養子縁組を機に私と進は新しい人生を出発するために名前を変えた 私は牧野つくしから"ケイト・ライズ"に そして進は牧野進から"サム・ライズ"になった 私はそのまま大学に戻り 進は一年間英会話の勉強をしながら過ごし 翌年には無事に大学へと入学する事が出来た そしてもう一つの変化が西門さんの呼び方が総二郎へと変わった 彼は大学を卒業し今は西門流の次期家元として修行中の身だけど 海外でのお茶会などを任されていてけっこう頻繁に会っている そしてもう一人 大学の同級生で何故か腐れ縁のマット・ペリー 同い年の彼の実家はペリー財閥と言うアメリカの名門の家系出身ながら 次男という理由だけであまり実家には近づかず もっか"運命の女探しと言う名のナンパに明け暮れていた マット曰く実家は長男のエドが継いでいるからと 全く実家の事業には興味を示さないで 大学生活でがんばったのはひたすら"運命の女"探しだけで それは社会人になった今でも変わらない 最初の頃は周りのみんなも今度の相手とは 一体何週間続くかと賭けなどをしていたが 見るたびに相手が違うのでその内誰も何も言わなくなっていた・・ だけどマットは決してふざけているわけじゃなくて 彼なりに本気で"運命の女"を探しているようなだけど・・ どうも探す場所を間違えているような気もする・・ そんなマットと私は今はビジネスパートナーだ 大学卒業後はお父様の会社であるライズコーポレーションで 本格的にお父様の仕事のお手伝いをしようと思っていた私に 彼は会社の立ち上げを持ちかけてきた どうして私なの?と思いその理由を聞いてみると 彼らしい答えが返ってきて唖然としたことを覚えている・・ 「俺は男と一緒にやる気はないんだよ!  その点お前は一応女だしな。  気も合うしお前とだったら上手くやれそうな気がするから。」 「何よそれ・・・」 一応、女だし・・って・・ 彼らしいけど・・ なんだかムカつくけど・・ 悩んだけど自分の力を試してみたいと思う気持ちもあった 会社の立ち上げ資金はそれぞれの実家から融資を受け 会社を立ち上げてから三年、最初はかなり苦戦したけど 今では何とか軌道に乗り始め、順調に業績も伸びてきている 親の七光りだと言う人もいるがそんな事いちいち気にしていられない だっていくら実家がすごくてもそれだけで生きていける場所じゃない 最近では会社の業績の良さが注目され メディアにも度々取り上げられるようにもなった そんな時は会社の顔として表に出るのはマットだけで 私はマスコミなどには一切顔を出していない そのおかげでライズ家の娘ながら比較的自由に行動する事が出来ている マットの"運命の女"探しは相変わらず・・・ 私は現在、マンハッタンの高級アパートのペントハウスで一人暮らしをして 車の免許を取り普段は自分で運転もする 大学を卒業した進はそのまま大学院へと進み MBA取得を目指しながらお父様の会社を手伝っている そして今日もいつもと同じ朝が始まる 午前6:00 シャワーを浴びてメイクをする そしてスーツに着替えて自分の車でオフィスへと向う オフィスへと着くのはいつも8時少し前 バッグを置いて携帯と小銭だけを持って近くのカフェへと向う カフェへ行く途中のスタンドで何紙かの新聞を買って いつもの席に座ると何も言わなくても ベーグルにベーコン、目玉焼きの朝食とカフェオレが出てくる 新聞を読みながら朝食を摂る 新聞に書いてあるのはいつも同じ テロに戦争、汚職に石油価格の高騰 麻薬に殺人事件、失業問題に株価が上がったとか下がったとか・・・ そして有名人のゴシップ記事も・・・ その中に懐かしい名前を見つけた "道明寺財閥Jr 道明寺司 熱愛発覚!" ご丁寧に彼の写真も載っている 久しぶりに見た道明寺だった・・ あの頃とは違う大人の彼は どこかの令嬢と交際中で結婚間近だと言う記事 今までも何度かこの手の記事を目にしている 最初は目にするのも嫌だったのに・・・ 最近では少しずつ気にならなくなってきている 胸の奥の締め付けがだんだん弱くなってきている どうしてだろう・・・? 私はもう彼の事忘れようとしているのだろうか? 違う・・忘れてなんかいない・・ただ少しづつ 彼への想いが消化されようとしているのかもしれない 彼はまだ私の事は何も思い出していない 今の私はどう思っているのだろう? 思い出して欲しい? それとも思い出さなくてもいい? あの頃に戻れなくても消されたままにされるよりは 思い出してくれたほうがいい? あの頃には戻れないのだからもう思い出さないほうがいい? 苦しむ彼の姿を見たくない? どちらも正解でどちらも違うような気がする・・ 自分自身が彼の事をどう思っているのかさえもあやふやで分からない・・ ただ一つ確かな事は今の私の日常生活の中に彼は存在していないという事だけ・・ 時々、こうやって新聞の中で見かけるときだけ微かに胸の奥が疼く・・ 新聞の中の彼の写真を眺めながらそんな事を考えていると カフェの窓をたたく音が聞こえた 顔を上げるとマットの姿・・ マットはそのまま笑顔でカフェへと入ってくると私の前に座った 特に会話はない、彼も朝食を摂りながら新聞を読み始める そして一緒にカフェを出てオフィスへと向う 8:30過ぎ朝のミーティングをしてから自分のオフィスへと戻り 忙しい日常が始まる 今日は総二郎がNYに来る事になっている 夕方、彼を空港へ迎えに行く約束になっている お昼休みマットは外出していたので私は一人でランチを食べにオフィスを出た
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