大企業のジュニアだからってオフィスで踏ん反り返って書類にサインだけしていれば


仕事になるわけではないし夜な夜などこの誰だか分からない女をエスコートして


パーティーで適当に愛想を振りまいておけば済むというわけでもない



権力・金・地位・・・



人が手にしたがる物を幼い頃より手にしている俺達ジュニアだって



今の時代では実力の無い者、努力しな者は企業の中では自然と淘汰されていく


そんな時代だから




俺達ジュニアだって率先して工事現場にだって出向くし




クリスマスのイベントにだって出席する








今年は三連休で沢山のクリスマスの買い物客で賑わう俺が建設に携わったビル









クリスマスのイベントとしてミニコンサートなど様々な企画が連日催されていた













そんな中でもイブの今日だけ限定で催されている抽選会が一番のメインイベントだ









その理由はこの抽選会の1等と特賞の景品にある・・・







この抽選会を企画したのは俺の部下の女性社員で







特賞から5等までの景品が書かれた企画書を見た時は流石にのけ反り










その場で没にしたのに他の部下には好評で








役員会議にかけ判断を仰ぐ事で折り合いをつけていた










ビル内の店舗で五万円分の買い物をすると一回抽選が出来る








金額設定は高額になっているが





その分、景品も豪華だ









末等の5等でも10万円分の全国共通の商品券で




4等は有名ブランドの日本未発売の限定バッグ




3等には国内の高級温泉旅館のペア宿泊券




2等ペアでパリへのファーストクラスの航空券






ここまでは豪華だか普通の景品の範疇で





一見するとノーマルな抽選会に見えるけれど




問題はこの先、1等と特賞の景品だ







1特がツリー横に設けられているステージ上に取り付けられている宿り木の下で






花沢物産のJr.花沢類とのキス






そして特賞が俺、美作あきらとの一日デート






朝から夜まで一日エスコートする普通では出来ない豪華なデートプランが準備されている・・・













この景品のお陰でクリスマスイベントは大盛況で










数多くの女性が朝から抽選券片手に抽選の列に並んでいる・・・








だけど・・・






有り得ねぇだろ?












なんでクリスマスイベントの景品にされなきゃいけないんだ?







これでもれっきとした大企業のJr.でF4の一員なんだぞ!









こんなイベントに役員会の了解なんて出ないと思っていたのに







親父や他の重役連中はいい宣伝になると大ノリで





あっさりと役員会議を通過してしまい










なんの相談も無しに景品にされてしまい取り付く島などなかった類には






1等は出ないように設定してあるから






当日、会場に居てくれるだけでいいからと説得して何とか今日にこぎつけていた










実際、1等と特賞は一名限定だから









出る確率はほぼ0に近い設定になっている







類の機嫌は決して良くは無いけれど






こいつは元々、愛想のいいタイプではないので







ここに居てくれるだけで十分だ!












この抽選会の事は事前にテレビなどで宣伝されていたので











時間が経つにつれて抽選に並ぶ女性の数がだんだんと多くなってきていて






普段より増員されている警備員だけでは手が回らなくなってきていて







俺の部下も抽選券片手に鼻息の荒い女性達の整理に出払っている











そんな部下達を視界の端に置きながら







抽選に挑戦する女性に適当に愛想を振りまいていた俺の耳に届いたのは








聞き覚えのある声だった・・・






聞き覚えのある声に視線を上げると




そこにいたのは猛獣と猛獣妻だったが・・・








猛獣と目が合った瞬間にお互いが






見てはいけない物を見てしまった気がして瞬時に目を反らした






いろいろ疑問はある・・・





どうして猛獣夫婦がここに居るんだ?






どうして猛獣妻は英徳の制服着てるんだ?




いろいろと疑問が頭を擡げてはいるが・・・







それよりもとにかく・・







すげぇーな・・・






あいつの歳を考えない大胆さには頭が下がるけど





流石にその歳でその格好はキツイだろ?






もう少し自分の立場と歳を考えろよ!







だけど・・・






も、もしかして猛獣も制服着てんのか?








ダッフルコートを羽織ってはいるが







猛獣は俺と目が合った瞬間にバツが悪そうに







顔を真っ赤にして横を向いてしまったところを見ると







奴もコートの中に制服着てるな・・・










まさか猛獣が自らの意志で率先してって事は有り得ねぇから・・・





猛獣妻に着せられてはいるんだろうけど・・・





どんな流れになればあいつに制服着せる事が出来るんだ?





長い付き合いの俺達だって絶対に無理だぞ!






すっかり飼いならされてしまっている猛獣・・・






はからずもF4の内の3人が一同に介してしまったけれど



どうなんだこの状況は?







いい歳してクリスマスイブに夫婦で高等部の制服着てコスプレデートしてる奴と




クリスマスイベントの景品にされている俺と類








あの頃はこんな時が来る日があるなんて誰が想像出来ただろう・・・?








なんか古い歌のワンフレーズみたいだけれど




出来れば今日だけは顔を合わせたくなかった







そんな俺達の願いなんて気付くはずない猛獣妻が






ご機嫌でこちらに手を振っている







そして・・・





今までニコリともしなかった類が猛獣妻の姿を確認した途端





牧野限定の笑みを浮かべてやがる







互いの存在に気が付いているのに






そのまま無視し続ける事も出来ないので






小さく溜息を隠しながら抽選の列に猛獣妻と共に並んでいた猛獣の元へと向かって一歩踏み出した










「・・よ、よお!」






「・・お、おう!」






互いに上ずる声・・・





視線は微妙に外したままだ・・





「お前、何やってんだよ?」






「お、お前こそ何やってんだよ?」







互いに自分が置かれている状況を自らの口で説明するのには





かなりの労力が必要とされる








「俺は・・し、仕事してるだけだ!」







嘘は付いてねぇーぞ!






イベントの景品だって立派な仕事だ!







「俺はつくしとデートだ!」







「制服でか?」








思わず速攻で返してしまった言葉に猛獣の顔色が一気に変わった・・








「・・なっ!・・どんな格好してようと俺様の自由だろ?!
 それよりオメェーらはこれが仕事かよ?!」








「そーだよ!仕事だよ!」






互いに感じるのは形容しがたい気恥ずかしさ







それを上手く誤魔化す事が出来ずに





俺も猛獣も自然と声がデカくなってしまう・・・






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