このお話しは以前(かな〜り大昔)にお友達サイト様とのクリスマス企画のお話しです^^









「許して欲しいんだったら土下座しろよ!」


「はぁ?!」


「土下座して俺様に謝罪しろっつてんだよ!」


「ど、どうして土下座なんてしなきゃいけないのよ?!」


「俺様の純情を踏みにじったんだから当たり前だろーが!土下座でもまだ足りねぇぐらいだ!」


勝手な事を言う彼に頭に血が上る


「純情って・・・あんたね!いい加減にしてよ!私は土下座なんてしないからね!」


「お前に拒否する権利なんてねぇんだよ!
 土下座が嫌なら責任とって俺様と結婚しろ!」


「なっ・・・なんの責任よ!?」


「俺様を傷付けた責任だよ!」


「冗談じゃないわよ!?」


思わず手に持っていたバッグを目の前で勝手な事を言っている男めがけて投げ付けたけど

蝿を払うように軽く払いのけられてバッグは地面に転がった・・


ハァ〜なんでクリスマスイブにこんな場所でこんな時間に

私、牧野つくしが待ち合わせに1時間も遅れて来た道明寺と言い争っているかと言うと・・・


話しは10日程前に遡る・・・

記憶を無くしたままNYに行ってしまった道明寺は大学を卒業した後、
一年間NYで仕事をし満を持して日本に戻って来た時には記憶を取り戻していた




日本に戻る事が決まった後に記憶が戻ったと道明寺は言っていたけど

詳しい状況は聞いていない



それが今から約3年前の話し

5年ぶりに再会した時、当時私には付き合っている人がいたから
これからはダチとして仲良くして行こうぜ!と言われた時は正直ホッとしていた


今さら好きだの愛してるだのと言われても
既に新しい一歩を踏み出していた私としては
迷惑なだけだったから・・・



あれから3年
道明寺は確かにあの言葉通り
友達として接してくれていて
私も彼の事は友達としてF3と同じように接してきていたのに・・・


12月に入り
今年も残り半月あまりとなった週末の夜
道明寺から食事に誘われ
現在、恋人はおらず特に予定のなかった私は
いつもの軽〜い気持ちで出掛けて行った・・・


まさか・・・
まさかあんな事になるなんて夢にも思っていなかった・・・

















寒い!
寒いじゃないのよ〜!

地球温暖化だとか異常気象だとか世間では言われてるけど

真冬にこんな広場で待ちぼうけをくらったら出てくる言葉はただ一つ

寒いのよ〜!ぐらい・・・

それに私を包み込むこのイライラの原因は気温だけじゃなくて道明寺が指定して
きたこの待ち合わせ場所にもある

道明寺が指定してきたのは数年前に出来た商業ビルで
ビルの前には大きな広場があって
その広場の真ん中には日本で一番大きなツリーが飾られビルの周辺もクリスマス
イルミネーションに彩られていて華やかな雰囲気を演出している

雑誌やTVでも紹介されるクリスマスの定番スポットだし
何よりこのツリーの元でキスしたカップルは将来絶対に結ばれるという
真偽不明の都市伝説なんてものまであるもんだから右を見ても左を見ても
イチャついたカップルばっかりでそんな中、私は一人でこの寒空の下
いつまで経っても姿を現さない道明寺を待っている

時計はすでに9時を回っている
待ち合わせの時間は8時だったから私は既にこの場所に1時間以上突っ立っている事になる

時間的にもまだまだ広場には人影も多くて
待ち人来たらずで一人でいるのは私だけ
いい加減、怒って帰ってもいい時間よね?

さっきから”え〜い、帰っちゃえ!”って気持ちが浮かんでは消え
浮かんでは消えで

それでもなんとかこの場所に踏み止まっているのは
呼び出したのが私の方で忙しい時期なのに無理言って時間を作って貰ったのも今回ばかりは私が悪いというか・・・
言い過ぎたって思うから・・・
5分でもいいからちゃんと会って彼の顔を見て謝るのが大人として正しい姿だと思っているからなんとかこの場所に踏み止まっている

だけどやっぱり寒いものは寒い!

それに私は今夜だけできっと一生分の他人のキスシーンを目撃したと思う

見たくもないキスシーンを横目に思い出すのは10日前のあの夜の事

道明寺に食事に誘われていつもの軽い気持ちで出掛けて行った私

彼にしても予定がドタキャンになって急に時間が出来たから久しぶりに飯でも付き合えなんて言っていたのに


迎えに来てくれた彼の運転する車に乗り込み

連れて行かれたのは横浜の夜景が綺麗に見えるホテルのレストランで
眼下に広がる港街の夜景と美味しいお酒とお料理を楽しんだんだけど・・・

ある意味・・・楽しみ過ぎちゃったのよね・・・

いつになく道明寺も機嫌が良くてお酒も進んでいて
私もそんな彼に引きずられるようにかなりの量のお酒を飲んでいた

言い訳するわけじゃないけどあの夜は気持ち良くかなりの酔っ払いだった私

あまりお酒に強くない私は
当然のように昨夜の記憶が曖昧で
朝目覚めた時に飛び込んできた裸の道明寺に跳び起き
同じく裸の自分を確認して悲鳴を上げた・・・


つまり・・・
早い話しが酔っ払って道明寺とやっちゃったのを全然覚えてなくてそれなりに慌てる私と
何故か余裕で当たり前のように再び私を抱き寄せ朝っぱら事におよぼうとした道明寺


なんとか彼を押し返したんだけど
その後の彼の額には当然、青筋が浮かび始めた

とにかく今の状況を理解したいから落ち着いて話そうとベッドの上で向かい合ったんだけど
どうも話しが噛み合わなくて
結局、最後は言い合いになっちゃって

お前は一体どういうつもりで俺と寝たんだよ?!
なんて怒鳴られちゃってかなり頭に血が上ってた私はよせばいいのに
正直についうっかりなんて答えたら道明寺はそのまま何も言わずに部屋から出て行ってしまっていた

それが10日前の話し
私は酔っ払って元彼とやっちゃった揚句に横浜のホテルに置き去りにされたのよね

どっちかって言うと私の方が可哀相じゃない?
そう思ってたんだけど

あの日から二日後の夜、私の部屋をフラリと訪れたのは花沢類

彼は私と道明寺の間に何が起こったのか
なんとなく知っていた

どうして知ってるのか?

あんまり知りたくないんだけど・・・

花沢類いわく道明寺が美作さんに八つ当たりして
それを美作さんが花沢類に愚痴ったかららしいんだけど・・・

”司ははっきりと牧野と何があったのか言わなかったみたいだけど
牧野の気持ちが分からないって落ち込んでたらしいよ”


いつも多くを語らない彼が帰り際に残した言葉


私の気持ちが分からないって・・・


そんなの・・・

私だって分かんないわよ!

まさか彼とこんな事になるなんて夢にも思ってなかったって言うのはほんとの気持ちだけど

冷静になって思い返してみると
あの朝、彼に結構酷い事を言った自覚はある・・・

動揺してたとは云え
言わなくてもいい言葉まで言って
彼を傷つけたのは確かかも

花沢類が帰り一人になった後、
そういう結論に達した私は
道明寺に謝罪すべく彼に連絡を取ったけど
忙しいのか・・・
それとも私とはもう話したくもないからなのか
道明寺に繋がる事がなくて
花沢類を通じてやっと取れた連絡で
指定されたのが今、私が待ちぼうけをくらっている広場

この寒空の下、いっこうに姿を現さない道明寺に謝ろうって気持ちがだんだんと萎え始める





萎える気持ちと闘いながら
その後も道明寺を待ち続ける事30分

すっかり体は冷えきって
心なんてとっくの昔に冷えきってしまった午後10時
やっと広場に道明寺が姿を現した

対峙した・・・
まさにそんな感じで
甘い空気なんて皆無で道明寺と私の周りだけさらに気温が下がったんじゃないか
ってぐらい冷た〜い空気を身に纏っている

2時間も寒空の下で待たされて文句の一つでも言ってやろうと思ってたんだけど
明らかに不機嫌で両手をコートに突っ込んだまま
面倒くさそうに私の前に立った彼になんとなくだけどまた喧嘩になりそうな予感がして
出かかっていた言葉を飲み込み
さっさと謝るだけ謝ってこの場から立ち去りたいと思った
なのに・・・

私より先に口を開いた彼の第一声がさっきの
”土下座しろ!”だった・・・

偉そうな態度で俺様な台詞に
頭に血が上り謝るという当初の目的も綺麗さっぱり忘れて
案の定の展開になってしまった・・・
あ〜あ〜どうしてこうなっちゃうかな・・・
喧嘩をしに来たわけじゃないの
こんな言い争いをするために2時間も
こんな場所で彼を待っていたわけじゃないのに・・・

ふぅ〜と大きく息を吸い込んで気持ちを落ちつける

冷静になるのよ!つくし!

冷静になって言い過ぎた事を謝って
さっさとこんな寒い所から立ち去って
暖かい部屋に帰ってゆっくりお風呂に入って
あの夜の事も今夜の事も全部忘れていつもの私の日常に戻るのよ!!



大きく深呼吸してから真っ正面から彼を見据える

「この間は言い過ぎました。ごめんなさい。今日は謝りたかっただけなの忙しい
のに時間作って貰ってありがとうございました。」

早口に言いたい事だけ言うと
”それじゃあまたね”と
その場から立ち去ろうと彼の足元に転がったままだったバッグを拾い上げようと手を伸ばした

少し前屈みになって足元のバッグを拾い上げようと伸ばした私の腕を横から伸びてきた彼の手にいきなり掴みあげられた

もう少しのところでバッグに届かず空を切った私の手は目標物を見失い宙をさ迷った

いきなりの事に腕を掴まれたまま顔を上げると
そこにあったのは・・・

怒っているような・・・
だけど・・・
泣いているような・・・
なんて表現すればいいのか分からない・・・
今まで見た事ない表情で私を見下ろしていた彼

「な、何よ?!痛いから離して!」

「逃げんのかよ?!」


私の腕を掴んだままの彼から吐き出され言葉


「に、逃げるって・・・そんなつもりないわよ!」

「逃げてんじゃねぇーかよ!全部なかった事になんてさせねぇからな!」


「そ、そんなつもりないけど・・・だけど・・・お互いに今まで通り友人として付き合っ
ていく為にはあの事は忘れた方がいいと思うんだけど・・・」


「俺はお前の事を一度だってダチだなんて思った事なんてねぇんだよ!!」


再び同じ言葉を繰り返した道明寺は
私の腕を掴んだまま体を動かすと真っすぐに私を見下ろす位置に立った

「記憶が戻った時、あきら達に・・・あきら達だけじゃねぇな・・・姉貴もタマも 桜子も
滋も全員が同じ事言いやがった・・・」

「な、なんて言われたの?」

「記憶が戻ったからって今はもう新しい一歩を踏み出してるお前の幸せを壊すよ
うな真似はするなって言われたんだよ!」

知らなかった・・・
みんながそんな事を道明寺に言っていたなんて・・・
全く気が付いてなかった・・・

「お前に付き合ってる男がいるって知った時、その男ぶっ殺してやると思ったけ
ど・・・そんな事してお前に嫌われたくなかっんだよ!だからあいつらの言うとおり
ダチから始めようと思ったんだよ!」

「私は別にあんたの事を嫌ってなんてなかったけど・・・」

「けど身構えてたじゃねぇーかよ!」

「あ、あれは身構えてたって言うか・・・緊張してたって言うか・・・花沢類から記憶は
戻ったって聞いてたけどなんせあんたと会うのは5年ぶりだったから・・・」

「とにかく俺はこの3年間ずっとお前に誠意を見せてきたのにその結果がこれか
よ?!」

初めて知る彼の本心に上手く言葉が返せなくて
私はただ”ごめんなさい”と呟いただけだった

この”ごめんなさい”はただこの場だけを取り繕おうとか切り抜けようとして出
た言葉じゃなくて私の心からの言葉

「土下座は出来ないけど・・・なんて言ったらいいのか・・・自分でもよく分からないん
だけど・・・やっぱり私が言った言葉は軽率だったと思うし・・・ごめんなさい」

「謝んじゃねぇーよ!謝られると余計にムカつくんだよ!」

「・・・ご、ごめん・・・」

声を荒げた道明寺に対して私の口から出てきた言葉はやっぱりこの言葉だけだった


今さらに知った彼の本心に私は返す言葉を持ち合わせていない・・




「だから謝んなっつてんだろ!クソッ!どうすりゃいいんだよ?!
 なぁ?どうすればお前みたくすっきりと割り切ってダチとして付き合えるんだよ?
 教えてくれよ!俺はお前の事を一度だってダチだと思った事ねぇーし、
 どんなに冷たい態度取られてもムカつく事言われても嫌いになれねぇーんだよ!」



クソッ!吐き捨てるように最後にもう一度そう言うと

私の腕を掴かんでいる手に更に力を込めた道明寺










思いがけない告白に完全にパニクってる私・・・





そりゃパニクるよね・・・




私はここに謝りにきただけなんだもの・・・



それに相手は道明寺なんだもん・・・





だって今さらでしょ・・・?






今さらもう一度、道明寺となんて言われても



正直どう答えていいのか分からない







私も道明寺もあの頃とは状況が違いすぎるし



何より私は彼の事を本当はどう思ってきたのだろう・・・?







「分かんないわよそんなの!・・・分かないよ・・・
 今さらそんな事言わないでよ!手離して!」






「離さねぇーよ!やっと捕まえたんだもう二度と離さねぇよ!!
 あの夜、お前は俺と過ごして楽しくなかったのか?
 俺はすっげぇ楽しかったんだよ!お前と二人っきりで過ごせて
 あの夜はお前の方が積極的でやっと俺のところへ戻ってきてくれたと思ったのに!」






な〜んか道明寺の言葉の中に聞き捨てならない台詞を聞いたような気がする・・・






あの夜は私の方が積極的だった・・・?





なんか聞きようによっては私が誘ったみたいじゃない!?






「ちょっと待った!なんか今の言い方だと私の方が誘ったみたいじゃない?!」




「そーだよ!お前の方から誘ってきたんだよ!
 都合良く全部を酒のせいにしやがって!そんな事も覚えてねぇーのかよ!?」






私から誘ったなんて・・・






そんな事・・・





絶対に有り得ないっつーの!









「そんなの絶対に嘘だ!
 私が覚えてないのをいいことにデタラメ言ってんじゃないわよ!」






「デタラメなんて言わねぇーよ!
 とにかく俺様の純情を踏みにじった責任は取ってもらうからな!
 やり逃げは許さねぇ!」








や、やり逃げって・・・







おっきな声で言うんじゃないわよ!





広場にはさっきまでよりは人は少くなくなったとはいえ



まだまだカップルが沢山いるんだからね!




あんたのデッカイ声に反応して




こっち見てるカップルもいるじゃない!








「大きな声で恥ずかしい事言わないでよね!
 注目浴びちゃってるじゃない!」






「ほんとの事なんだからいいだろ!?
 それよりもいい加減認めろよ!」









「嫌だ!絶対に私から誘ってないもん!」







「そうじゃなくてお前も俺に惚れてるって事だよ!」






私が道明寺に惚れてるですって・・・?





どうしてそんな流れになるのよ?!




有り得ないでしょ?!





冗談じゃないわよ!!






「冗談じゃないわよ!どうして私があんたに惚れてなきゃいけないのよ!?
 百歩譲ってもし私の方から誘ったとしてもそれは酔ってたからで、
 それを都合良くとらないでよ!」







「どんなにお前が否定してももう遅いんだよ!
 いい加減、自分の気持ちに気付けっつーの!
 お前はいくら酔っ払ってたからって好きでもねぇ男と寝るような女じゃねぇーし
 ましてや自分から誘うなんて絶対にしねぇんだよ!」





言い切られて迷う・・・





う゛〜・・この場合どっちを認める事が出来ないじゃない!





酔った勢いで誰とでも寝る女・・・



私は断じてそんな女じゃないわよ!







だけどそしたら私が道明寺と寝たのは酔った勢いなんかじゃなくて


彼の言う通り




彼に惚れてるからって事になっちゃうじゃないのよ!







「そんなの・・どっちでもないのよ!
 酔った勢いでもないしあんたに惚れてもない!」








自分でも答えになってないと思うけど・・・





どちらも認める事が出来ない・・・






そんな私を見て意地悪な笑みを浮かべた彼は


一歩だけ私ににじり寄ると腕を掴んでいた手を離し



そのまま私の全てを包み込むように背中へと腕を回した







ムカつく!








道明寺の腕の中の暖かさが冷え切っている私の身体にじんわりと伝わってくる・・・





この暖かさがすっごくムカつくの!






それにすっぽりと・・





当たり前のように納まってしまう自分がムカつくのよ!






彼に抱きしめられて・・・



それだけで・・・






涙が出そうなくらい幸せで満たされていた







あの頃の感覚を今でもすぐに思い出す事の出来る自分自身がすっごくムカつくのよ!








私を抱きしめたまま耳元に口唇を寄せた彼から吐き出されるとどめの台詞












−牧野、愛してる−









−お前の全てを愛してる−








−俺が全部受け止めてやるから帰って来い−








−もう二度と一人にしたりしないから帰って来い−








ムカつく・・



今さら自分勝手なセリフを吐く私を抱きしめているこの男がすっごくムカつく!





だから私の口から吐き出された言葉は






「私はあんたなんて好きじゃないのよ!」










かろうじて返した否定の言葉なのに




それをあっさりと跳ね退け






−まぁ時間はたっぷりあるんだからこれからゆっくりと認めさせてやるよ−












なんて低い声で囁かれて







思わず身体から力が抜けて






腰から崩れ落ちそうになった寸前のところで







背中に回ったままだった彼の腕が私の腰を支え







そのまま軽々と私の身体を自分の肩へと担ぎ上げてしまった






「グェッ!ギャ〜!」




いきなり天と地が逆さになって身体が宙に浮いた・・・






「色気のねぇ声だな?!」








「ちょ、ちょっと!何やってんのよ?!
 下ろしてよ〜!下ろせ〜!!」






私を軽々と肩に担ぎ上げたまま歩き出した道明寺






彼の肩から逃れようとジタバタと抵抗する私・・・





「暴れんな!今からもう一度あの夜をやり直そうぜ!」 







嫌だ!



やり直さない!






「ヤダ〜!勝手に決めるな〜!下ろせ〜!!」






「でっけぇ声出すなよ!注目浴びてんぞ!?」






あんたのせいでしょ!?





他人事みたく言わないでよ!






尚も抵抗を続ける私にはお構いなしに




車に向かって歩き出した道明寺だったんだけど





”おっ!忘れもんだ!”



と聞こえるかどうかの小さな声で呟くと



広場中央に置かれているツリーに向かって踵を返し始めた






ツリーの前でストンと地面へと私を下ろした道明寺は






天と地が逆さになり着地した瞬間、






クラリと立ちくらみして足元がフラつく私の頬を両手で挟み込むと




強引に自分の方へと向けた





少し前屈みになって私と視線を合わせる道明寺








「冷てぇな、お前・・・俺のせいだな。
 ごめんな・・・こんなとこで長い時間待たせて・・・」







私の頬を挟み込んだままの彼の掌から




彼の温もりが伝わってくる・・・






スーッと心に染み込んでくる彼の想いが






冷え切っていた私の身体と心を温めていく・・・








本当の事言うと・・・





今はまだ道明寺の事をどう思ってるのか分からない・・・







今だってあの夜のようにただ流されてるだけかもしれないし





このまま行ったらまたあの夜とあの朝の繰り返しで




後悔するだけかもしれないけど




なんだかそれならそれでも





いいんじゃないかなぁ〜なんて思えちゃうのも




このツリーの魔法かしら?








頬を挟み込んでいた彼の手が







ゆっくりと頬を撫で上げるように動いて






彼の顔が近付いてきて






目の前に影が出来てツリーが消えた・・・







真偽不明の都市伝説






こうなったら自分の目で確かめてやる!






                〜Fin〜
















        <あとがき>
        このお話しはバレンタインデー・ホワイトデー話しに続きます。
        バレンタインデーのお話しはこちらからどうぞ♪
        ホワイトデーのお話しはこちらからどうぞ♪




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