妻はなかなか手強い・・・ 清く正しく美しい制服デートを強行した妻は 映画の次は毎日世界中で何億人という人間が食べている 世界共通のファーストフード店に俺様を誘い 昼食を済ませるとその後はゲームセンターでプリクラとかいう小さな写真を撮らされ 歩き疲れるとねずみ屋だかうさぎ屋だか・・・ 昔、一度だけ妻に連れて行かれた事のある店に連れて行かれ 高校生だからとあの頃にはなかった門限とかってやつを主張した妻によって ディナーも食べずに屋敷に帰りつくとそのまま姿をくらませてしまった またやりやがった！ 同じ屋敷の中にいるのに どの部屋にいるのか分からなくて せっかくのクリスマス休暇なのに 妖怪ババァに世話されている俺 苛々を募らせる俺の元に届いたのは妻からのメール 開いてみると書かれていたのは 明日の待ち合わせ場所と時間だった 明日もすんのかよ？！ 勘弁してくれよ〜！ デートなら今日で十分だろ？！ そう思って抗議のメールを返すのだけど 妻からの返事はないまま朝を迎えた 今日の待ち合わせ場所は有名な動物園の前 入り口チケット売り場の前に佇んでいた妻はやっぱり今日も制服姿 そういう俺も昨日と同じ格好で制服の上からダッフルコート姿 慣れとは恐いものだ・・ 慣れたのか？ 慣らされたのか？ どちらかは定かではないが とにかくあの妻のペースにすっかり慣らされて 大抵の事には驚かなくなってはいたけれど さすがに今回のはキツイ・・ 何日これを続けるつもりなんだ？ 制服デート３日目になるが未だ俺の野望は達成出来ていない 今までのデートで出来たのは手を繋ぐ事とキスだけ この二つはあの頃にもやってたからOKらしい・・・ だったら門限だってあの頃には無かっただろ？！ そんな俺の抗議も軽く聞こえないフリで 妻は上機嫌のまま制服姿のまま俺を街中連れまわしている クリスマスが近付くにつれ 街も人もますます浮足立っている そんな華やいだ雰囲気も 未だままならぬ制服姿の妻に 振り回されている俺を苛立たせるだけ 映画に始まり連日、動物園に遊園地に水族館と 庶民デートの定番スポットってやつに 連れ回されどこに行っても大勢の人でかなり食傷気味 当然のようにイブの今日も朝からショッピングに連れ回され かなり歩き疲れていた 「なぁ？どっかで一休みしねぇか？ そろそろ昼だし、どっかでメシでも食おうーぜ！」 「そうだね。けっこう歩いたし咽渇いたから・・・ あ！そうだ！久しぶりに類のお店に行かない？」 類の店・・・？ あ〜あの変なカフェか・・・ あれってこのビルだったのか・・・ 妻は行かない？と一聞すると俺に同意を求めているようだが 既に心は決まっているようでカフェに向かって歩き始めている １Ｆの入り口近くにあるカフェに向かっている途中 吹き抜けになっているスペースにはクリスマスツリーが飾られていて その周りではイベントがおこなわれていた 「ねぇねぇ司！抽選会やってるよ！」 抽選会？ なんだそれ？ 「なんだ抽選会って？」 「ほら！？さっき買い物した時にお店で抽選券貰ったでしょ？！」 「そんなもん貰ったか？」 「貰ったよ！」 そう言うが早いか・・・ 妻は俺のコートのポケットに手を突っ込んで 先程買い物した時に無造作にポケットに入れたままだったレシートを取り出した 「ほら！あった！これだ！」 妻が俺の目の前に差し出したのは 何やら印刷されているカラフルな名刺サイズのカード数枚 「これで２回抽選出来るよ！」 景品はなんだろうね〜？ と独り言を言いながら目の前の人ゴミへと入って行く妻 抽選会などという庶民のイベント初体験の俺は ただ妻の後ろをついて行くだけ 人ゴミの前に出るとパソコンが何台か並べられていて その画面にはスロットマシーンのような物が写っていて 買い物客はスタート・ストップボタンを押し 絵柄が揃うと商品券やブランド物などの景品が 貰える仕組みになっているらしい・・・ 貰える景品も特に珍しい物は無いのに 抽選会場は思いのほか沢山の人が押し寄せていて 皆それぞれに抽選券を手にパソコンが置かれているテーブル前に列を成している 景品には女が欲しがりそうな物が多数並んでいるが それにしても女の数が多いような気がしていたが その理由は次に妻が発した一言であっさりと解決した 「あっ！美作さんと花沢類だ！！」 妻の言葉に視線を前へと向けると そこにはあきらと類の姿があった ←BACK/NEXT→ |