12月24日、クリスマスイブ





今年は23、24、25日とちょうどいい具合に3連休





あいつを連れて軽井沢の別荘にでも行こうかと思っていたのだが・・





今、俺のデスクの前に立ち黒の革張りの手帳を広げ今日の予定を読み上げている



ババァの犬・・今は俺の秘書をしている西田のせいで軽井沢の別荘どころか

休みは全くなしになってしまった・・






クソー!!俺が親父の跡を継いで総裁になったら真っ先にこいつをクビにしてやる!!





俺のデスクの前に立ち今日のスケジュールを読み上げている西田の話しなんて全く耳に入ってこない





俺の頭ん中を占めるのあいつの事だけ・・・




今、何してっかなぁ〜・・





NYから戻って半年、日本に着いたその日にバイト帰りのあいつをそのまま拉致して

用意していたマンションの部屋で同棲を始めた






相変わらず喧嘩はするけど手を伸ばせばすぐそこのあいつが居る





離れて過ごした時間を埋めるように濃密な時間を過ごしている・・・と俺は思っている





クソー!!西田もムカつくけどあいつにもマジムカついている!!




あのバカ女!!





今朝だって仕事に出かける俺をとっとと追い出しやがって




ちょっとぐらい寂しそうな顔しろってんだ!!




嬉しそうに大掃除するから早く行けって俺の背中押しやがって!!





大掃除って何だよ?





帰ったら覚えてろよ!!





一緒に暮らし始めた頃は何処か余所余所しくて微妙な距離感を感じていたのに

今じゃあ余裕が出てきたのか俺様を軽〜くあしらいやがる!!







クソー、思い出したらまたムカついてきた!!






怒りに任せてそのまま目の前の書類を手に取った






こうなったら一秒でも早く仕事を終わらせて帰ってやる!!





結局、昼飯も喰わずに仕事に没頭して終わったのが午後7時過ぎ





どうだ!予定より2時間は早く終わらせてやったぞ!!






最後の書類にサインをしてすぐに上着を手に取るとオフィスを飛び出した






迎えのリムジンに飛び乗ると車内からあいつに電話を入れる





珍しくご機嫌な声で電話に出たあいつに帰る事を伝える





俺の隣にはあいつへのクリスマスプレゼントが置いてある






今日の昼、やっとNYから届けられた特注品






あいつの喜ぶ顔が浮かんでくる






毎年、あいつに渡すプレゼントで頭を悩ましている





可笑しいよな!




ガキの頃からクリスマスも誕生日も面倒くさいだけでどうでもよかったのに





あいつと出逢ってあいつに惚れてから好きな女に

プレゼントを選ぶのがこんなに楽しい事なんだって知った





だけど問題が一つ





俺が心底惚れている女が牧野つくしだって事





筋金入りのボンビー女でもったいないが口癖のあいつは宝石やブランド物など

普通の女なら飛びつくような高価な物には一切興味を示さない






今までプレゼントした物であいつが一番喜んだのは2年前のクリスマスに

俺が送りつけたチケットでNYへ来たあいつとホワイトクリスマスを楽しんでいた時

小さなおもちゃ屋の店先で見つけたライオンのぬいぐるみだ




20ドル足らずの小さなライオンのぬいぐるみを買ってやると何でこんな物で

そんなに喜べるんだってくらい大喜びして大事そうに胸元に抱え込んでいた





あいつは今でのそのライオンのぬいぐるみを大切にしている








毎年、頭を悩ませるクリスマスのプレゼントだけど今年はあのNYで見つけた

ライオンのぬいぐるみにした



但し、俺様仕様で特注品にしたけどな!!







最初は宝石なんかを考えていたけどいろいろ考えてライオンの等身大ぬいぐるみにした


等身大って俺の等身大だぞ!!


離れて過ごした3年間・・

それまでずっと一緒に居た仲間達と離れ一人ロクに

言葉も通じない異国の地で

がむしゃらに頑張っていた頃


日本に居る牧野だけが心の支えだった


その牧野が俺が送ったチケットでNYまで会いにきてくれた


たった3日間だったけど好きな相手がすぐ近くに居る幸せ



最高に幸せな3日間だった




そして日本に帰ってきて初めてのクリスマス


あの時と同じように牧野がすぐ側にいる幸せ




だからこの幸せが永遠に続くように



あの時の幸せな気持ちをずーっと忘れないように



思い出のライオンのぬいぐるみにした





俺様仕様のライオンはどことなく顔も雰囲気も俺に似ている

それにちゃんと洋服だって着ている


それも俺様と同じアルマーニのスーツ


ネクタイも締めて靴まで履いている



普段は仕事が忙しくロクに構ってやれないから

一人で部屋で俺の帰りを待ってくれているあいつが少しでも寂しくないように

俺に似せて作らせてある








高等部の頃、あいつの言う最悪の出会いをした俺達はこんな未来が待っているなんて

予想していなかった




あいつにしてもまさか超完璧な俺様が彼氏になるなんて考えてもみなかっただろう






だけど今、ここに俺とあいつが一緒に居る事は奇跡でも偶然でもない必然なんだ






出逢って恋に落ちて追いかけて追いかけてやっと捕まえて

互いに未来を共にするために努力した結果





生まれ育った環境なんて関係ないって思っていた





俺があいつに惚れていてあいつも俺に惚れている

互いの心が通じ合っていれさえすれば未来は続いていると思っていたけど





守るためにもっともっと強くならなければいけないんだと分かった





だから守りたいと思う気持ちだけじゃなくて本当に守れる実力を付けるため

一人、NYでがむしゃらにがんばった




プロムの夜にあいつが言った言葉




"いい男になって戻ってきたらあたしが幸せにしてあげてもいいよ"



俺様は元々いい男なんだけどよ!




それでも誰にも文句を言わせない力を付けて絶対こいつの元へ帰ってくるって決めた









普通の奴なら4年かかるところを俺様の実力で3年で終わらせてあいつの元へ戻って半年



一日の始まりと終わりに必ずあいつが側に居る事が当たり前になっている



当たり前の幸せ



愛する人が側に居てくれることがどれほど幸せな事なのかを実感したその日にあいつが見つけたライオン



あいつがずっとずっと俺の側で笑っていてくれるようにと願いをこめたライオン






あの角を曲がればマンションはもうすぐそこ








逸る気持ちを押さえエレベーターに乗り込む





高層マンションの最上階




お気に入りは窓から見える東京タワー





ライオンを脇に抱えながらインターホンを押すと



すぐにドアが開き




笑顔のあいつが出迎えてくれる







お帰りなさい


その声と出迎えに出てきたその姿を見ただけで

もうこの場で押し倒したくなるほど可愛い


そんな事を考えているなんて夢にも思っていない彼女は

俺が抱えているライオンを見て動きが止まっている



「ホラ!これクリスマスプレゼントだ!」




「でかっ!」


ライオンを手渡すと少し仰け反りながら受け取っている


そりゃそうだよな!


このライオン俺とおんなじ大きさだもんな




持ちにくそうにしながらも笑顔の彼女




そして



「ねぇ、このライオン司にそっくりだね?
 それに司と同じスーツ着てるし!」




「当たり前だろ!それは俺様に似せて作らせた世界で一つしかないライオンなんだぞ!
 そいつが居たら俺が遅くなっても寂しくねぇーだろ?」




「じゃあこのライオンは司なの?」





「そーだ!」




「ふ〜ん、じゃぁ、あたし今夜からこの子と一緒に寝るね。」







はぁ〜??


何でそうなるんだ?






「俺が居るのに何でそいつと一緒に寝るんだよ!?」








「だってこの子と一緒の方がゆっくり眠れそうだもん!」






はぁ〜??





「お前、俺と一緒じゃゆっくり眠れねぇーって言いてぇーのか?」






「そうだよ。」





「返せ!」





「ヤダ!」





「ダメだ!返せ!捨ててきてやる!!」





「ダメ!」






ダメといいながらライオンに抱きついた彼女





彼女の顔にはあの日、NYで見せた笑顔が浮かんでいる






嬉しそうに笑う彼女に見惚れてしまう




この笑顔が曇らないように





この笑顔がずっと俺の側にあるように




その為に俺はどんな事でもがんばるから





オイ!ライオン!あんま邪魔すんなよ!!






まだライオンに抱きついたままの彼女に




メリークリスマス!!




    〜 Fin 〜












【アトガキ】
 え〜ふとした気まぐれで大昔のクリスマス話しを引っ張り出してきました・・
 とっくにクリスマス過ぎてますが(汗
 大昔のお話しですが・・
 以前のサイトからお越しいただいている方には
 懐かしいかなぁ〜と思いUpする事にしました^^
 ちなみに↓のアトガキもそのまんまにしてあります(笑
 お楽しみいただけたのであれば幸いです
 
 
         2013/12/30 KiraKira










アトガキ
 クリスマスSS第4弾『司君編』でした。
 なんだか尻すぼみ・・><
 甘甘のラブラブにしようとがんばったのですが
 私にはこれが限界です・・T_T
 え〜勢いだけで無謀にも始めてしまったクリスマス企画
 最後までお付き合いいただきありがとうございました。
 駄文には変わりないのですが書いていてとっても楽しかったです。
 皆さんも素敵なクリスマスをお過ごしください。

              2005/12/24 KiraKira












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