「で?どうして赴任先がシベリアだっていうのが復讐になるわけ?」



いまいちそこん所が分かんないのよね・・


「そこにはガスも水道もねぇーし携帯だって使えねぇーんだぞ!」


まぁ、確かに不便なところだろうけど・・


「でもそれを成功させれば凄い事なんでしょ?」
「成功すればな!」
「どういう事よ?」
「今んところ成功する確率は10%以下だ!」
「そんな確率のプロジェクトで大丈夫なの?」


「大丈夫なわけねぇーだろ!?
 下準備と根回しに2年もかかってんだぞ!」
「2年も掛けて成功率10%って・・
 もう止めたほうがいいんじゃないの?」
「幾らつぎ込んでると思ってんだよ?!
 今さら止められっか!簡単に言うな!」
「でも続けても損害が大きくなるだけでしょ?」
「全く勝算がねぇーわけじゃねぇ!
 まぁ見てろよ、俺様に不可能なんてねぇーんだからよ!」



普通、自分の事を俺様って言ってる時点で負けだと思うんだけど
不思議とこいつが言うと本当に不可能じゃないって
思えてくるから変なのよね・・
これってやっぱり惚れた弱みって奴?
私って自分の予想以上にこの男にイカれてるのかもね・・


「それにあの男は優秀なんだろ?」

ん?


「ねぇ?あんた、もしかして前から山岡君の事知ってた?」
「ああ。」
「じゃあ、どうしてさっき私の話しを聞いた時、知らん顔したのよ!?」
「あの男がお前の昔の男だってのは知らなかったんだよ!」
「どういう事よ?」
「お前の前の会社で優秀なのがいるって聞いた事はあったんだよ!」
「それが山岡君?」
「そーだよ!引き抜いてやろうと思ってたんだけどな、
 止めてシベリアへ飛ばしてやった!」



勝ち誇った顔しないで・・


「どうだ?俺様に惚れ直しただろ?
 泣いて謝る気になったか?」



まだ続いてたのか・・?
だけどそれって私が彼の人生を大きく変えちゃったって事よね・・?
ハァ〜
知らず知らずのうちに私の口から零れ落ちた大きなタメ息



「なにタメ息付いてんだよ?」
「だって・・私が彼の人生変えちゃったんだもん・・」
「バーカ!お前のせぇじゃねぇーよ!」


アホ!そんな事分かってるわよ!
直接的な原因はあんただ!あんた!!


私と関わった人が道明寺によって大きく運命が変わってしまう・・
高等部の頃で十分、経験済みだったはずなのに・・
油断してたなぁ・・



「あ〜あ〜・・お腹すいた・・」
「じゃあメシ喰って新婚旅行に行くか?」
「はぁ?」
「結婚式の後は新婚旅行行くだろ?ふつう?」
「普通って・・仕事は?」
「休み取った。一週間しか取れなかったけどな。」


簡単に言わないでよ・・・


「忙しいんでしょ?本当に大丈夫なの?」
「新婚旅行に行くぐらいの余裕はあんだよ!
 まかせとけ!俺様に不可能はねぇんだから!」


またそれか・・
もう、こいつの仕事を気にするの止めよう・・


「そっ・・で?どこへ行くの?」
「新婚旅行っつったらハワイに決まってんだろ?」


ハワイ?
嬉しいかも・・?


「本当?ハワイに連れて行ってくれるの?」
「ああ、ハワイ島にある別荘に連れて行ってやるよ!」
「やったー!私、ハワイ島って初めて!
 前はマウイ島しか行けなかったから嬉しい!
 あ〜あ〜ハワイって何年ぶりだろう?
 2年?ん〜・・じゃなくてもう3・・ゲッ!?」



なんかすんごい青筋立てた奴に睨まれてるんだけど・・?


「お前、ハワイ行ったことあんのか?」


これまた地の底から這い出てきたような
すんごい低〜い声で聞かれてるんだけど・・?


「あ、あるけど・・どうしたの?」
「お前、昔、ハワイは新婚旅行で行くから嫌だっつって
 俺様の誘いを断ったよな?」
「あっ!?・・ハハハ・・・」
「笑って誤魔化すな!」


「誤魔化してはないけど・・む、昔の事だから。
 それに新婚旅行で行くハワイは初めてだから!」
「当たりめぇーだ!!」



怒鳴り声と共にゴツンと頭に衝撃が・・


「痛〜い!なにすんのよ!?」
「誰と行ったんだよ?」
「と、友達!友達と行ったの!」
「ウソつくな!」


「もう!いいじゃない!
 場所じゃなくてあんたと新婚旅行に行くって事が重要でしょ?
 そうでしょ?あんただってそう思わない?」



お願い!これで納得して!!


「一週間、俺様の言う事なんでも聞くって約束しろ!」
「な、なんでもって・・」
「いいな?!約束したからな!」



した覚えないんだけど・・
しょうがないか・・?


「分かったわよ!聞けばいいんでしょ!?」
「じゃあ、行くぞ!」



なんかよく分からない展開だけど山岡君はシベリアへ行って
私は今からハワイに行くのね・・?


「あっ!向こうへ行ったらボディーボード教えてあげるよ!
 一緒にやろうね。」
「お前、それ誰とやったんだ?あの男か?」


もういちいちうっとーしいぞぉ〜〜!


「あの男って山岡君?違うわよ。
 彼とはハワイに行ってないもの。」
「おまっ!他にもまだ男がいんのかよ!?」
「あのね・・10年で付き合った人が2人って少ないでしょ?
 私はこれでもモテたのよ!お付き合いする人に困った事ないのよ!」
「淫乱女!」



あのさぁ・・ここメープルのロビーなんだよね・・
そんなでっかい声で恥ずかしい言葉言わないでよぉ〜〜
すっごい注目浴びてるじゃない!


「あんただけには言われたくないわよ!」
「俺はな、お前と離れてた10年間で他の女と旅行した事も
 マジで惚れたこともねぇーんだぞ!」



それって自慢になるのか?


「いいじゃない、今はあんたに惚れてるんだから。」
「お前が俺様に惚れてるようには見えねぇ!」
「じゃあ、ハワイに行ったらビキニ着てあげる。」
「Aカップのビキニなんて見たくねぇーんだよ!」
「失礼な!Bカップよ!」


「大して変わんねぇーだろ!?」
「大違いよ!」
「スクール水着買ってやるよ!」
「カブト虫!」
「ああっ!?なんか言ったか?」


「愛してるって言ったのよ。」
「ウソつけ!カブト虫っつっただろ?!」


聞こえてんじゃん・・

「ウソじゃないわよ。」
「じゃあ、もう一回言えよ!」
「ん?」
「今のもう一回言えって言ってんだよ!」
「カブト虫?」
「今夜は寝かせねぇーかんな!
 覚悟しとけよ!」








         〜 Fin 〜






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