【35】








静かにゆっくりと話し始めた彼の言葉に私は何も言えなかった




彼がこの6年間抱えてきた物の大きさに涙が溢れ出す







「牧野つくしは今、パリで生活している。」








「やっぱり、見間違いじゃなかったのね。」








「ああ・・」








「だったら何故、隠そうとするの?
 わざわざこんな物まで作って隠す必要があるの?」
「つくしちゃんが会いたくないって言ったの?」








「・・・・・」







「何とか言ってよ。」








「・・・牧野は何も言ってないよ。」








「だったらどうして?
 つくしちゃんに一体何が起きてるの?」








「何かが起こってるって・・どうしてそう思うんだ?」








「だって、普通じゃないでしょ?この6年間、類も司も思いつく限りの
 手を使ってつくしちゃんを探してるのに、つくしちゃんどころか彼女の家族の
 手掛かりすら出てこないのよ。誰だっておかしいと思うわよ。」









「そうだな・・・類も電話で同じような事を言ってた・・
 とにかく、牧野も牧野の家族も元気だよ。」







「だから、その事をどうしてあきらが知ってるのかって聞いてるのよ?
 もしかして・・その事があなたが日本に帰らない事と関係しているの?」








「・・・・相変わらず厳しいな・・」








「はぐらかしてないでいい加減、ちゃんと話してくれないかしら?」






「分かったよ。まず牧野つくしって名前は現在は存在しないんだ。」










「名前が変わってるって事?」










「そうだ、あいつの今の名前は美作櫻なんだ。
 それから、櫻に関する情報は家族の事も含めて一切が伏せられている。
 いくら類達が探したところで何も出てはこないようになってるよ。」









「どうして・・・・?つくしちゃんが・・美作って・・
 まさか、あなた・・つくしちゃんと結婚してるとかって言うんじゃないわよね?!」









「違うよ、俺も櫻も独身だ。
 あいつは今、戸籍上は俺の妹になってる。」








「いもうと…?」







「そうだ、6年前からパリで一緒に暮らしてる。」







「どうして、そんな事になってるのよ?」








「静、櫻が・・牧野つくしが姿を消した時の事ってどれぐらい聞いてる?」









「一応、類から一通り聞いて知ってるけど・・」









「そうか。」









【36】






失踪







6年前、類からの電話で司が刺された事を聞いた




そして、目を覚ました司がつくしちゃんの事を忘れてしまったことも・・・



つくしちゃんが居なくなったって聞いたのはそれからほどなくしてだった








『静?!』






珍しく慌てた声の類からの電話で目が覚めた








「類?どうしたの?」









「牧野が・・・・牧野が何処にもいないんだ!
 牧野の家族も・・・いないんだ・・・・」









「どう言うことなの?どうしてつくしちゃんがいなくならなきゃいけないの?
 もしかして、司の事・・?」










「多分、理由はそれしか考えられない・・
 牧野、学校もずっと休んでて、俺たちもしばらく会ってなかったんだ。」







「どうして、あなた達はつくしちゃんに会いに行ってあげなかったの?」







「学校には欠席届が出されてて・・
 司の事もあったから今はそっとしといた方がいいんじゃないかって思ったんだ。
 あいつが落ち着くまで・・・って・・・」









類の言葉から後悔だけが伝わってくる








「司はどうしてるの?記憶は戻ったの?」








「まだだよ・・司は今別の女と付き合ってて・・
 牧野が居なくなった事にも無関心で・・・・」









「どうして、そんな事・・」












「牧野 最近は非常階段にも来なくなってたから、あいつが自分の気持ちに整理を
 つけるまで、俺達の顔を見るのも辛いのかなって思ってたんだ。
 そしたら今日、和也が牧野の退学届けが出されたって・・・・
 急いでアパートに行ったけど何も残っていなくて、
 あいつの家族もいないんだ!」






最後は悲鳴に近い声で類が叫んでいる





類のこんな声を聞いたのは初めてだった









「俺も総二郎も心当たりを探してるけど何も見つからなくて・・・
 もう、どうしていいのか分かんなくて・・・」









「落ち着いて類、大丈夫よ。
 あなた達が探してるんだからきっとすぐに見つかるわよ。」









「う・・・ん・・・そうだといいんだけど・・・」









「大丈夫よ。
 それにしばらくしたらつくしちゃんの方から連絡があるかもしれないし。」









その時の私は本当にすぐに見つかると思っていた




だが実際には6年たっても何一つ分からなかった









その間、記憶を取り戻した司の動揺は激しく




現在の司は自分を傷つける事でかろうじて正気を保っている




でも、それもそろそろ限界にきているらしい・・・・









【37】








「類達が牧野が居なくなったって騒いでいた時、俺もその場にいたんだ。
 そして、その時すでに牧野は俺の所に居た。俺は牧野の居場所を知ってて、
 知らない振りして類達と一緒に探すフリしてた・・最低だよな・・」









「そうするしかなかったんでしょ?」










「そうだな。その時の状況を考えればそうするしかなかった。
 だから後悔はしてないよ。
 だけど、それが正しかったのかは分からない。」








牧野が俺の妹になった経緯は全て話し終えた












俺が話した内容は静にとってもさすがにショックだったようで・・




しばらく考え込んでいたが・・







「じゃぁ、つくしちゃんは今でも記憶が無いの?」










「ああ・・今でも自分の名前すら思い出してない。
 牧野つくしって名前だった事は俺が教えたから知ってるけど、
 知ってるのと思い出すのでは全然違うだろ。」









「でも、司の子供がいるんでしょ?
 司は自分の子供が居る事も知らないでつくしちゃんを探してるのね・・?」










「そうだな、だけど言えなかったんだ、櫻の事を覚えていない司に子供の事を、
 話したらどうなってたと思う?もし、司のお袋さんに知られたら櫻と雛はどうなってたと思う?」








「まさか・・いくらおば様だってご自分の孫を・・」








「俺は常に最悪の状況を考えて行動してきた。」








「でも、今は司の記憶は戻ってるわよ。」









「ああ、だけど櫻の記憶が戻っていない。
 俺も司の事があるから櫻だって案外早くに思いだすんじゃないかと思っていた。
 まさか、6年たった今でもこの状態が続いているとは思ってなかった。」
 なぁ、自分が誰なのかも分かっていない櫻に司を会わせて上手く行くと思うか?」






「お互い傷つけ合うだけになりかねないわね・・」










「司のことだから何とかして櫻に自分の事を受け入れさせようとするだろう、
 だから会わせなかった…それに、教えられた記憶は単なる情報でしかない。
 櫻が自分で思い出さないと意味が無いんだ。」










「だけど、つくしちゃん・・全部忘れてしまうほどショックな事ってなんだったのかしら?」










「さぁな、それは櫻にしか分からない。でも、あいつだって思い出したいと思ってるんだ。
 あまり口にはしないけど、雛の父親のことは気になってるみたいだしな。」










「そう。でも、何があったにせよ、一番大切なのは雛ちゃんよね。
 それにしてもおじ様達が4人揃ってガードなさってるんじゃ
 いくら司達が探してもどうしようもないはずよね・・」












「そうだな・・」








「・・・分かったわ。明日にでも類に電話して私が見たのは
 つくしちゃんじゃなかったって言っておくわ。それでいいんでしょ?」








「すまない・・・・」









「大丈夫よ。自分で決めた事なんだから。
 上手くやるから、まかせておいて。」








「ああ、頼む。」









「それで櫻ちゃんと雛ちゃんにはいつ会わせてくれるの?」









「櫻は今からでもいいぜ。多分まだ部屋で仕事してると思うから。
 雛はお袋が双子と一緒にスイスの別荘に連れて行ってて今は居ないんだ。」









「雛ちゃんって今、幼稚園に通ってるの?」







「ああ、来年、小学校に上がる。」








「一つ聞いていい?」








「なんだ?」








「もし、櫻ちゃんの記憶がこのまま戻らなかったら
 あなたはどうするつもりなの?」










「どうするって?」







「私が気付かないとでも思ったの?
 あなた、櫻ちゃんと結婚したいと思わないの?
 それとも一生、兄のままでいるつもりなの?」










「・・・・・・・・・・」










「このまま記憶が戻らない事だってあるんでしょ?
 あなただってずっと独身ってわけにはいかないのよ。」








「そうだな・・」









「二人を司に返せるの?」







「返せるよ。」








「ウソつきね。」










「ウソじゃないよ。最初っからそのつもりだし親父も言ってたけど、
 そろそろ覚悟を決める時が来たのかもしれないって。」








「それって櫻ちゃんを美作家の娘として世間に公表するって事?」









「多分な。どういう形になるのかは分からないけど、親父達は考えてるみたいだ。」










「そう、そうなると大変ね。類達が心配よ。
 特に司がね。急に現れたつくしちゃんが記憶喪失で自分の子供がいて、
 ずっとあなたと一緒だったって知ったら、どんな行動に出るか分らないわね・・」










「俺は殴られるぐらいじゃ済まないかもな・・」










「そうかもね・・でも、裏切りついでに一つ言っておくわ。
 もし、櫻ちゃんの記憶が戻って司達の事を思い出した時は
 ちゃんと自分の気持ちを伝えなきゃダメよ。」










「あいつは俺の事、そんな風に見てないよ。」











「だとしてもよ。この6年間、あなたは櫻ちゃんだけを見てきたんでしょ?」









「そうだな・・」












「だったら、ちゃんと伝えなきゃ。たとえどんな結果になったとしてもね
 そうしないと、今度はあなたが前に進めなくなるわよ。」








「分かった・・・・」








「じゃぁ、櫻ちゃんに会わせてくれる?」







「ああ、呼んでくるよ。」










あきらに連れられて部屋に入ってきた彼女は少し戸惑っているようだった





数年ぶりに会った彼女は昔の面影を残したまま驚くほど美しい女性に成長していた




私はなるべく彼女を混乱させないように、自己紹介をし友人だった事を伝えた






彼女との再会は最初のうちはぎこちなかったが、



少しずつ固さもとれ短い間だったけど楽しい時間を過ごす事ができた











1時間程話していたけど


彼女はまだ仕事が残っているからと自室に引き上げていった




再びあきらと二人っきりになったリビングで







「ねぇ、櫻ちゃん記憶が無いようには見えないわね?」










「そうだな、あいつずっと記憶が無い事を隠してきたからな。
 そのせいじゃないか。」









「そう。櫻ちゃん、どんな気持ちだったんだろう?
 雛ちゃんの父親の事だって不安よね。」








「あいつの性格は記憶が無くなる前と大して変わってないからな、
 一人で考え込んでることがあるよ。でも、俺はそんな櫻の姿を見ても、
 無理するなとしか言えないんだ・・全てを話してやれたらどんなにいいかと思うけどな、
 でもそれじゃダメなんだ・・何の解決にもならないんだ。」







「どうしてこんな事になってしまったのかしら?
 唯一の救いは彼女の顔に笑顔があることよ、
 それにあきらがちゃんと彼女を守ってあげてるって事。
 これからもちゃんと彼女の事支えてあげてね。」








「ああ、悪かったな、静まで巻き込むことになってしまって。」









「いいのよ。自分で決めた事よ気にしないで。
 じゃぁ、私はそろそろ帰るわね。」







「送らせるよ。」








「ありがとう。」









その日から私は櫻ちゃんとなるべく時間を作って食事やショッピングを楽しんでいた










そして、類は私が電話で別人だったと伝えるとがっかりしていたが、



疑問には感じていないようだった




類にウソを付く罪悪感はあったが




あきらと櫻ちゃんの為、そうする事が一番だと感じていたから…






私の決断が正しい事なのかは分からない・・





だけど、ずっと一人でがんばってきたあきらの力になりたかった・・










【38】







東京 メープルホテルのティーラウンジ








桜子が滋を待っていた




待ち合わせ相手の滋は約束の時間より30分程遅れているが



いつもの事・・・滋が約束の時間通りに来たためしはない・・








慣れっこの桜子は優雅にお茶を飲みながら送られてくる視線を適当に交わしていたが




それにも飽きてきたころやっと滋の姿がラウンジの入り口に見えた











「あ〜あ やっと見つかったと思ったのに…」









どっかりと桜子の前に座った滋の第一声がコレ・・・







だけど動じない・・・





遅かったですね?とか・・



何やってたんですか?とか・・




聞いても無駄な事・・




嫌味だって通じないから・・





何も無かったようにサラッと受け流す・・・




長い付き合いの桜子が身につけた滋の操縦法・・・









「本当に先輩どこ行っちゃったんでしょうね?」









「よっ!二人してシケタ面して何やってんだ?」









聞きなれた声に振り向くと総二郎が立っていた




ただそれだけなのに・・・





ラウンジ中の女性の視線が彼に集まっている






彼も当然そのことには気づいているが


いつものことだと全く気にしていない





送られてくる視線を軽くかわしながら総二郎は桜子と滋のテーブルに座った








「あっ!!ニッシ―、久しぶり〜♪」






「西門さんこそどうしたんですか?」







「俺はデートだよ。
 で、お前らは女二人で何やってんの?」








「お茶してるだけですよ。」








「ねぇニッシー?つくしの事で何か分かった事ある?」








滋がテーブルから身を乗り出すようにして総二郎に迫っている




総二郎はその迫力に少し体を後ろに反らしながら・・








「いいや、パリの方も空振りだったしな・・」







「本当?!本当に間違いだったの?」






「ああ、静から別人だったって連絡があった後、
 あきらからも別人だって返事が来た。」







「あきら?あきら君も調べてたの?」






「類が電話で頼んでたんだ。
 俺もあきらと話したけど、この6年間にフランスに牧野が入国した記録もなかったってさ。」






「もしかして、先輩・・名前が変わっちゃってるって事ないですよね?」








「桜子・・何言ってんのよ!」







「だって、もう6年ですよ。それだけ時間がたってたら、先輩だって・・」










「そうだな・・・それにしてもこれだけ探してて何も出てこないのって異常だよな。」








「ちょ、ちょっと、ニッシーまで何言ってんのよ!」









「それって、誰かが先輩の情報を隠してるって事ですか?」









「確証はないけどな。最近では司も類もそう考えてるよ。」








「でも、誰がそんな事で出来るんですか?
 道明寺さん達から隠すのってよほどの人じゃないと出来ないですよ。」








「!!!・・まさか・・司のお母さんじゃないわよね?!」









「椿姉ちゃんの情報ではそれは無いらしい。
 むしろその逆でお袋さんも牧野の事探してるみたいだってよ。」








「それって・・司のお母さんがつくしとの事認めたって事・・?」








「まぁ、そういう事になるかな・・」








「どう言う事ですか?何か歯切れが悪いですけど。」








「ああ・・・・認めたって言うか・・認めざるを得ないと言うか・・・
 とにかくお袋さんは司には牧野じゃないとダメだって事にようやく気が付いたんだよ。」









「そんな…司って今どんな状態なの?」







「見た目は元気で普通だけど、笑わねぇし・・仕事以外の事では口もきかない。
 屋敷でも急に暴れ出したりして、使用人も怖がって誰も司に近付けねぇから
 今、あいつの部屋に入れるのはタマさんぐらいだ。」










「・・・それは、またすごいですね。」








「桜子、関心してる場合じゃないでしょ!
 あんたはどうしてそんなに冷静でいられるのよ!」








「滋さんがここで興奮しても何も解決しませんよ。
 とにかく私達が一刻も早く先輩を見つけ出すしかありませんよ。」








「そうだな・・・でもどうするかだ・・・
 もう、偶然か奇跡でもおきない限り見つけられない気がしてきたぜ。」









「・・・・そうですね。」








「桜子、あんた一体どっちなのよ!」








「滋、そんなに興奮するなよ。とにかく近いうちにあきらも戻ってくるから
 そん時みんなで集まって対策を練ろうぜ。いいな。」










「う・・・・ん・・・分かった・・・」








総二郎が泣いている滋の頭を撫でながらなぐさめている、



その光景を見ていた桜子がおもむろに席を立つと








「それじゃぁ、私、これからデートなんで西門さん、滋さんをお願いしますね。」









それだけ言うとさっさと店を出て行ってしまった。








「あっ!オイ!桜子・・・俺もデートなんだよ!
・・って・・・聞いてない・・・ったく!」







滋はまだ泣いている







ハァ〜・・






総二郎は携帯を取り出しどこかにメールをしている







「これでOK!っと、ほら、滋!もう泣くな!飲みにでも行くか?」








「・・ニッシー、デートなんでしょ?」






「いいよ、キャンセルした。それより行くのか?どうする?」







「行く〜〜」







パッと顔を上げた滋が笑顔で言うと









「そっか、だったら、ほら涙ふけ!
 行くぞ!」







「うん。」









【39】









翌朝、メープルホテルのスウィートルーム






閉じられているカーテンの隙間から微かに朝陽が射し込んできている







ゆっくりと意識が覚醒してくるが・・



目がまだ光に慣れていない





光に目を顰めながら




頭はすでに動き始め今の状況を確認し始めている・・






えっーと、ここは?



・・・・・・・!









総二郎は自分がベッドに裸で寝ている事に気付いた・・・






横を見ると・・







誰かいる?!






ハァーーー!!?



マ、マジかよ・・・








夕べ、一緒に飲んでた・・


かなり飲んだよなぁ〜・・?




隣で滋が眠ってる・・・







軽く寝返りを打った滋の体から身に纏っていた



シーツが少しずれ白い肩が覗いている・・・・・!!!







恐る恐るシーツを少しめくって中を覗いて見る・・・やっぱり・・・・







俺・・・よく覚えていない・・・けど・・・この状況は・・・?





やっぱ・・そういう事だよな〜・・・?






ハァ〜どうする・・総二郎・・??



どうするんだ?!







不覚だ・・英徳一のプレイボーイと言われた俺が・・・




酔っ払って何も覚えていないなんて・・







軽くパニックになりながら隣で眠っている滋を見ていると




目を覚ました滋と目が合った・・・・





部屋には気まずい沈黙が流れる・・・・








「お、おはよう・・・」





「あっ・・おはよう・・・・」








「ねぇ 私・・夕べ・・・よく、覚えてないんだけど・・・?」








「えっ・・・あっ・・ごめん・・・」








「・・どうして・・ごめん・・なの?」










「あっ・・いや・・俺もよく覚えてなくて・・・その〜・・
 あの・・なんだ・・やっぱ、そういう事だよな・・・?」








「う・・・ん・・たぶん・・・」










「なぁ 俺達、このまま付き合っちまおうか!」







初めてだぞ、俺から女にコクッたのなんて





なのに・・・








「へっ…!何言ってんの?」







「・・い、嫌か?」







「ヤダよ!」








即答すんなよ!




傷つくだろ!!








「・・・俺じゃ不服なのか?」









「そうじゃないけど・・・ニッシーって付き合ってる女の人、沢山いるでしょ。」









「あーそんな事か。」









「・・そんな事って・・私には大切な事なのよ!」










「大丈夫だよ。お前と付き合うんだったら全部切るから。
 だから、なぁ いいだろう?」











「…全部、切る…の?」







「そう、だから俺じゃ嫌か?」








「嫌…じゃ…ない…」








「そっか、じゃぁ決まりな。」







そう言うと総二郎は滋に覆い被さってくる







「ちょ、ちょっと、ニッシー、何してんのよ!」









「何してるって、決まってんだろ。夕べの事、あんまよく覚えてないから。
 とりあえずもう一回ヤッとこうかなって思って。ダメ?」







「ダ、ダメ・・って・・ダメじゃない・・けど・・・」








「そっ、じゃぁ・・・・」










意外なカップルが東京で誕生していたその頃、パリでは・・・






















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