「坊ちゃま、お呼びでございますか？」 杖をつきながらゆっくりとした足取りで部屋へと入ってきたタマ 「遅ぇーんだよ！呼ばれたらさっさと来い！」 「年寄りに無茶言わないで下さいませ。」 「うるせぇ！それよりつくしはまだ見つからねぇーのか？！」 「今、探させておりますのでもうしばらくお待ち下さいませ。」 「何時間掛かってんだよ？！ 屋敷の中にいるのは分かってんだからさっさと探し出してここへ連れて来い！」 「今、屋敷中を探させておりますが何分、坊ちゃま方の帰国が急なものでしたので メイドの数も足りておりません。お屋敷の全てのお部屋を確認するだけでも かなりの時間が掛かりますのでもう少しお待ち下さい。」 「言い訳はいいからさっさとしろ！」 どんなに俺が大声で怒鳴ったところで この妖怪のようなババァに通用しないのは分かっているが 機嫌の悪い妻に屋敷の中で撒かれてしまい 現在、妻が行方不明中という有り得ねぇ状況にイライラが募り ついつい声を荒げてしまう 妻の姿が見えなくなって既に半日以上が経っている 屋敷の外に出た形跡は無いので このバカデカイ屋敷の何処かにいるのは確かだから メイドやＳＰを総動員させて屋敷中を捜索させているのにいっこうに見つからない・・・ 妻はメイド達に人気があり慕われているし 何より呼んでもいろいろと理由を付けて なかなか来ないタマもグルになっているような気がする クソッ！ せっかくのクリスマス休暇なのに なんで俺は自分ちで妻を探さなきゃなんねぇーんだよ！？ コーヒーを入れ換えただけでタマが部屋から出て行ってしまった後、 いい加減マジでこんなバカげた状況を終わらせようと携帯を手に取った 妻の携帯に掛けたところで出てくれないのは分かっているから めんどくせぇけどメールを送る "ごめん、tukasa" ダラダラと言葉を書き連ねるよりは シンプルに一言だけの方が気持ちが伝わると思い 送信ボタンを押した 送信してから１０分・・ ２０分・・ ３０分・・ 広い部屋で一人 携帯と睨めっこしている俺の耳に届くのは カチカチとリズムを刻む秒針の進む音だけで 携帯は沈黙したまま・・ シカトしてんじゃねぇーよ！ 沈黙を貫く携帯を手に取り 再び妻にメールを送る 頭を掻きむしりたい衝動に駆られながらも 今度はもう少し言葉を綴ってみる "ごめん、反省してる。許してくれるならなんでもするからとにかく返事をくれ。tukasa" ここまで譲歩したら流石に妻も考えなおしてくれるだろう・・ と期待して送信ボタンを押し 再び携帯と睨めっこすること約５分 俺の携帯がメールの着信を告げた 送信してきたのは屋敷の中ではぐれて半日以上が経つ妻 メールを開いてみると書かれていたのはムカつく程にシンプルな一言 "ほんと？ " だけだった ムカつくけど返事が返ってきただけでも一歩前進したのだから ここはグッとこらえて返事を送る "マジだ。だからそろそろ顔を見せてくれよ。tukasa" 送信すると今度はすぐに返事が返ってきた 送られてきたメールを開いてみると "明日、午前１０時 ○●ビル前広場" とだけ書かれていた・・ どういう事だ？ 明日、朝１０時にここに来いって事か？ ま、待ち合わせすんのか？ 妻からのメールの意味が分からず 何度も読みかえしてみるが文面が変化するわけもなく 俺様の頭ん中に？マークが浮かぶ たっぷり１０分程考えてみたけど どう考えたって待ち合わせの時間と場所を指定されたみたいで 妻が今度は何を企んでいるのかさっぱり分からない なんとな〜くまた嫌な予感はするけれど 妻の真意を確かめために再度メールを送信しようとした瞬間、 妻からのメールが再度届いた メールに書かれていたのは "明日、絶対にそれ着て来てね" ご丁寧にハートマーク付きでおまけに妻の顔写真が添付されていた・・ 顔を見せてくれとは書いたけど・・ こういうんじゃねぇーんだよ！バカ女！！ ←BACK/NEXT→ |