NY−−今さらNYについての説明なんて必要ねぇーと


思うけどここには変な奴が多い





特にこのマンハッタンには・・



10年に及ぶNY生活で変な奴は数多く見てきたが



もしかしたらその中でも一番は俺の最愛の妻かも・・



しれないってことに・・最近気がついた・・




事件(?)の始まりは水曜日の午後




いつものようにオフィスで書類と格闘している所へ



珍しく妻から電話が掛かってきた



普段、日中には絶対に電話なんてしてこない妻が慌てた声で電話口で叫んでいる・・



『司ーー?!大変なの〜〜〜〜!!!』



でっけぇ声・・




思わず耳から受話器を遠ざける・・



「・・どうしたんだよ?でっけぇー声出して?
 なんかあったのか?」




『司ぁ〜〜〜!!大変なの!!!!』




だからそれは今、聞いたから・・・





「だから何が大変なんだよ?!」




『花沢類が卵産んだのぉ〜〜〜!!!』





ブウッーーーーー!!!



アチィ!!




ちょうど口に含んだばかりだったコーヒーを噴出してしまった・・




電話口ではまだつくしが叫んでいる・・






『ちょっと!司!!聞いてるの?!』





「ああ・・聞いてるよ!
 それよりも、類が卵なんて産むわけねぇーだろ?!
 寝ぼけてて夢でも見たんじゃねぇーのかよ?!」





『バカ!花沢類って人間のじゃないわよ!!』




バカって・・




お前に言われたくねぇーよ!!




『カモの花沢類が卵産んだのよ〜〜!!』





カモの類?





『ねぇねぇ司?カモってオスでも卵産むの?』





んなわけねぇーだろ!







「で?カモが卵産んだのがなんでそんな大変なんだよ?」






『だって〜〜この子達みんな男の子だと思ってたんだもん!!』




あ〜あ〜・・そういう事か・・





「でも卵産んだんだったらメスだって事じぇねぇーの?」





『どうして司はそんな冷静なのよ!?』





・・って・・・





カモが卵産んだだけでお前はどうしてそんなにも大騒ぎできるんだよ?





こっちが聞きてぇーよ!





「お前が興奮しすぎなんだよ!」





『この冷酷男!』





ブツッ・・



プゥーツゥツゥツゥ・・・





その捨て台詞はねぇーだろ・・?



なんだ?




いきなり電話してきて



何かと思えば・・




カモが卵産んだって・・





それに俺の何処が冷酷なんだよ!!




あのバカ女!!






この電話がこの後、続く騒動の幕開けだった・・





オスだと思っていた鴨が実はメスで卵を産んだ・・・




だからどうしたって言うんだよ?!




元々、鴨をペットだって言って飼っている神経だって分かんねぇーのに

俺にとっては鴨も卵もどうでもよくて大して気にも留めていなかった




・・・のに・・・




最愛の妻は夫である俺のことなどそっちのけで



寝ても醒めてもカモ・カモ・カモ




ムカつくのが卵を産んだ鴨の名前が花沢類だっつーことだ!!





朝から晩まで類類言いやがって!



ムカつくぞ!



すんげぇムカつくぞ!!



オイ!俺はムカついてんだぞ!!





分かってんのかよ?!



ちょっとぐらい相手しろ!!






鴨の類が卵を産んでからというものすこっしも俺に興味を示さねぇー妻を

無理やり捕まえてバスルームへ放り込む





最初の内はギャー!ギャー!と文句を言ってたけどしばらくすると・・



・・って・・俺が洋服を着たままの妻を抱きかかえ


バスタブに沈めたからなんだけど



諦めたのかやっと大人しくなった





後ろから抱えこむように抱きしめたまま

まった〜りと甘〜い時間を過ごしているにも関わらず

あいつの口から出てくるのは鴨の事ばっかり・・





一つの事に気を取られると他の事が全て頭ん中から抜け落ちるクセは健在だ・・





でもって・・・




こいつの今の一番の関心事は卵の父親は誰かって事のようで




「あのね、ずっと花沢類と見てて分かったの!」





「なにが?」





「花沢類の相手だよ!卵のパパ!!」





「そんなもん誰だって・・って言うか・・どの鴨だっていいじゃねぇーかよ?
 大して変わんねぇーだろ?」





「ダメだよ!ちゃんと卵のパパが誰なのか分かっておかないと!」





卵の父親がそれ程、重要だとは思えねぇーけど





「で?誰だったんだ?」






「あんた!」





「はぁ?」






「だから!花沢類の卵のパパはあんただったのよ!」







激しくどーでもいいけどよ・・

類が卵産んで

俺が父親って・・

ホラーじゃねぇーかよ!?






うおっ!想像しちまった・・・





「・・・鴨の?だろ?」







「当たり前でしょ!花沢類の相手があんたなんてホラーだよ!怖すぎ!!」





ケラケラ笑ってんじゃねぇーよ!



俺はちっとも笑えねぇーんだよ!








「なんで分かったんだよ?卵の相手が・・その・・鴨の俺だって?」





「それはね!」





と始まった長〜い説明によると・・・





俺が仕事に行っている大半の時間を類カモ観察に費やしているつくしは

卵を抱く類カモに寄り添うようにくっついている鴨がいることに気がついた





どうやらそれが俺カモのようで

たったそれだけであっさりと俺カモは類カモ卵の父親に認定されてしまった





科学的根拠は一切無し!!






いや・・そもそも俺には鴨の区別なんてつかねぇーから

どれが類カモでどれが俺カモなのかさっぱり分かんねぇ!






「お前、どうやって鴨を見分けてんだ?
 なんか区別する方法でもあんのか?」





「えーっとね、いつも寝てるのが花沢類でしょ。
 で、いつも毛づくろいしててピカピカツヤツヤなのが美作さんでしょ・・」





そういうんじゃなくて・・





「ちげぇーよ!なんか身体的な特徴とかで見分けてんじゃねぇーのかよ?!」






「しんたいてきなとくちょう・・?」






「そーだよ?!例えば羽の色が違うとか・・?」





「う〜ん・・羽の色ねぇ・・どの子もみんな同じかな・・?
 あっ!でもあんただけは分かるわよ!」




「おっ!?やっぱそれって愛の力だな!」





「クスッ・・違うよ。」




笑いながらあっさり否定してんじゃねぇーよ!



ムカつくな!




「鴨のあんたはね、うちに来てすぐの時に鏡に写った自分にケンカ売って
 鏡に激突した時に出来た傷がくちばしの所にあるの。
 だからあんただけは分かるのよ。」





言っとくけど鴨だぞ!



俺じゃねぇーぞ!



鴨の俺だぞ!!







だけど・・いい加減カモから離れろよ・・



ちっとは俺の相手もしろ!





「なぁ?明日、外でメシ喰わねぇーか?」





「なに?いきなり?」





「別に急じゃねぇーよ!
 新しいフレンチの店見つけたからお前を連れて行ってやろうと思ってたんだよ。
 最近、二人っきりで外で食事してねぇーだろ?」





「そーだね・・」




「じゃあ、明日8時に予約入れとくな!
 この前、買ったドレス着て行けよ!」





「うん、分かった・・」




つくしと外で食事する約束をして・・・



それだけで俺の頭ん中にはすでに明日の妄想で一杯に・・



美味いもん喰って食事の後は二人で腕でも組みながら


妻の好きな散歩でもして



機嫌が良ければメープルのスウィートでも・・



いや・・たまには嗜好を変えて違うホテルにでも連れ込んで・・



そのまま朝まで・・なんて・・





考えてたのに・・





俺って呪われてんじゃねぇ?






「ところで・・お前・・いつまで服着たまんまなんだよ?!」





「別に入りたくなかったのにあんたが無理やり入れたんでしょ?!」





「脱げよ!」





「ヤダ!」



「脱がすぞ!!」





「ヤダってば!服着たままお風呂に入るのも結構楽しいわよ!?
 あんたも服着たら?」





「お前・・俺をからかって遊んでんだろ?!」





「あっ!?バレた?」





「脱げ!脱がしてやる!!」






「キャー!スケベ〜!!へんた〜い!!!」






甘いんだか・・?



甘くないんだか・・?





なんかよく分かんねぇー夜が今日も過ぎてゆく・・・















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