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【142】




まず彼に連れて行かれたのは某有名宝石店


ここって確かあの土星のネックレスを特注した所よね・・?


仰々しい出迎えを受けて個室へと案内される


高級レザーのソファーが置かれているゆったりとした部屋で

私の目の前に次々と並べられる宝石たち・・

凄すぎて目がチカチカしてきちゃった・・


隣では道明寺がカラットがどうとかクオリティーがどうとか・・

次々と目の前に差し出される綺麗な石・・


そうなの・・

さっきから出てくるのは原石ばっかりでみん〜な特大サイズ


私だって一応、女の子だから綺麗な物は好きだし
目の前にあれば手を触れてみたいって思うけど


だけど普段から宝石には全く興味のない私はカラットもクオリティーも
言葉の意味が分かるぐらいで宝石に関しての知識は皆無と言っていいぐらいない・・


時折、女性の店員さんが私の方を見ながら

"この石はカラーもクオリティーも最高の物で
 このランクでこの大きさの石は滅多に出てこないんですよ。"

だって・・・

「はぁ〜・・」


そんな事、言われたってこんな時はどんな反応していいのか分からない・・

結局、私がしてた事と言えば愛想笑を浮かべて曖昧に返事を返してただけ



隣では上機嫌の道明寺が石を手に取りながらあれこれ注文を出している・・


どうやら石は決まったみたいだけど

どうするんだろう?


「どうだ?これでいいか?」



「どうだって・・どうするのソレ?」


「婚約指輪にすんだよ。」


「婚約指輪・・?誰の?」


「ハァ〜〜〜お前なぁ・・」


思いっきり溜息をつきながら私を睨みつけている道明寺


その溜息でなんとな〜く自分が置かれている状況が理解出来てしまった・・


「・・もしかして・・私の・・とか?」


「お前以外に誰がいんだよ!」


至近距離で睨まれて怒鳴られて思わず身体を後ろへと反らせながら


「えっ・・あっ・・ハハハハ・・・」


「何がえっ!だよ!!
 笑って誤魔化そうとすんじゃねぇー!」

「いや・・別に誤魔化そうなんて気はないんだけど・・・」


「けど?なんだよ?
 お前、言ったよな?俺ともう一度ちゃんと向き合ってみるって。」

「言ったけど・・」


「言ったけど、なんだ?
 お前、俺と結婚する気ねぇーって言いてぇーのか?」


「そ、そんな事言ってないでしょ!
 一人で先走らないでって言ってんの!」


「分かってるよ!
 何も今日、婚約しろって言ってねぇーだろ?!」


「そうだけど・・」



「いいから、今日は一日、俺の言うとおりにしてろ!」



こうして今日、思いがけず婚約指輪が決まってしまった・・


確かにあの時とは違う意味で思い出に残るNYになったような・・



取りあえず(?)石も決まりこれ以上は何もないだろうとホッとしていると

今度は別の店員さんが"ご注文の品でございます。"と持って来たものは・・


土星のネックレスと同じ石を使っているピアスとブレスレットに指輪・・?


「今度は何よ?」


「お前、普段はあんまアクセサリーつけてないだろ?」



今だってなにもつけてない


・・って言うか私の持っている宝石類は全てパリに置いてきた


アクセサリーが嫌いってわけじゃないけど私の持っている物は全て
お父様方やあきらからのプレゼントで大切な物だし
そのどれもが恐らく私が考えているよりもゼロが二つぐらい多い
高価な物だろうから失くしたら大変だと思い何も持ってこなかった


「これだったら石もでかくないし普段から身につけてられるだろ?」


彼にしたら小さいほうなのだろう・・
私には十分デカイんだけどね・・

だけど彼が言った通り、デザインもシンプルだしこれなら普段から身につけていられそう


「受け取れねぇーとか言うのはなしだぞ!」


「そんな事、言わないけど・・これで最後よね?」


「取り合えず今日はな!」


ハァ〜・・・


店から出てやっとキラキラ攻撃から解放されホッとしていると

ご機嫌の道明寺はどこかに電話をしている


「ねぇ?次はどこ行くの?」



「メープルで昼飯喰うぞ!」


「そう・・」


再び彼の運転する車で今度はメープルに向かう

昼食を摂るのはもちろんメープルのスウィート


食後のデザートを食べている時に道明寺の携帯電話が鳴った

だけど道明寺は鳴り続けている携帯電話を無視し続けている・・・


「ねぇ、電話。出なくていいの?」


「ほっときゃあそのうち諦めんだろ。
 いいから気にすんな!」


気にするなって・・

気になるわよ!!


「仕事なんでしょ?」


「いいんだよ!」


「ダメだって!ちゃんと出て!!」



携帯電話を取り出して着信相手を確認している彼から携帯を取り上げると

勝手に通話ボタンを押し彼の耳に押し当てた









【143】




不機嫌極まりない表情の道明寺が電話の相手と話しをしている



しばらく会話をしていた彼だったが




"分かったよ!"





一言で強引に電話を切ってしまった・・







「仕事なんでしょ?」





「ああ。」






「じゃあ早く行ってよ。
 私はホテルに戻ってるから。」






「すぐに終わらせるからお前も一緒に来い!」





「ヤダ!仕事の邪魔したくないからホテルで待ってる。」





「全然邪魔なんかじゃなぇーよ!
 すぐに終わらせるし、お前が一緒に居てくれたほうがはかどる。
 それに又、ホテルに迎えに行ったりしてたら時間の無駄だろ!」





「でも・・」





「でもじゃねぇーんだよ!
 俺はお前が一緒じゃねぇーとイライラして仕事になんねぇーんだよ!
 いいから黙ってついて来い!お前が来ねぇーって言うんだったら俺も行かねぇーからな!」





脅さないでよね!!




結局、昨日に続いて無理やりッ彼のオフィスまで連れてこられてしまった・・・






ビルの前で止まった車から降りると昨日、

カフェオレを運んできてくれた秘書さんが少しイライラした感じで立っていた





彼女は道明寺と共に私が車から降りてきたのを見ると

あからさま不快感を露にしている





だけどそれもほんの一瞬だけで




道明寺が彼女の方へと向き直ったときにはその表情は元に戻っていた




今のは気のせい・・?




私の思い過ごしなのかな・・?






女性秘書さんの表情と態度に多少の疑問を感じつつも

私はまた彼に引き摺られてビルの中へ・・









フロアーに着くと道明寺は私にオフィスで待っているようにと言い残して




会議室へと消えて行ってしまった




私は言いつけどおり彼のオフィスで一人・・




時間を持て余しぼんやりと窓の外の景色を眺めていたけど




ふいに彼のデスクが目に入った





マホガニー材の重厚な作りのデスクで色はダークブラウン




落ち着いた感じでデスクなのにもの凄い存在感




どっしりと言うか・・・




なんだかデスクまで偉そうなのよね・・





きっちりと整理されているデスクの上に置かれている物は驚くほど少ない





パソコンに電話、書類にペンスタンドぐらいでシンプルっていうか






殺風景なくらいあっさりとしている






彼のデスクの椅子に座り淵に指先を滑らせていると






ノックと共に先ほどの女性秘書さんが入ってきた






彼女は私が道明寺のデスクに座っているのを見ると


ほんの少しだけ眉を顰め







「司様のデスクにある物にお手を触れないようにお願い致します。
 重要な書類などもございますので。」






謝りながら慌てて立ち上がった私を彼女は一瞥しただけ・・・





やっぱり彼女の態度にどこか引っかかる物を感じるんだけど

彼女の言っている事は正しい、私だって自分のデスクを他人が勝手に

触ったりしたらいい気はしないもの・・





だけどここに居ても何もする事ないし



私がここに居ると秘書さん達にとっては迷惑よね







「あの、彼は後どれぐらい掛かります?」





「後、2時間ほど掛かると思いますが。」






「そうですか・・じゃあ、私は少しこの辺りを散歩してきますので、
 彼にはそう伝えておいてください。」





「かしこまりました。」






彼女の言葉を背中に受けながら私は彼のオフィスを出た・・・












【144】








彼のオフィスを出てエレベーターを待っていると

秘書の三ツ谷さんが慌てて私の元へと駆け寄って来た





「美作様!」






そんな大きな声で呼んでいただかなくても見えてますし聞こえてるんですけど・・




「は、はい・・」






何故か迫力満点にこちらへと迫ってくる秘書さんに圧倒されてしまう・・





「どちらへお出かけでしょうか?」






「・・少し、この辺りを・・・」





私が言い終える前に





「では、お車をご用意いたしますので少々お待ちください。
 それからSPも手配いたしますので。」





さっきの女性の秘書さんも苦手だけどこの秘書さんも苦手・・






「あ、あの・・車もSPさんも必要ありませんから。」





「いえ、それでは困ります!
 両方をお使いいただけないのでしたら私がご一緒させていただきます!」





それも必要ありません・・って言えなかった・・





だって、秘書さんの表情はとても冗談を言っているようには見えなかったから・・






「わ、分かりました・・じゃあ車を使いますのでSPさんは止めてください。」






「畏まりました。では私もご一緒させていただきます!」





どうしてそうなるの・・?





「それはご迷惑になりますから。」






「いいえ、迷惑なんてとんでもありません!
 美作様には道明寺家の命運が掛かっているんです!
 美作様に何かありましたらお引止めできなかった私の責任になりますのでご一緒させていただきます!」





・・って言い切られちゃった・・




それに命運って・・




なにそれ・・?







「あの・・命運ってなんですか?」







「あっ!それはこちらの話しでして・・」






命運だろうが何だろうがどうでもいいんだけど・・

今、目の前にいる秘書さんが夕べ道明寺に掴みかかられていた

カメリアの支配人さんとダブって見えた





彼もあんな目に遭うのだろうか?



だとしたら私のせいで申し訳ない・・




そう思って、彼に同行してもらうことをOKした




私のOKに秘書さんは本当にホッとした顔をしているけど・・




この秘書さんって道明寺の下で本当に苦労してるのね・・




まぁ・・買いたい物もあるし彼に案内してもらうのはいいかもしれないわね





あんまり時間もないし





買い物をしたいと言った私の為に秘書さんが案内してくれたのは

彼のオフィスから一番近いバーニーズNY



いわゆる高級百貨店




事前に連絡がいっていたのだろうけど・・




大げさな出迎えと接客を受けながら私が買った物は写真立てが2つだけ




恐縮してしまう・・





支払いに使ったカードだって至ってノーマルだし

限度額だって私の収入に合わせてもらってるから低い




私とカード




今まで全く縁の無かった物なんだけど




大学に入り仕事を始めた頃にあきらからカードとはいかに便利で

スリなどが多いパリの街では現金を持ち歩くより安全かを力説されて

渋々作ってもらった物だった






これにしたって普段から滅多に使うことはないのよね・・



と言うか・・カードどころか現金だってそんなに使わない



使う必要が無いのに・・






身の周りの物はずっとお父様方から山のようにプレゼントされていたし


道明寺と再会してからはそこへ椿お姉さんと彼が加わっている




これ以上、自分で買う必要な物なんて何も無い






私がお金を必要とするのは大学のカフェでお昼を食べたりお茶を飲んだりする時ぐらいで






一日、大学に居ても10ユーロあれば十分だし




カードだって使うのは大抵は大学近くの画材屋さんで

ここ最近は仕事が忙しくて画材屋さんどころか大学にも行けていないもの






そりゃあパリから一人でNYまで来てるんだから

いつもよりは多めに現金が入ってるけど

それでも500ドルぐらいだし、後は今使ったカードと

身分証明書に運転免許書が入っている程度




私の財布は中身より財布そのものの方が高い・・





話しは戻るけど写真立て2つで100ドルちょっとの

お買い物を恐縮しながら大急ぎで済ませて


逃げるようにデパートを後にした





帰る時だってわざわざ支配人さんが車の所までお見送りに出てくれていて





道明寺と一緒に居ることがどういう事なのかとつくづく思い知らされる





多分、何処に行ってもこんな感じなんだろうなぁ〜・・



これに慣れなきゃいけないのよね・・




・・って慣れるのかな?





いつかこんな対応も普通になってしまうのだろうか・・?






そうなった時、私ってどうなってるんだろう?


ちゃんと私で居られてるのかな?





まぁ・・今だって牧野つくしだった頃から比べると全然違うけどね・・





いくら記憶が無かったとは言え生活に追われる事なくのんびりと子育てをして
大学にも通いそれが普通になってしまっていたんだから・・






ぼんやりと車外に流れる景色を眺めながらそんな事を考えていると



もうオフィスへと着いてしまった・・・










【145】









オフィスへと戻ると道明寺はまだ会議室から戻ってはいなかった





今度は三ツ谷さんの持って来てくれたまともなカフェオレを飲みながら一人






自分の思考の世界を漂っているといきなり凄い音がして





ドアが開いたと思ったら道明寺が飛び込んできた・・





私は音と共に一気に現実の世界へと引き戻される





「お、終わったの?」






「ああ、もう少し。
 お前は出掛けてたのか?」






「うん、ちょっとね・・」





「何処行ってたんだ?」






「ちょっとお買い物。」






「なにか買ったのか?」






私と話しをしながらも道明寺の視線は書類に向けられたまま





私は彼の座るデスクの前に立つと今さっき買ってきた物を彼へと差し出した







「これ・・」





「俺にか?」






「うん、開けてみて。」





少し驚いた表情で受け取った彼だったけど中に入っている物を見て




すぐに笑顔に変わった





中身はさっきかったばかりの写真立てが2つ






その中に雛の写真を入れてある





2枚とも最近パリで撮影したもの





写真の中の笑顔の雛に道明寺は目を細めていたんだけど





すぐに顔を上げて





"お前の写真もよこせ!"




だって・・・






「無いわよ。」






「なんでねぇーんだよ!
 隠してるんだろう?出せ!」





どうして隠す必要があるのよ!






「自分の写真を持ち歩く趣味なんて無いわよ!」





「じゃあ、今度送って来いよ!」




「そ、そのうちね・・」





「ダメだ!パリに帰ったらすぐに送ってこい!
 じゃねぇーと今から写真撮りに行くぞ!」






「い、今から・・?それはヤダ!
 今度、送るからそれでいいでしょ?」





「絶対送ってこいよ!
 じゃねぇーとパリに乗り込むぞ!!」





本当にやりそうで怖い・・




・・ってこいつなら絶対するわね・・







「分かったわよ!
 約束はちゃんと守るわよ!」





道明寺はなんとか納得してくれたみたいで再び視線を写真立ての雛に移した



その後はまだ引きとめている秘書さんを軽く無視して



彼は私を連れてオフィスを出た




時計を見ると午後3時すぎ





オフィスを出て車に乗り込もうとする彼を引き止めた






「ねぇ、少し散歩しない?」





「散歩?」






そんなあからさまに嫌そうな顔しなくてもいいじゃない・・





「そう、あそこまでブラブラしながら散歩するの。」





そう言って私が指を指した先には


世界最大のクリスマスツリーでも有名なロックフェラーセンタービル






「あそこの展望台に登ってみたいの。」





展望台と言えばNYで有名なのはエンパイアーステートビルだろう




キングコングも登った・・彼(?)が登ったのはビルの外壁だったけど・・




だけどロックフェラーセンターの展望台『Top of The Rock』も




エンパイアーに勝るとも劣らない景色が望める





67階からエスカレーターに乗り込むと途中から天井が無いので


ダイレクトに空が広がり始める





その空を眺めながらエスカレーターを上りきるとそこには


全面がガラス張りの展望台出現して




360度圧倒されるNYが広がっている





もちろん目の前にはエンパイアステートビルも見える





ぜ〜んぶ何かの雑誌に載ってた受け売りなんだけど




その時に見た写真が凄く素敵だったのでその展望台から


自分の目でNYの街を眺めてみたかった




そんな私の提案に道明寺は軽く溜息をつきながらOKしてくれた






「はぁ〜分かったよ。
 じゃあ歩いて行くか。」





手を繋いだままゆっくりとロックフェラーセンタービルに



向かって歩き始める





途中、いろんなお店を覗きながら歩いて行くと




あの頃には出来なかったデートをしているようで結構楽しい




途中、見つけたオルゴールショップで雛へのお土産を買い




ロックフェラーセンタービルの展望台へとその他の多くの観光客と共に上る



展望台まで行くとさすがに風が強い





それでもお天気が良かったので眺望は最高だった












【146】






私はまだまだNYの景色を楽しんでいたかったのに・・




NYの街並みになんの感動も示さない道明寺によって




無理やり下へと降ろされてしまった





その後はミュージカルを見て食事して






珍しく喧嘩もせずにホテルへと戻った






はずだったんだけど・・





車に乗り込むと例の如くすぐに睡魔に襲われ


そのまま夢の中へと直行してしまった私・・




目が覚めた時は東の空がゆっくりと白み始めていた





少しずつ意識が戻り始め






まず目に入って来たのは見覚えのない風景





ここ何処なんだろう・・?






カメリアじゃないような気がするんだけど・・





それにどうして身体が動かないの・・?





・・これってまさか!?






金縛り??






試しに少し足を動かしてみる・・動く





今度は手を動かしてみる・・こっちも大丈夫





もう一度、次は腕を大きく動かしてみる・・





ん・・??






自分以外の何かに触れたような・・?







う、うそーーー!?





ここで一気に目が覚めた






慌てて身体を起こし、今まで私にぴったりとくっついていた奴を見下ろす・・





えーーーー!!





ど、どうして?






えーっと・・落ち着け、櫻!!






落ち着いてこの状況を整理しなくっちゃ





この部屋は確か・・




昨日、連れてこられた道明寺の部屋で・・






今、私が寝てるのは道明寺のベッドで・・





私は今、道明寺と同じベッドで眠ってて・・






あっ!!





慌てて自分の姿を確認してみる






良かった・・ちゃんと洋服着てる・・






服を着ていたことにホッとしていると下から少し掠れた声が聞こえてき、





腕を引っ張られて





私は再び彼の腕の中へと逆戻りしてしまった・・・







「なに一人で百面相してんだよ?」






「えっ・・あっ!ちょ、ちょっと離してよ!」





「ヤダね。」





彼は短くそれだけ言うと私を抱きしめている腕に力を込めなおした






「ヤダじゃなくて・・」






自分と彼の身体の間に腕を押し込んで彼の胸元を軽く押し返す





「ねぇ、どうして私、ここにいるわけ?」





「夕べ、車の中で寝ちまったから俺がここまで運んだんだよ。」






「そーじゃなくて!どうしてホテルじゃなくてあんたん家なのよ?
 それにどうしてあんたが一緒に寝てるわけ?」






「カメリアは俺がチェックアウトしといた。
 荷物もこっちに運ばせてある。」





「どうしてそんな勝手な事するのよ!
 あんた・・まさか、最初っからそのつもりだったとか言わないわよね?!」





「いいじゃねぇーかよ!
 俺はお前が一緒じゃねぇーと寝れねぇーんだよ!!」






「ハァ〜・・もう信じらんない!」






「何で溜息つくんだよ!?
 なんもしてねぇーだろ?」





「当たり前でしょ!バカ!」






「なぁ、まだ朝方だろ?
 もう一回寝ようぜ、こっち来いよ。」




甘えたように言ってくる道明寺に思わず気を許しそうになったんだけど


次に続いた彼の言葉に絶句してしまった・・






「目醒めちまったのか?だったらやるか?
 俺はいつでもOKだぜ!」






思わず飛び起きて手元にあった枕を投げつけた・・





「冗談だよ、バーカ!
 なんもしねぇーよ!お前がいいって言うまで何もしねぇーから安心しろ!」






「ほ、ほんとに・・?」





「本当だよ!待つって言っただろ、何度も言わせんな!」





「わ、分かった・・・」






「分かったんだったら、こっち来いよ!」





そう言って腕を引き寄せられて彼の胸元になだれ込む形になってしまった




そのまま腕が背中に回り腰を引き寄せられる




これ以上ないってくらいにピッタリと身体を密着させると彼は満足そうに目を閉じた





しょうがない・・





私もそれ以上の抵抗を止めて再びゆっくりと目を閉じた
















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