「だったら木の方を切ればいいだろ?!
 なんだって天井にあんなでっけぇ穴開んだよ?!」








「それはダメ!このもみの木はこれで完璧なんだから!」








完璧なもみの木って・・






基準が分かんねぇーんだよ?!





だけど・・






このもみの木は妻にとっては完璧な形、大きさらしく





部屋に入る高さに切るなんてどうしても許せなかったらしい・・





人にはどうしても譲れない物が存在するとは思うけどよ・・





この場合、優先すべきはもみの木より天井だと思うぞ!






どうすんだよ・・




こんなでっけぇ穴開けて・・・?






「あの天辺にね大きな星をつけたかったの!」






妻は日頃からNYの空には星が見えないと嘆いていた





でっかいツリーを見上げると先端には大きな星のオーナメントが





NYの夜空に突き出している






「だとしても雨降ったらどうすんだよ!?」






おっ!今、"あっ!?"って顔したな!?





な〜んも考えてなかったんだな?!








「ハァ〜・・お前のその後先考えずに行動するクセなんとかしろよ!」







「あんたにだけは言われたくない!」







「んだと?!俺様のどこが後先考えてねぇーんだよ?!
 昔っから後先考えねぇーで行動すんのはおめぇーだろーが?!
 そのたびに俺様がどんだけ迷惑してると思ってんだよ!?」






「あっ!約束破った!」






「なんの約束だよ?!」







「お互いの誕生日と結婚記念日とクリスマスは何があっても絶対に喧嘩しないで
 二人で楽しく過ごすって結婚する時に約束したでしょ?!忘れたの?」




忘れてねぇーよ!




クソッ!




俺・・なんでそんな約束したんだ・・?!





「だから一時休戦ね!」





"ハイ!握手!"





勝手に人の手握って話し進めてんじゃねぇーよ!





クリスマスが終わったら速攻で穴塞いでやるからな!






「ねぇ!ねぇ!凄い事発見したの!」







もうこれ以上何も発見しないでくれ!





俺の手を引っ張り強引にツリーの元まで連れてきた妻は





ちょっとここに寝転がってみて!と言うと





自分もツリーの横に寝転がった







「ほら!司も早く!」







下から俺のコートの裾を引っ張っている妻の横に




同じ様に寝転がると目の前に広がっているのは有り得ねぇーNYの夜空




見上げた灰色の空には金色の星が一つ




下からのライトに照らされて浮かんでいる







「綺麗でしょ?」





「ああ・・」







綺麗だな・・と続けようとして言葉を切った・・・







灰色の空から落ちてきたのは真っ白な雪





静かに・・




静かに・・・







ゆっくりと辿りついた雪がツリーを覆っていく





しばらく妻の横に寝転がったままで






空から落ちてくる雪を眺めていると





そっと俺の右手に重ねられる妻の左手





ずっとこの手を繋いで






二人でどこまで歩いて行くと誓った






10年ですっかりキャラの変わってしまった妻に驚かされることが多いけど






今はぽっかりでっけぇ穴が開いてるけど




一つ屋根の下で共に暮すうちに





もしかしたら妻の本質はこっちなのかもと思い始めている




あの頃の妻は生きていくのに精一杯で全く余裕が無かった





今でも鈍感で照れ屋で意地っ張りなところは変わっていないが





アクセク時間に追われている生活から解放され




伸び伸びしすぎの感はあるが





これが本来の妻の姿なのかもしれない・・







「ねぇ?司?」





「ん?」





「ケーキ食べない?」



「ケーキ?ケーキより先にメシ食わせろよ!」





「ケーキ食べたら押し倒していいんだよ」





ん・・?




それって誘ってんだよな?





俺・・誘われてんだよな?







「は、早くケーキ持って来いよ!」





「プッ!分かった、持ってくるから待っててね」






思わず上ずった声の俺に噴出した妻






スルリと外された妻の手







クリスマス用のケーキは妻お手製のブッシュ・ド・ノエル




丸太の形をしたチョコレートケーキに





サンタやら柊なんかが飾り付けられている






クリスマス定番のケーキを屋敷のパティシエに習って作ったらしい






少し不恰好な丸太もデコレートも





ハンドメイドだからこその味わいを醸し出している






俺でも食べられるようにと甘さ控えめのチョコレートケーキを





粉雪が降り積もるツリーの下で二人で頬張る甘〜いひと時





予報どおりのホワイトメリーメリークリスマス!









けどよ・・寒みぇ〜んだよ!














〜fin〜












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【あとがき】 クリスマスなのに甘くもなんともないお話しに 最後までお付き合いいただきありがとうございました。 素敵なクリスマスをお過ごしください♪             2006/12/22 KiraKira
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