「リフォームぐらい自由にさせてやればいいいじゃねぇーかよ?
 誰も知り合いのいないNYまで付いて来てくれたんだぞ!
 それぐらい好きにさせてやれよ!」



「そんな事分かってんだよ!
 だから部屋も家具も車も全部あいつに選ばせてやったのに!」



「急に模様替えしたくなっただけじゃねぇーのか?
 女って真夜中だっていきなりそんな事する時ってあるだろ?」



「まともに女と付き合った事のねぇあめぇーらには分かんねぇーんだよ!」




・・・お前にだけは言われたくねぇ・・・



「それはお前だって同じだろ?確かに俺らは一人の女とマジで付き合った事ねぇーかもしんねぇーけど、
 牧野に関してだったらお前より分かってんぞ!」



「俺があいつの事なんも分かってねぇって言いてぇーのか?」



「そうは言ってねぇーけど、あいつだって今までのキャリアを全部捨てて
 お前に付いて行ったんだからもうちょっとそこら辺を理解してやれって言ってんだよ!
 あんまり縛り付けてるとマジで逃げられるぞ!」



「牧野、可哀相。
 今度、NY行った時、慰めてあげよ。」



「類!てめぇーは一生、NYにくんな!」




「いちいち相手になるな!
 で、牧野はどんな風にリフォームしたんだ?」



「クソッ!・・あのバカ、リビングに芝生敷き詰めやがった!!
 何が公園みたいで気持ちいいでしょ?だよ!!」



ブッ!!
思わず飲んでいたワインを噴出してしまった・・・



「・・なんだ?芝生って・・?」



「芝生だけじゃねぇーぞ!メインのベッドルームもゲストルームも全部のベッドを放り出して
 特大のトランポリンに変えやがったし、風呂にはカモ放しやがった!」



リビングが芝生で・・
ベッドがトランポリンで・・
風呂にカモ・・?
公園じゃねぇーかよ・・




「プッ!」
「クククククッ・・!」



「笑うんじゃねぇーよ!」



「あ〜あ〜あいつかなりストレス溜まってんなぁ〜」



「牧野、可哀相・・」



「俺の方が可哀相なんだよ!」



「どっちでもいいけどよ・・その斬新な模様替えの原因はなんなんだよ?」



「俺がパリに行ってる間、部屋から一歩も出られなかった腹いせだろ?!」














「ギャーー!!」



バスルームから悲鳴と共に桜子が飛び出してきて・・



その後ろからカモ・カモ・カモ・カモ



カモが4匹・・・



「あっ!ごめん、ごめん!
 言うの忘れてた!大丈夫?桜子?」



「大丈夫なわけないでしょー!!」




「だからごめんって謝ってるじゃん!
 それよりもバスローブかなんか羽織った方がいいね・・
 持って来てあげるよ。」




先輩が持って来てくれたローブを引っ手繰るようにして受け取り
袖を通すと滋さんはすでにカモで遊んでいた・・



「先輩!どうしてバスルームにカモがいるんですか!?」



「だってカモは水鳥だから・・」



「そんな事聞いてるんじゃありません!!」



「あっ!もしかして桜子はカモが怖いとか?」



「怖くなんてありません!
 ビックリしただけです!!」



「可愛いでしょ?
 この子達ちゃんと名前もついてるんだよ。」




そんな事どうでもいいですから・・・
質問にちゃんと答えてください・・



「ねぇねぇ、つくし〜?この子はなんて名前なの?」




滋さんの手には逃れようとバタバタとはばたきを繰り返し暴れているカモ・・



「キャッ!」



カモが滋さんの手を突っついた・・・



やっと滋さんの手から逃れられたカモは部屋の隅へと移動すると眠り始めている・・




「こら!花沢類!突っついちゃダメでしょ!
 滋さん、大丈夫?」



「うん、大丈夫!大丈夫!
 ちょっとびっくりしただけだから。」



いや・・そうじゃなくて・・滋さん・・



「・・せ、先輩?カモに花沢さんの名前をつけてるんですか?」



「そーだよ!あの子、いっつも寝てるから花沢類みたいでしょ?
 それにあの子!毛づくろいばっかりしてるのよね、それに神経質だから美作さんって言うの、
 それからずーっと鏡の前にいるのが西門さんであっちでドアに喧嘩売ってるのが道明寺って言うの。」



「キャ〜!カモのF4〜?」



「うん、可愛いでしょ?
 私のペットなの〜!」



せ、せんぱいとしげるさんがうちゅうじんにみえます・・・・









「お前ら、笑い事じゃねぇーんだぞ!
 あいつはカモにお前らの名前つけてんだぞ!」



「「「はぁ?」」」




「カモを4匹、バスルームに放してカモのF4だぁ〜とか言って喜んでんだよ!」



カモのF4・・?
それってやっぱカモのいい男・・じゃなくていいオスなんだよな?



「気に入らない!」



「ど、どうしたんだよ?類?いきなり・・」



「だって俺じゃなくてカモの俺が牧野と仲良くしてるんでしょ?」



はぁ〜・・・



「カモのお前も寝てばっかであいつはカモのお前なんて相手にしてねぇーんだよ!」



そういう問題か?



「ふ〜ん、よく寝てるから俺なんだ・・
 じゃあカモの司はドアに喧嘩売ってるとか?」



「「プッ!」」




司・・顔が真っ赤だぞ!
当たってんだな・・



「類・・お前、いつNYへ来たんだよ!?」



「行ってないよ。」



「嘘つけ!じゃあなんでその事、知ってんだよ!?」



マジで当たってんのかよ・・



「なんとなくそう思っただけだよ。
 カモのF4で寝てばっかりだから俺なんでしょ?
 じゃあ毛づくろいばっかりして綺麗好きのカモがあきらで
 鏡に映った自分の姿にうっとり見惚れてたりするのが総二郎で
 何にでも喧嘩売ってるのが司って名前でしょ?」



「俺はそんなナルシストじゃねぇーぞ!!」



総二郎・・引っかかるポイントそこかよ・・




「どう?間違ってる?司?」



「お前、やっぱあいつと会ってんだろ?!」



「当たってるんだ。」



「俺の質問にちゃんと答えろ!
 会ったのか?!」



「会ってないよ。」



「・・じゃ、じゃあ何で分かるんだよ!?」



「俺、牧野の事なら司よりも分かってるから。
 牧野とキスしたことあるし。」




ブッ!!
類・・なんで今、この状況でそんな事をサラッと言えんだよ・・?



ほら・・バカが固まってんじゃねぇーかよ!



この固まりが解けた後、暴れだすんだよなぁ・・



「あいつとキスしただぁーー?!」



「うん、したよ。それも牧野からキスしてきた。」



ほらみろ!
バカが興奮して立ち上がったじゃねぇーかよ!



「司!落ち着け!」



「あああああいつが自分からそんな事するわけねぇーだろーが!!」



「してきたよ。それもかなり熱烈なやつを。」



類・・言葉をはしょるな・・
ちゃんと順序だてて全部話せ!!



あれは別に牧野がキスしたくてしたわけじゃねぇーだろ・・



みんなで飲んでるときにお前の横に座ってた牧野が滋に呼ばれて振り返った拍子に

お前にぶつかっただけで、ちょっと頬に口唇が触れただけなのに

どさくさに紛れてお前が顔をずらしたから口唇と口唇が触れたんじゃねぇーかよ!


それにな!びっくりして固まってる牧野の頭を押さえつけて離さなかったのはお前の方で

どっちっかって言うと熱烈にキスしてたのはお前の方だろうーが!!



面白いから司には教えてやんねぇーけど・・



「そ、そんなわけねぇーだろ!
 嘘つくな!!」



「嘘じゃないよ。司はないの?牧野からキスしてもらった事?」



「お、俺だってそ、それぐらいあるよ!」



「ふ〜ん、何時?」



「い、いつって・・」



「何時?」



「・・・・」



「無いんだ?」



「・・・こ、高等部ん時だよ!!」



「ふ〜ん、10年も前の話しなんだ?
 ちなみに俺は去年の話しだよ。」



ハァ〜・・司をからかうのはガキっぽいやり方が一番だって分かってるけど
ここまでガキっぽいと口を挟む気がしねぇ〜・・・



類の言葉に額に幾つもの青筋を浮かべてワナワナと怒りで震えている司に・・



「類!お前はあいつにキスされただけだろ?
 俺なんてあいつに迫られた事あんだぜ!」



「それは牧野が酔っ払ってたからでしょ?
 誰でもよかったんじゃないの?」



「そーだけどよ・・酒のせいで瞳は潤んでるしスカートのスリットからは太腿が見えてるし、
 すっげぇ色っぽくてよ・・マジであのままやっちまおうかと思ったぜ!」




総二郎・・なんでお前までそこに参戦すんだよ・・



呆れて総二郎を睨みつけているとパリンという音が鳴った



音のした方へ向くと・・



司の手に握られていたグラスが砕け散っていた・・


すっげぇ・・バカ力・・



ワナワナと震え額にはいく筋もの青筋を浮かべ
怒りがMAXを超えててしまっている・・



「クソー!あのバカ女!ぶっ殺してやる!!」



物騒な一言を残して俺達を置いて店を出て行ってしまった・・・



「あっ!オイ!司!!」



陽炎のような青い怒りのオーラを身に纏う司の後姿に声を掛けるが
もう誰の声も届いていないようだ・・



「オイ!お前ら、二人してなんであんな事、言ったんだよ!!」



「これで静かになったでしょ?
 美味しいワインは静かに飲まないと。」



いや・・そうじゃなくて・・類・・



「どうすんだよ?アレ!
 牧野、マジで殺されんぞ!!」



「あきらは心配しすぎなんだよ!
 司の事は牧野に任しときゃいいんだよ!
 あいつが司なんかに負けるわけねぇーだろ?
 どうせ返り討ちにあってお終いなんだよ!で、俺達は日本で平和に暮せる。
 めでたし!めでたしだ!」




「なにがめでたし、めでたしだよ!
 知らねぇーからな!どうなっても!」



「大丈夫だって!気にすんな!
 さっ、お前も飲めよ!」



どうなってもマジで知らねぇーからな!!



総二郎に注がれたワインに口をつけていると
たった今、出て行ったばかりの司が戻ってきた



「・・ど、どうしたんだよ?」



無言で俺達に白い封筒を差し出す司



「なんだよコレ?」





「結婚式の招待状だよ!
 クソー!ムカつくけどおめぇーら呼ばねぇーとあいつがキレるからな!
 招待してやるよ!ありがたく受け取れ!
 式は来月だからな!絶対に来いよ!」




言いたい事だけ言うと再び行ってしまった司・・



なんだ?



結婚式の招待状・・?



手渡された封筒を裏返してみるとそこには
司の名前と牧野の名前が・・



総二郎が中を確認している・・



「・・来月って・・後、1ヶ月もねえじゃねぇーかよ!
 場所はNYの教会って・・」



「マジか・・?」



「司、これを俺達に渡したくて呼び出したんだね。」



「そーだな・・でもって、肝心な物を渡すの忘れて戻って来た・・ってか?」



「そうなんじゃない?」



ハァ〜〜〜・・



なんだよ・・結婚式って



上手く行ってんじゃねぇーかよ!!



ほんのちょこっとでも真剣に心配してやって損した・・・










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