inserted by FC2 system ///




※このお話しは以前(かな〜り大昔)にお友達サイト様と『Music Box』という企画をした時のお話しです^^


    CPはあき×つくです♪

















「滋さん綺麗だったね。」


「ああ、そうだな。
 でもあの超ミニのウエディングドレスにはまいったけどな・・」


「でも似合ってたし、なんか滋さんらしくていい結婚式だったなぁ〜。」



「そうだな。」



公園のブランコに二人座り星空を見上げながらの会話


遠くから車のクラクションの音が響いてくる


人影の見えない真夏の夜の公園




    −−−− Summer Candles −−−−



街中のアスファルトには陽炎が立ち

木々の間からは蝉達の大合唱が鳴り響く真夏の日曜日


滋の結婚式が執り行われた



相手は10歳年上の海洋学者


知り合ったのは青山の路上・・


きっかけはコンタクトレンズ


滋とぶつかった拍子にコンタクトを落としてしまった相手と青山の路上に這いつくばってコンタクトを探したらしい



で、結果は・・



コンタクトは滋の靴の下からみつかり
責任を感じた滋は相手を無理やり眼鏡屋へ連れ込み
そのままがっぷり四つに組んで押し倒し・・
いや、押し出しで一本勝ち!



大河原グループの一人娘と海洋学者



当然、結婚に至るまでは上から下まで大騒ぎだったし

当の海洋学者さん自身も最初はかなり引き気味だったみただけど

滋は本気だった



牧野に料理を習ったり一緒にスーパーに買い物に行ったり
相手の生活レベル、育った環境、夢を理解しようと形振り構わないその姿に
しだいに相手も心が揺らぎ気持ちを固めた



滋の両親も娘の一生懸命な姿を見て
とりあえず交際にはOKを出し
やっとひと段落したと思っていたのがほんの半年前


まだ学生だという事もあり結婚云々の話が出るのはまだ先の事だと思っていたのだが・・


相手の海洋学者にマイアミの大学での研究の話しが持ち上がり
アメリカへ行くことになってしまった
当然、滋は一緒に行こうとしたが
事はそんな単純な話しじゃない

とりあえずで交際する事にOKはした滋の両親だったが
結婚まで許したわけじゃない
話し合いの余地なしで屋敷に監禁され外出できなくなってしまった滋は
屋敷を抜け出し連れ戻されを繰り返していたが
そんな中で滋の妊娠が発覚し一気に結婚という運びになった


それ以前から滋に振り回され息切れ状態だった俺達は
あまりの展開に唖然としながらも幸せそうな滋の姿に
心の底から彼女の幸せを祈っていた


最初っから一番近くで巻き込まれて・・


いや、滋の嵐のような恋愛を応援してきた牧野は


式の間中、泣きっぱなしで仲間達に呆れられていた




「ねぇ、美作さん?」



「ん?」



ギーコギーコと少し錆び付いたブランコを漕ぐ音と共に

牧野の声が俺の耳に響いてくる


「人生って一度しかないでしょ?」


「どうしたんだ?いきなり?」



「いきなりじゃないよ・・ずっと考えてた事だから・・」



少し俯いて一度言葉を切った牧野が


俯いていた顔を上げ俺の瞳をまっすぐに見つめている


黒目勝ちな大きなその瞳に見つめられ

瞳を逸らせない



「ずっと考えてた事だから・・聞いてくれる?」



「なにを?」



「私の告白・・」


「告白?俺に?」



「うん・・聞いてくれる?」



「ああ・・」



「私ね・・ずっと滋さんを見てて羨ましいって思ったの・・
 好きな人にあんなにも一生懸命になれる滋さんが羨ましいって思ったの。」



「そーだな・・俺も同じ事思ったよ。」


いや・・今回だけじゃない・・


ずっと前から・・・


司が牧野を振り向かせようと一生懸命になっていた頃から


俺はたった一人の相手に自分の全てをぶつける恋愛をバカにしながらも


羨ましいと思っていたんだ・・・


将来を自分の手で選べない


その言葉で自分自身をがんじがらめにして


自分の人生を諦める準備をしていただけなんだ


欲しい物があれば格好なんて気にせずに


形振りなんて構わずに手に入れればいいんだ


たとえ叶わなくても手に入れる努力をする事は

無駄じゃないんだから・・・


今回の滋を見て本当にそう思った



「私も後悔しないようにちゃんと自分の気持ちを伝えたいと思ったの。」



「そっか・・頑張れよ。」



「クスッ・・うん、頑張る。」




頑張れよと言った俺の言葉に彼女は一瞬だけ頬を緩ませ



「私ね美作さんの事が好きなの。」




ん?



俺?




突然の告白に完全にフリーズしてしまった俺・・・






「あっ!?伝えたかっただけだから気にしないでね。」





だって・・






「おまっ・・卑怯だぞ。」





「卑怯って・・告白するから聞いてくれる?って言ったら
 OKしてくれたじゃない。」






「まさか俺に対する告白だなんて思ってねぇーからだろ!?」






「だから気にしないでねって言ったじゃん。」






「だから・・それが卑怯だって言ってんだよ。
 それにお前・・司の事はいいのかよ?」





彼女の突然の告白になんて言葉を返せばいいのか分からない・・





「道明寺?・・道明寺の事はもうとっくに吹っ切れてるよ。
 それに美作さんも知ってるでしょ?私が道明寺に玉砕したの。」





「ああ・・」





ダメだ・・俺・・




ずっと好きだった牧野に告白されてるのに・・・




気の効いた言葉一つ返せなくて




挙句の果てに司の名前まで持ち出して・・




4年前、港で暴漢に刺され牧野の記憶を失ってしまった司は




そのままNYへ旅立ってしまった




司がNYへ旅立つ直前、自分を忘れてしまっている司に対し




牧野はきちんと自分の気持ちを伝えていた




結果はあっさり玉砕





その場面に居合わせていた仲間達が言葉を失い立ち尽くす中で




牧野だけはすっきりとした表情をしていた




その顔を見た時、俺は彼女に2度目の恋に落ちたんだ・・







「私ね・・道明寺に告白して振られた事は後悔してないよ。
 むしろあの時、何も言わないままの方が後悔してたと思うから。
 だけどやっぱり何処かで人を好きになる事に臆病になってたんだと思うの。
 だから・・段々と美作さんの事を好きになっていく自分に気付かないフリしてたの・・」



「でもね・・花沢類から大学を卒業したら美作さんがロンドンに行っちゃうって聞いて
 足が震えたの・・また一人になっちゃうって思って・・自然と涙が溢れてきちゃったの。
 今回、滋さんが一生懸命になってるのを間近で見てて・・私も負けてられないって思った。
 断られてもいいからちゃんと自分の気持ちを伝えなきゃって・・」







一気にそう言い終えた牧野は唖然としたまま牧野の告白を聞いていた俺の態度を誤解したのか・・





それとも最初っから俺の返事を聞くつもりなどなかったのか・・?





「あ〜あ〜スッキリした!ありがとう、最後まで聞いてくれて。
 遅くなちゃったね、そろそろ帰ろうっか?」





なんて・・自己完結してやがる





「俺・・まだ何も返事してねぇーんだけど?」





「へっ?」





「だから返事してねぇーって言ってんだよ。」






「いいよ、無理に何も言わなくても。」






「無理なんてしてねぇーよ。
 俺・・すっげぇ嬉しかったんだから。」






「マジで?」






「マジ。
 俺もずっとお前の事が好きだったんだよ。」






「・・うそ?」







「ほんと・・だけど・・お前は司の事が好きだって思ってたから・・
 司の記憶が戻るまでお前の側に居られればいいって思ってた・・
 だけど・・お前が司の事はもうよくて俺を好きだって言ってくれるんだったら
 俺はもう遠慮しねぇーぞ?」





「クスッ・・遠慮なんてしなくていいよ・・」







「じゃあ、遠慮なくいかせていただきます。」








そっと抱き寄せた牧野の身体は予想以上に細くて





少し力を入れたら折れてしまいそうなほど





ずっと心を隠したまま






側に居られるのであれば友達のままでもいいと思っていた





だけど本当はそれだけじゃ満足していなかったんだ・・





本当は彼女に触れたくて触れられたくて仕方がなかったんだ・・






一度、解放してしまった想いは二度と留めることなど出来ない






こんなに熱い想いを知ったのは





あなたを愛したから




新しい明日を





くちづけで灯そう














            〜Fin〜














inserted by FC2 system