー!!」








「なにすんだよじゃないわよ!あんたこそ何すんのよ!!
 勝手にキスしてこないでよ!!」









「なんでだよ?!いいじゃねぇーかよ!
 それになんでお前にキスすんのにいちいち許可がいるんだ?!」









「いるのよ!許可が!!
 私の口唇なんだから勝手に塞がないで!!」









「じゃあ俺がキスしてもいいか聞いたらお前は素直にキスさせんのか?!」








「ヤダ!!」








「ほらみろ!それにお前は俺のもんなんだからこれからも俺がキスしたいと
 思ったらするからな!覚えとけよ!それからいちいち俺を殴るな!!」








「ヤダ!私は誰のものでもないの!!」








「うるせぇーな!ちょっと黙ってろよ!!」








そう言うと彼はまた私を抱き寄せ髪に顔を埋めて耳元でそっと囁いた・・・









"お前と雛は俺のもんなんだよ・・・"










高校生だったあの頃と変わらない彼の想いが


私の心の奥深くに眠っていた想いを刺激する・・・







NYにいい思い出はない・・・






だけどあの頃、一人でNYまで来ようと思ったのは






彼に会いたかったから・・・






純粋にそれだけだった・・・














【129】





櫻の腕がゆっくりと俺の背中に回った・・・




益々、彼女を抱きしめている腕に力がこもる





離せなくなってしまう・・・




そんな俺と櫻を引き離したのはコーヒーを持ってきた女性秘書のノックだった・・・





ノックがした瞬間、俺を突き飛ばした櫻・・・





ハァ〜・・こんなとこも変わんねぇーんだな・・・







道明寺の秘書さんが私の為に持って来てくれたのはカフェオレ



道明寺が私がコーヒーが苦手だって伝えてくれていたのだろうか・・?




彼の小さな心遣いは嬉しいんだけど



うっとおしい・・・



私の横に座るのはいいんだけど・・




もうちょっと離れて座ってよ・・・



どうしてそんなにぴったりと身体をくっつけてくんのよ!!



身体をくっつけてくるだけじゃない・・



腕を肩に回してきている・・・





秘書さんが居るんだから離れてよ〜



恥ずかしいでしょ!!





コーヒーを持って来てくれた秘書さんはこの後の会議の追加資料だと書類を彼に

手渡すとオフィスから出て行った





再び彼と二人っきり




いや・・さっきからずっと私と彼だけなんだけど・・・




一息ついてその事を再認識しちゃったって言うか・・



ん〜・とにかく・・なんか緊張してきちゃった・・・



え〜と、なに話せばいいんだろう・・・?




そんなドキドキを誤魔化そうとカフェオレの入っているカップに手を伸ばした・・・






カフェオレを一口飲んだ・・んだけど・・・





まず〜い・・・




なにコレ?




これがカフェオレなの・・?




私の手にあるカップの中の茶色の液体は恐ろしく不味い・・・





これって本当にカフェオレ・・??




温かかったらまだマシなんだろうけど

冷めていて思わず噴出しそうになってしまう・・・


これって誰が淹れたの・・?





さっき持って来た女性の秘書さん・・?


彼女、カフェオレって飲んだ事ないのかしら・・?


道明寺のコーヒーはどうなんだろう?


チラッと横でカップを手にしている彼を盗み見るが・・・


表情は至って普通・・って言うか・・





ちょっとデレ〜っとした感じだし

彼のカップからはいい香りが漂ってきている





このカフェオレに深い意味は無いのかもしれないと思い彼の横顔をチラリと

盗み見ていると不意に道明寺がこちらを向いた・・・






ゲッ・・!!


思いがけず至近距離で目が合って照れる・・・


自分の顔が真っ赤になっていくのが分かる・・


それにつられるように道明寺の顔を真っ赤になる・・・






「な、なんだよ!?」





「・・んっ!?な、なんでもない!!」





慌てて目を逸らし少し俯き加減で答えるんだけど

上手く誤魔化しきれない・・・

落ち着かなくてカップを手に取るが口をつける気がしない


アタフタしている私に道明寺は




「なぁ〜俺、今日はまだ仕事が残ってるけどお前はどうするんだ?」





「う〜ん、取りあえずホテルに行こうと思ってるけど?」





「そうか・・」





一言だけ言うと彼は私から視線を逸らした





「どうしたの?」





「いや・・お前がNYに来たのって俺に会いたかったからじゃねぇんだろ?」






「うん・・そうだね・・」




やっぱり気になるわよね・・




私が一人でNYへ来た理由・・・





「なぁ・・何しに来たんだよ?
 教えてくれよ、お前が今なに考えてんのか・・」






「・・私ね・・ここにはいい思い出って無いでしょ?」





彼は私の言葉に少し驚いたようだったが
道明寺もあの日の事を思い出したのだろうか?
すぐに表情が曇り始めた・・・






「そうだな・・俺、あん時の事今でもすっげぇ後悔してる
 お前がNYまで来てくれたのに追い返す事しかできなくて・・
 ガキの自分がすっげぇ嫌で・・だけどあの時はお前の手を離すのが
 一番だって思ってた・・・けどな・・空港でお前が類と一緒にいるのを見て、
 やっぱお前・・類に取られちまうのかって思ったら・・・」


後悔していると言った彼の言葉が私を優しく包み込む






「道明寺・・分かってるから、もういいよ。
 あの時は仕方なかったんだよ・・私だってあの時は
 あなたと別れるしか道はないんだって思ってたから・・・
 私、確かにここにはいい思い出はないけど、あの時の気持ちは
 嘘じゃないから・・」






「気持ち・・?」






「そう、私がNYへ来たのはただ道明寺に会いたかったからで・・
 その一心で生活費はたいて飛行機のチケット買っちゃったのよ。
 だから私、もう一度ここであの時の牧野つくしの気持ちを感じてみようと
 思ってここに来たの。」





「それが俺に黙ってNYへ来た理由なんかよ?」





「・・そうだね・・ごめんな、なんか分かりにくくて・・」







「ハァ〜本当だよ!お前は昔っからややこしい女だよなぁ・・
 分かったよ!今日、一日だけお前を自由にしてやるよ!!」







一日だけ自由・・・?

どういう事・・・?







「一日だけって・・どうしてあんたにそんな事決められなきゃいけないの?」






素直に疑問を口にしただけなのに道明寺は青筋を立てて睨んでいる・・・



なんなのよ・・?





「ハァ〜・・」

なに?
どうして溜息つくわけ?





「お前、それ本気で言ってんのか?」




「だから何が?」





「いつも言ってんだろ!俺はお前と一秒でも長く一緒にいたいんだって!
 お前、俺の話し聞いてんのかよ!!」




「聞いてるよ。」




「だったらどうしてそうなんだよ?!
 お前、ここにいい思い出ないんだろ?
 俺だってそうなんだよ!ここにいい思い出なんて一つもねぇーんだよ!
 だからこれから二人でいい思い出作んだよ!!」





「私いつあんたと思い出作りたいって言った?
 あんたこそ私の話し聞いてるの?」






「言ったじゃねぇーかよ!!」






「言ってない!
 私はあの時の牧野つくしを感じたいって言ったの!
 だからあんたは必要ないの!」





「必要ないとか言うな!!」






「だって、そうでしょ?
 あの時、私とあんたが会ったのって5分ぐらいなんだもん。
 しいて言えば私のNYに必要なのは花沢類だよ!」






「お前!まさか類と待ち合わせしてるとか言うんじゃねぇーよな!?」







「そんなわけないでしょ!
 花沢類だって仕事が忙しいんだからそんな事頼めないわよ!
 それに連絡だって取ってないわよ!!」






思わず大声を上げた私に道明寺は一瞬疑わしそうな視線を向けたが

すぐに逸らすとテーブルに置いてあったコーヒーカップに手を伸ばした







「とにかく類とは会うなよ!!」





なによそれ?

あ〜あ・・なんだか懐かしい光景だわ・・・

昔も彼ってこうだったわよね・・

花沢類に対する嫉妬は異常な程で・・・

それってまだ続いてたのね・・・




だけどどうして花沢類と会っちゃいけないのよ!

彼とは友人なんだからいちいち道明寺に指図される筋合いじゃないわよ!!






「大きなお世話よ!」





勝手な事を言い始めた道明寺に頭にきてソファーから腰を上げた






「オイ!何処行くんだよ!?」




急に立ち上がった私に驚いて彼は私の腕を掴んだ





「何処だっていいでしょ!」




強引に彼の手を振り払い逃げるようにオフィスを出た






「ちょ、ちょっと待てよ!!」





誰が待つか!!





慌てて追いかけてくる彼を無視してエレベーターへと向かうが

一歩手前で捕まってしまった・・・









【130】





エレベーターの前で追いついた彼に後ろから腕を掴まれた




「ちょっと待てって言ってんだろ!」




私は何も言わずに彼を睨みつけているだけ・・・



そんな私に業を煮やしたのだろうか道明寺はまた抱きついてきた



「なぁ・・ちょっと待ってくれよ・・」




耳元で囁かれる言葉・・



自信満々な彼にしては珍しく気弱な声が私の頭の中に響いている・・



その声の心地良さに抱きしめられている腕を振りほどけない・・・




「なによ・・」



「俺の話しはまだ終わってねぇーんだよ。」




「花沢類とは会わないわよ!
 第一、彼は今、日本でしょ?会いたくても会えないわよ!」



「分かってるよ!」



「分かってるんだったらいちいち言わないで!」



「だ、だから・・ご、ご・・めん・・」




ん・・?



ウソ?



道明寺が謝ってる・・?



驚いて顔を上げるとそこには真っ赤になって



バツの悪そうに明後日の方向を向いている彼・・



「ねぇ・・あんた、今ゴメンって言った?」



「・・ああ・・悪りぃーかよ!」



顔はソッポを向いたまま・・



彼が謝った事には驚いたが、その後の態度があの頃と変わらない道明寺の姿に



思わず笑いが込み上げてきた



「笑うな!」



「クスッ・・ごめん・・」



一応、謝ったがやっぱり彼のレアな姿に可笑しさが込みあがってくる



そんな私を彼は恨めしそうな瞳で一睨みすると



「仕事が終わったら迎えに行くから一緒に晩飯喰おうぜ!」



「いいけど・・仕事、大丈夫なの?」



「ああ、大丈夫だ!」



大丈夫だって言い切った道明寺なんだけど・・



さっきから少し離れた場所でこちらの様子を窺うように立っている秘書さんが



私の視界に入っていた・・



「本当に大丈夫なの?あんたが勝手な事をしたら迷惑するのは秘書さんなんだからね!」



まだ抱きついてきたままの彼から強引に身体を引き剥がすと



秘書さんの元へと歩み寄った




「三ツ谷さん、申し訳ありませんが彼の今日のスケジュールを教えていただけますか?」



「えっ!・・あ、あの・・ですが・・美作様・・」



しどろもどろになりながら話す三ツ谷さんの視線は私を通り越している・・



「三ツ谷!余計な事しゃべんなよ!!」



秘書さん脅してどうすんのよ!



私と道明寺の間で板ばさみになっている三ツ谷さんに申し訳ないと思いつつ



もう一度同じ質問をした



「・・は、はい、本日は19時からファーガソン保険の取締役と会食の予定になっております・・」



やっぱり予定あるんじゃない!



「そんなもんキャンセルだ!」



「キャンセルしません!あんたはちゃんと会食に行って。
 仕事なんだから我が儘言わないで!」



「会食なんて何時でも出来んだろ!
 俺はお前と一緒に居たいんだよ!!」



「あんた道明寺財閥の跡取りなのよ!
 もうちょっと自覚を持ちなさい!とにかく今夜はダメだからね!」



静かなフロアーに響いている道明寺と私の怒鳴りあう声



「ダメじゃねぇーんだよ!
 とにかく今夜はお前と一緒にメシ喰うからな!」



ハァ〜・・ダメだわ・・



このままここで彼と話しを続けていても平行線のままだと思い



私はエレベーターのボタンを押した・・・



「とにかく今夜は予定通りに仕事して。」



そう言うと彼に背を向け上がってくるエレベーターの表示を見ていた



「ちょっと待てよ!」


「待たない!」



待て!待たない!の押し問答を続けているとエレベーターが到着し目の前でドアが開いた



瞬間、中に居た人物と目が合って思わず固まってしまった・・・











【131】




エレベーターから降りてきたのは魔女・・じゃなくて道明寺のお母様・・




相変わらずの彼女の表情に思わず後ずさりしてしまう・・




あの頃とは状況も立場も全然違うけど・・



やっぱり苦手・・



表情を一ミリも崩さないままのお母様は怒鳴り声を上げていた

道明寺に向かって





「司さん、大きな声を出してどうしたのですか?
 ここは会社ですよ、場所をわきまえなさい。」




「・・も、申し訳ありません・・」





ふ〜ん、道明寺もお母様にはちゃんと従うのね



そんな事に関心しているのもつかの間・・

道明寺を一発で黙らせてしまったお母様が今度は私の方へと向き直った




何を言われるのかと緊張していると

意外にもお母様の顔には微かに笑みが浮かんでいた・・




「櫻さん、お久しぶりね。
 足の具合はもうよろしいのかしら?」





「は、はい、ご無沙汰しております。
 足はすっかり良くなりました、その節はお花をありがとうございました。」






「そう、よかったわね。
 ところであなた方は何をもめてらしたのかしら?」







「そんな事どうだっていいだろーが!
 俺と櫻の問題に口出しすんな!」







「本当にそうかしら?
 三ツ谷、どうなの?」





「は、はい、司様が今夜の会食をキャンセルなさりたいと申されまして・・」






もう今にも泣き出しそうな秘書さんがお母様に告げると

お母様は道明寺に向き直った






「司さん、今夜の会食をキャンセルする事は許しません。
 櫻さんの事が仕事に響くようでは道明寺家の跡取りとして失格です。
 いいですね。」






お母様の言葉に道明寺はソッポを向いたまま何も答えようとしない・・



"もう!なんとか言いなさいよね!!"



軽く横に立つ彼の肘で突くと・・





「・・分かったよ!!いきゃーいいんだろ!?」





渋々、返事を返した道明寺はまるでこの状況の責任は全て秘書さんにあると

言わんばかりに彼を睨みつけている・・





睨みつけられている秘書さんはこれ以上ないってぐらい

小さくなって汗が止まらない・・





可哀相な秘書さん・・


こんな上司を持つと大変よね・・






「司さん、そろそろ会議の時間ですよ。
 皆さんをお待たせするのは失礼ですよ。」





お母様は道明寺にそう言った後、私に向き直り





「櫻さんはNYを楽しんでらしてね。」




なんて昔から考えられない言葉を残して魔女・・

じゃなくてお母様は行ってしまった・・




その後ろ姿を唖然と見送りながらまだ

私の横に立ったままの道明寺の背中を押して

仕事に戻るように促した





「ほら!早く行って!!」





背中を押されて一歩踏み出した彼は振り向くと




「いいか、仕事が終わったら部屋に行くからな!
 大人しく待ってろよ!!」





捨て台詞を残して仕事へと戻って行った彼の背中にベェ〜〜!と

舌を出してから私はエレベーターに乗り込んだ










【132】


エレベーターに乗り込んでやっと一息つく



ハァ〜・・やっと解放された〜


ずいぶんと予定が狂っちゃったけど

とりあえずホテルへと向かう



道明寺のビルを出ると先ほどのリムジンの運転手さんが

こちらに向かって駆け寄ってきた


「美作様。」


凄い勢いで駆け寄ってきた運転手さんに圧倒される・・・



「・・は、はい。」


「司様よりお車をお使いいただくように仰せつかっておりますので、
 どうぞお乗りくださいませ。」


「・・えっ!?あ・・私、タクシーで行きますので結構です。」


こんな大きな車目立つからヤダ!

そう思い車を断って歩き出そうとすると運転手さんに腕を掴まれ

強引に車の方へと引っ張って行かれしまった・・・


「それでは困ります!
 どうぞお車にお乗りくださいませ。」



言葉は丁寧なんだけど有無を言わせぬ勢いで車に押し込まれ

唖然としてる私の横でドアが閉まってしまった・・


「美作様、とりあえずホテルでよろしいでしょうか?」



「・・は、はい・・宜しくお願いします。」


「かしこまりました。」



この人、今・・まずって言ったわよね?

もしかして私・・ずーっとこのバカデカイ車で移動しなきゃいけないの・・?



ヤダ!


それだけは絶対にヤダ!!


そんな事を考えているうちにリムジンがホテルへと向けて走り出した



そしてホテルに着いてもう一度驚いた・・・


もうNYに着いて驚く事ばっかりなんだけど・・・



私が予約を取っていたのは椿お姉さんのカメリアホテル

メープルホテルに比べてカジュアルな料金設定で利用客もビジネスマンや

一般の観光客も多い

だけどホテル全体は洗練された雰囲気でエントランスから一歩中へ足を踏み入れると

落ち着いた空間が広がっている


チェックインしようとフロントを探していると一人の男性に声をかけられた

「失礼致します。美作様でございますでしょうか?」


「はい。」


「お待ち申し上げておりました。
 私、当ホテルの支配人を勤めさせていただいております山本と申します。
 よろしくお願いいたします。」



「初めまして。美作櫻です。
 お世話になります。」


「こちらこそ、滞在中はご不便のないよう精一杯お世話させていただきます。」


「よろしくお願いします。」


「お荷物はすでにお部屋にお運びいたしておりますので、
 ご案内させていただきます。」




そう言って前を歩き始めた支配人さんについて

ロビーの少し奥まった場所に一基だけのエレベーターに乗り込んだ・・


そして・・ご案内された部屋は・・


凄い!!

最上階のワンフロアーまるごと全部・・



「・・あ、あの・・ここは?」


「このフロアーは椿様がNYにお越しになられた時に
 ご使用になられるプライベートエリアでございます。」


「椿お姉さんのプライベートエリア・・?」


「はい、椿様より美作様がNYへお越しになられた時には
 このお部屋をお使いいただくようにと仰せつかっております。」



「はぁ・・」





部屋のあまりの凄さに間の抜けた返事しか出来なかった・・・

そんな私の様子を気にせず支配人さんは部屋の中を案内し始めた・・


案内されて再度ビックリ・・・

一体、幾つ部屋があるの?


ベッドルームだけど7つ


おまけにその一つ一つが半端じゃない大きさで

それぞれの部屋にバスが付いている・・


リビングだって何畳あるの・・?


こんな広い部屋で私一人・・?

絶対に落ち着かない・・

これだけは自信を持って断言できる!





「美作様のベッドルームはこちらのお部屋でございます。」


そう言って支配人さんが開けたドアの向こうには・・・


部屋の中央には天蓋付きのベッドが置かれていて

大きな窓の向こうにはマンハッタンの景色が広がっていた・・


一通り案内を済ませると支配人さんは出て行ってしまった



私は窓の外に広がる景色を子供のように窓に張り付いて眺めていた

しばらく景色に圧倒されていたが支配人さんと

入れ替わりに入ってきたバトラーさんが淹れてくれたお茶を飲み始めた


ハーブティーの心地よい香りが疲れた身体に染み渡り

ほっと一息つく・・・


さて!一休みしたら街へ出かけよう・・・



















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