「平和だよなぁ〜」



「ああ・・平和だ・・」



「ふぁぁ〜眠い・・」









        

── Every day ──

春の穏やかな陽射しが降り注ぐ英徳大学のキャンパスの中庭で 爽やかな風を頬に向けてのんびりと総二郎、類と共に午後のひと時を楽しんでいた 俺達F4は現在、英徳大学の2回生 司は一年という約束をお袋さんとどう話しを付けたのかは不明だが (怖くて聞けないってのが本心だけど・・) 俺達と共に2回生へと進級してきていた そして牧野もこの春に晴れて特待生として英徳大学に進学し 再び同じキャンパス内で時間を共にしている この猛獣と珍獣のカップルは相変わらず人騒がせな事に変化は無く 今や英徳名物になりつつある・・ この二人、昔のように寄ればケンカなんて事は少なくなったのだが 人騒がせな事には変わりはない いくら特待生だからと言っても牧野は相変わらず貧乏でバイト三昧の日々を過ごし 司はそんな牧野のストーカーと化している・・ 牧野と付き合い始めてから気がついた事だが この15年来の付き合いになる親友は異常な程のヤキモチ焼きで独占欲が強く 寂しがり屋で一人で居る事が出来ないうえにキス魔だと言う事・・ 何時でも何処でもどんな時でも牧野に触れていないと落ち着かない上に わざと人目のある場所で牧野にキスをしたがる 周りの人間に牧野は自分のものだとアピールしたいのだろうが・・ 時を場所を選ばないキス攻撃に牧野の叫び声が木霊しない日はない 俺達からすればそれはマーキングに見えてしまう・・ 牧野は人前でキスをされて黙ってそれを受け入れるような女じゃない 毎回、毎回、お決まりの反応をするこれまた全く成長の見えない女だ この二人の関係は今のところ一進一退ってところで・・ まぁ〜以前のようなお子ちゃまのお付き合いってわけじゃねぇーみたいだけどな・・ 少しでも隙を見つけるとキスしようとする男と隙だらけのくせに抵抗する女・・ 大学部のキャンパスに多いときでは日に何度も牧野の叫び声が響き渡っている だけど今日は珍しくその叫び声も聞こえる事が無く 穏やかな時間が流れていた 「今日はあいつら出て来てねぇーのか?」 「俺は会ってねぇーけど。」 「午前中、非常階段で牧野に会ったよ。」 「お前らまだ非常階段行ってんのかよ?!」 「うん、いいお天気だったからね。」 答えになってねぇ・・ 「類!お前は日向ぼっこしに大学へ来てんのかよ?」 「二人だって俺の事言えないでしょ?  あきら達は何しに来てんの?」 まぁ・・それを言われると返す言葉はねぇーわな・・ 高等部の頃よりは真面目に講義を受けるようになったけど それでもここに居る時間の半分以上はカフェに居るかこうやって中庭でのんびりしている事が多いからな・・ 要は暇だしここに来れば誰かしら居るだろーし 何より牧野をからかって遊ぶのは楽しい・・って事だな だけどそのおもちゃにも今日は会う事なく 結局は暇を持て余して中庭で三人 ボーっとしてるだけ 「ふぁぁ〜」 横に座る総二郎が大きく欠伸をするとゴロンと芝生の上に横になったのを 視線だけで追いかける こんな陽気じゃ類じゃなくても眠くなるのはしょうがねぇーか・・・ 類なんてずーっと半分寝たような状態だし 俺も総二郎にならって"ふぁ〜"と小さく欠伸を零すと両手を後ろについて空を見上げていた 透き通るような薄い青空に雲がゆっくりと流れていく 類じゃねぇーけどマジでこのまま此処で昼寝すんのもアリかなぁ〜 なんて神経質な俺が珍しく思ってしまうほどのんびりとした気持ちのいい午後のひと時だったのに・・ やっぱり嵐はやってきた・・ そして一瞬で通り過ぎて行った・・ ダッダッダッダッ・・という勢いよく走る足音が近づいてきたと思ったら 目の前の植え込みをハードルよろしく飛び越えて牧野が現れた ん? 牧野? 寝っころがっていた総二郎と類も驚いて身体を起こした そんな俺達に気付いているのか? ・・気付いていないのか? 定かではないが 止まる事なくミニスカートを翻し俺達の間を一気に駆け抜けて行ってしまった・・ 「あいつ・・パンツ見えてたな・・」 「ああ・・見えた・・」 「白だったね」 俺達にパンツを見せてくれるという出血大サービスのオマケ付きで あっと言う間に駆け抜けて行った牧野・・ 何をそんなに急いでんのか知らねぇーけど・・ あいつ・・足はぇー 見る見る間に距離が遠ざかっていく・・ 全速力で走る牧野の背中を見送ってすぐ再びこちらへ向かって走ってくる足音が響いてきた・・ ん? なんて思っていると 牧野がハードルのように飛び越えた植え込みを軽〜く一跨ぎするように現れたのは珍獣の相方の猛獣君だった・・ うぉ!? 「よっ!つ・・・」 声を掛ける間もなく遠ざかっていく司の背中 「今日は何やってんだ?あいつら?」 「さぁな・・?鬼ごっこでもやってんじゃねぇーか?」 大学部の広い中庭で植え込みを飛び越えながら全速力で走る女と それを必死に追いかけている男 遠ざかる二人の背中を追いかけながら・・・ 「まるで獲物を追いかける猛獣だな・・」 「ああ・・サバンナで腹をすかせたライオンに追いかけられる  トムソンガゼルだな・・」 「トムソンガゼルって言うより牧野もライオンに見えるけど?」 「じゃああれは発情したオスライオンに追いかけられてるメスライオン・・ってか?」 「そうだね。」 類・・お前、楽しそうだな・・ ぼんやりと司と牧野の追いかけっこを眺めていた総二郎が 「なぁ、この後どうなるか賭けねぇーか?」 俺らって・・何処まで暇なんだよ・・ と思いながらも・・俺だって嫌いじゃない 「いいぜ!じゃあ俺は司が追いつくに10万!」 これが一番確率が高いだろ? 「じゃあ俺は牧野が逃げ切るに10万な!」 総二郎は牧野かよ・・って事は俺の勝ちだな! 「類!お前はどっちだ?」 「ん?俺は・・牧野がこける方にしとく。」 そんな方ねぇーよ! けど・・まぁ、いいか・・俺の勝ちは決まったようなもんだしな! 「じゃあ俺が司で総二郎が牧野で類は牧野がこけるだな?  後で文句言うなよ!」 「言わねぇーよ!」 「クスッ・・言わないよ。」 類が笑いを零しながら言い終えた瞬間・・・ 植え込みを飛び越えようとした牧野が足を引っ掛けてこけた・・・ 類・・お前って予知能力でもあんのか? 「ギャーーー!!」 色気のない叫び声と共に牧野の身体が植え込みの向こうへ消えた・・ が・・ すぐに追いついた司に助け起こされた 牧野を助け起こした司はそのまま その場で牧野を抱きしめキスをしようとしている 抱きしめられ顎を持ち上げられキスされそうになっている牧野は 司の腕の中から逃れようともがいている だけど腕に力を込めている司から逃れる事が出来ない・・ 司の顔が牧野へと近づき 二人の顔が重なった・・ うんざりする程の濃厚なキスを繰り返す司が見える・・ 遠くから眺めている俺達にもはっきりと分かる・・ 牧野は観念したのだろうか? もう抵抗を止め司の腕の中で大人しくしている・・ だけど・・やっぱり牧野は牧野だった 公衆の面前で抱きしめられてキスをされて大人しくしているような女じゃない! キスする事に集中していて司のガードが緩んだのだろうが・・ あれ程、濃厚なキスをされながらも反撃の一瞬のチャンスを見逃さない 牧野も凄い女だと思う・・ ふいに牧野の腕が動いたと思ったらその拳が司のわき腹にクリーンヒットした・・ 思わず牧野から身体を離し前屈みになった司にすかさず次の衝撃が襲う バコッ!!と鈍い音と共に牧野の上段回し蹴りが決まった!! 思わず拍手したくなってしまう・・ たまらず崩れ落ちたオスライオンをその場に残し メスライオンは再び全速力で走り始めた あっと言う間にトップスピードの乗るメスライオン・・ だけどオスライオンの方もそのまま追跡を諦めるような奴じゃない! 軽〜く頭を2〜3回振るとすぐに体勢を立て直しメスライオンを追いかける 「あいつ・・またパンツ見えてたな・・」 「ああ・・バッチリ見えたな・・」 「やっぱり白だったね。」 猛獣と珍獣の鬼ごっこ・・ 今はもう二人の姿は見えず 時折、風に乗って牧野の叫び声が響いてくるだけ 「平和だよなぁ〜・・」 「ああ・・平和だな・・」 「ふぁぁ〜・・眠い・・」 嵐が去って再び訪れたのは爽やかな風が頬を撫でる穏やかな午後・・ 「で、結局、誰が勝ったんだ?」 「俺だろ?」 「俺でしょ。」         〜 Fin 〜 『あとがき…』 ↓に以前のままのあとがきを残してあります!…が! 文章の中にフリーにと書いております。 それは変わりないのですが… 以前のサイトの名残でBBS等という文言が残っております。 現在のサイトにはBBSは無く管理人とコンタクトの取れるツールは メールのみですのでお持ち帰りいただいても特に連絡の必要はございません♪               2018/01/15 KiraKira 【あとがき・・と言うよりい・い・わ・け】 ん〜・・言い訳しようと思ったんだけど・・ その言い訳すら出てこない・・>< 相変わらずの駄文だわ・・(涙 このお話し20万打記念←今さらですが・・(TOT) としてフリーにしたいと思います。 こんなお話しですがもしよろしければご自由にお持ち帰りください。 尚、背景は素材屋さんからの借り物なのでお持ち帰りはご遠慮くださいませ。 お持ち帰りの際にはBBS等で持って帰るね〜と一声かけていただければ幸いです。                 2006/04/05 KiraKira
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