全員の視線がつながれている二人の手に集中しているなかで

入り口付近に立ち止まったマットが・・






「ケイト!俺たち結婚する事にしたから!」






その言葉に全員がたっぷり30秒はフリーズしたまま・・




最初に動き始めたのは以外にも牧野だった




おもむろに隣に座る総二郎の頬っぺたを抓った・・





「イテェー!なにすんだよ!?」





「痛い?夢じゃないのよね?」






そう言うと牧野は椅子から立ち上がり満面の笑みで滋に抱きついた





「おめでとう〜!滋さん!!」





「ありがとう〜!つくし〜!!」






その言葉を合図に後はもう何が何だかよく覚えていないぐらいの

宴会が始まってしまった




滋とマット・・





予想外のカップルの誕生だったが滋がマットに惹かれた理由は

なんとなく分かるような気がする・・




二人はカンクンで出会いその後、NYで牧野が全く気付かないうちに

滋からの猛アタックの末、付き合い始め交際期間3ヶ月で

互いの両親にも了承を貰い婚約したらしい





この3ヶ月間、滋はほとんどNYでマットと共に居たのだが・・




牧野は全く気がついていなかった・・・





「やっぱお前、気付いてなかったのか?」






「気付くわけないでしょ!予想だにしてなかったわよ!
 それにしてもあんたが結婚ねぇ〜。
 滋さん?本当にいいの?こんなバカで?」





「お前なぁ〜・・バカって・・」





マットは牧野の言葉に抗議の声を上げているが滋がそれを制して





「いいの。私ねマットじゃないとダメみたいなんだ・・
 だけどね・・ここに来るまで不安だったの・・」





「どうして?」




「つくしに反対されるんじゃないかと思ってたから・・
 祝福してもらえないんじゃないかって・・・」





「そんなわけないないでしょ!ビックリしたけど反対なんてしないよ!
 滋さんが幸せになるんだったら私はどんどん応援しちゃう!」





「ありがとう、つくし。」






牧野からの祝福に涙ぐんでいる滋の肩をマットが優しく抱きしめながら




「なぁ、ケイト?滋も一緒に仕事してもいいか?」





「いいわよ。けど、どうするの?」





「慣れるまでは俺の秘書として仕事して、行く行くは三人でやらねぇーか?」



「滋さんはそれでいいの?」





牧野の問いかけに滋がゆっくりと頷く




マットと滋の突然の申し出に牧野は少し考えている様子だったが

すぐに笑顔に戻り






「分かった。だけど、どうせならこのバカをクビにして二人でやらない?」





「えっ?!」




「オイ!俺をクビにするってか?」




「そうよ。よ〜く考えてみたらあんたなんかより滋さんと二人でやった方が
 上手く行きそうな気がするのよね?そう思わない?総二郎。」





「そーだな、だけど結婚した途端にダンナが無職じゃ滋も可哀相だろう?
 やっぱ親友として共同経営者として次の就職先の世話ぐらいして
 やってもいいんじゃねぇーか?」





「それもそうよね。ん〜なんか無かったかなぁ〜?」






「ケイトも総二郎もいい加減にしねぇーとぶっ飛ばすぞ!!」






二人にからかわれているマットが頭にきて声を荒げているが

牧野も総二郎もそんなマットに慣れている様子で全く気にしていない・・






「あっ!そうだ!ねぇ、総二郎?」





「ん?」





「たしかセントラルパークの観光用の馬車が御者を募集してなかったっけ?」




「あ〜そーいやーこないだそんな張り紙見たなぁ〜。」




「あれなんてどうかしら?」





「いいんじゃねぇーか?
 シルクハット被ってムチ持って、似合うんじゃねぇーか?」






「そうね。ハハハハ・・」




「ハハハハ・・・」






とうとう笑いが堪えきれなくなった二人が同時に笑い始めた




「お前ら!覚えてろよ!
 いつか仕返ししてやるからな!!」





「はい、はい。」






「俺は本気だからな!」





「はい、はい。それよりも滋さん泣かせたらタダじゃおかないからね!」





「分かってるよ!
 俺が滋を泣かせるわけねぇーよ!」




「そっ!その言葉しっかりと覚えときなさいよ!
 ところで式はどうするの?もう決まってるの?」







「ああ、だいたいはな。式はこっちの教会でするけど披露宴はこっちと東京で2回する事になると思うけど、
 取りあえず決まってんのは俺は8月に1ヶ月休んで新婚旅行に行ってくる!」






「いいわよ、休むのは構わないけどシカゴとボストンの仕事を片付けてからにしなさいね。」






「ボストンはお前が引き継げよ!」





「これ以上、抱え込んだら1日50時間あっても足りないわよ!
 とにかくシカゴとボストンが片付かない限り1ヶ月の休暇を取ることなんて
 認めないからね!本気で8月に新婚旅行に行きたいんだったら死ぬ気で仕事片付けなさい!
 公私混同してふざけた真似したら本気でクビにするわよ!分かった?」





今まで穏やかだった牧野の表情が一変してマットに対して

厳しい言葉を投げかけている





「分かったよ!そのかわり終わらせたら1ヶ月休むからな!
 お前こそ後になってグダグダ文句言うなよ!」





「言わないわよ!」





仕事の話しになると二人の雰囲気が一気に変わった

圧倒されるぐらいの気迫で有無を言わせないものがある






「つ、つくし?私も手伝ってもいい?」




「もちろん!二人でがんばって!」




「ありがとう。」





仕事では共同経営者としてプライベートでは友人として

絶対的な信頼関係がを築き上げてきたからこそ互いに妥協は許さない




ただ仲がいい、気が合うというだけでは構築しえない関係が

マットと牧野の間には存在している



牧野とマットの会話が終了すると食事をしながら

仲間達の質問攻めにあっているマットと滋



ふたりのノロケ話をつまみに閉店までねばっていたが

まだまだ飲み足りない多数のメンバーの提案で


場所を牧野の部屋へと移し二次会が始まった




司も何も言わずに大人しく牧野の部屋までついてきていた・・・







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