1週間の出張を終えNYへ帰り着いたのが夕方5時





いよいよクリスマス本番のNYは凍えるような寒さとは裏腹に




街も人もどこか浮き足立っている






空港からマンハッタン島へ続く道路は



相変わらずの渋滞でノロノロ運転の車からは




あちらこちらにサンタクロースが見える






すっかり陽の落ちきった空に星は見えず





ネオンの隙間に見える空は灰色の雲で覆われている







今日のNYの予報は雪






テレビでは今夜はホワイトクリスマスになるだろうと言っていた







ポケットに妻へのクリスマスプレゼントをしのばせ





心は既に妻との甘いホワイトクリスマスに思いを馳せていた





予定より少し遅れてしまったが二人で暮らすアパートまで帰り着いた






いくつものセキュリティーを通り抜け最上階のペントハウスの前まで辿りつくと




インターフォンを押す



しばらくしてインターフォン越しに聞こえてくる妻の






"お帰りなさい!"という声






俺はこの瞬間が好きだ






今までインターフォンなんて必要ねぇ生活を繰り返してきた




ガキの頃だって・・




NYへ来てからだって・・






俺の帰りを待ってくれている奴なんていなかったから





気紛れな生活を送ってきた俺にとって





鍵を開け出迎えてくれる妻の存在は何より大きい





今夜もインターフォン越しに聞こえてきた妻の声に





知らず知らずのうちに頬が緩む






「お帰りなさい!」






「ただいま!」







当たり前の言葉を口にするまでに掛かった長い時間を思うと




この場で妻を押し倒したくなる!





けど・・






今夜はマジでこの場で押し倒してやろうかと思ったぜ!!







「お前・・その格好いいな・・」





「本当?可愛い?」






俺の目の前でスカートの裾を軽く摘み一回転した妻の格好はミニのサンタ姿






「ああ・・すんげぇ可愛くて押し倒したくなる!」






「押し倒すのはケーキ食べた後にしてね」







「分かってるよ!それより腹減ったぞ!
 メシは用意してあんだろ?」






「うん、準備してあるよ!」






靴を脱ぎ長い廊下を歩いてリビングのドアを開けると





リビングではライトが極限まで絞られていて




ツリーに飾り付けられているライトが




暗い部屋の中でツリーだけを幻想的に浮かび上がらせていた・・




だけど・・寒みぃぞ!





部屋の中でどうしてこんなに寒みぃんだ?







「オイ!空調壊れてんのか?」





「壊れてないよ」





「だったらどうしてこんなに寒みぃんだ?!」





「天井が開いてるからだよ!」






「ああ・・そうか、天井が開いてるからか・・・・ん?」







今・・なんて言った?





天井が開いてるからって言ったよな・・?





なんで天井なんて開いてんだ?





目の前には恐ろしく背の高いツリーが




綺麗に飾り付けられている





そのツリーを下から上へ少しずつ目で追って行くと・・






ん・・・????








「オ、オイ!なななななんであんなとこに穴開いてんだよ!?」





リビングの天井にはぽっかりと大きな穴が開いていて




その穴から先っぽが突き出しているツリー・・・





「だから言ったじゃん!天井が開いてるって!」






「だ、だから!なんで開いてんだよ!?
 あんなとこ窓なんて無かっただろ?!」






「うん!無いから開けたの!
 あそこ開けるの大変だったんだよ〜!」







そんな事聞いてねぇーよ!






「なんで穴なんて開けたんだよ!?」






「だってツリーが入らなかったんだもん!」







意味わかんねぇーよ・・



















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