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※このお話しは以前(かな〜り大昔)にお友達サイト様と『Music Box』という企画をした時のお話しです^^








♪〜♪〜♪〜



風呂からあがりビールを片手にあいつの姿を探していると


開けた放たれた窓から心地よい風と共に少し音程の外れた歌声が聴こえてきた




フッと頬が緩むのが分かる・・・


なんの歌なのかさっぱり分からないがあいつの後ろに立ち


窓に身体を預けしばらくその調子の外れたリズムに耳を傾けていた



少しずつ秋の気配が近づき屋敷の広大な庭に面している窓からは


少し乾いた冷たい空気が混ざるよ季節になった



高等部を卒業後、NYの大学に進み4年後の6月に大学を卒業し

その2ヶ月後にやっと日本に帰国できた



空港に出迎えに来ていた仲間達の力を借り牧野を車に押し込み


そのまま区役所へと連れて行った



リムジンの中では大人しかった牧野だけどこれから何処へ行き

何をしようとしているのかに気付いた後はリムジンの中でひとしきり大暴れし


俺にあきらに総二郎の三人がかりで車から引き摺り出し逃げられないように両脇をカッチリと固め


無理やりペンを握らせ婚姻届にサインさせ牧野つくしは道明寺つくしになった



多少・・



いや・・かなり強引なやり方だけど


あいつの事だからまだ大学生だとか卒業したら社会人として働きたいとか

言い始めるだろうからこれぐらいやらねぇーとあいつは手に入らない




婚姻届を出した後もギャーギャーと往生際の悪い彼女を今度は仲間達と共にジェットに押し込み


そのままハワイへ・・・


ハワイでは挙式準備のために一足先に現地入りしていた姉ちゃんと滋、桜子と合流して

そのままハネムーン兼夏休みに突入し8月一杯、ハワイを楽しみ帰国




そして帰国して2ヵ月後の10月には妊娠発覚






翌年の春には女の子が生まれ、現在、つくしは妊娠6ヶ月


年末にはもう一人産まれる予定の3.5人家族




結婚して5年


相変わらずだけど昔ほど何でもかんでも俺に突っかかってくる事も無くなり


高等部の頃からは考えられないほど穏やかで落ち着いた毎日を過ごしている








少し音程の外れた歌声はまだ続いている



ハミングの中に時おり歌詞が混ざる



♪〜君だと信じた瞬間に 強い風が吹き乱れた ♪〜







「まま〜、おんちぃ〜。」



声のした足元へ視線をやると最近は少しお姉ちゃんになる自覚が出始め


何でも自分ひとりでやりたがるようになった我が家のお姫様が


パジャマ姿で手には大切なうさぎの人形を抱えて俺を見上げていた




「ぱぱ〜、だっこしてぇ〜」



下から両腕を突き上げてくる風花(ふうか)を抱き上げ目線を一緒にする



「ぱぱぁ〜ふうちゃんのほうがままよりおうたじょうずだよ〜。」



風花は幼稚舎に通い始めてからいろんな歌を覚えて帰ってくる


「ふうちゃんがままにおうたおしえてあげるぅ〜、
 ぱぱぁ〜おろしてぇ〜。」


風花の希望通りに下へと降ろしてやると



♪〜あっるぅこぉ〜あっるぅこぉ〜わたしはぁ〜げんきぃ〜♪



こちらも何だかよく分からない歌を振りつきで唄い始めた・・


「風花?なんだその歌?」


「ぱぱ、しらないの〜?とろろのおうただよぉ〜!
 ようちしゃでならったの〜。」


「とろろ・・?」



「とろろってぱぱみたいにおっきいの〜。
 おくちもおっきくてガォ〜〜っていうんだよ〜。」


「怪獣か?」



「ちがうよ!とろろはいいこなの〜!
 でね、ねこばしゅにのるの〜。」




身振り手振りで説明してくれてるけど・・


なんの事だかさっぱり分かんねぇ・・



「クスッ・・ふうちゃん、とろろじゃないでしょ。
 トトロでしょ。」



後ろから聞こえてきたのはつくしの声




「・・と・・と・・とと・・とろ・・?・・とろろ〜!」



言えてねぇ・・・


「クスクス・・ふうちゃん?明日も幼稚舎でしょ?そろそろ寝ましょうね。」




「えぇ〜〜やだぁ〜!ふうちゃん、おうたうたいたい〜!」



「じゃあ、お部屋までお歌を唄いながら行こうか?」



「うん♪ぱぱぁ〜おやすみぃ〜♪」



「おやすみ。」








♪〜あっるぅこぉ〜あっるぅこぉ〜わたしはぁ〜げんきぃ〜♪


重なる二人の歌声・・・



同じタイミングで外れる音程



風花のおんちはつくし似だ・・



左手はつくしと手を繋ぎ右手に持っているうさぎをブンブン振り回しながら


部屋を出て行く二人の後ろ姿を見送る



少しだけ残っていたビールを飲み干し

俺も二人の後を追う



君だと信じた瞬間
強い風が吹き乱れた
いつからか癒されて戸惑いも消えて
探してた未来へと続く道
君となら行けるかもね
君だよこの扉を開く鍵はきっと


つくしが口ずさんでいたメロディー

誰のなんて歌なのかさっぱり分からねぇーけど


どうしてあいつがこの歌を唄っていたのかは分かる・・・



俺も同じだから・・・










              〜Fin〜












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