牧野が帰って30分後







牧野の強烈なカウンターパンチから





立ち直れないままの俺のオフィスへ親父がやって来た









親父が俺のオフィスへやってくるなんて珍しい・・






いや・・初めての事じゃねぇーか?






ぶらりと散歩の途中のような雰囲気でオフィスへと入って来た親父は



ソファーへ腰を下ろすと顔だけをデスクに座る俺の方へと向け







「つくしちゃんを秘書に雇ったんだってね。」







つくしちゃんだと?!







当たり前のように牧野の事を




つくしちゃんと呼んだ親父に俺の額には青筋が浮かぶ







「そんな怖い顔しないでくれないか。
 いつも椿がつくしちゃんって呼んでるからついね。」






「ついだと?!それになんであいつを秘書に雇った事を知ってんだよ?!」







「僕は君の父親だよ。君に関する事ならなんだって知ってるからね。」






説得力ねぇーーー!!






「今まで父親らしい事は何一つしてこなかったくせに
 いきなり父親面してんじゃねぇーよ!」







何を言いに来たのか分からずイライラする俺とは対照的に



親父はのんびりとした声で返してくる









「君はまだ反抗期が終わってないのかね?
 だめだよ。そんな余裕のない態度じゃつくしちゃんにも相手してもらえないよ。」







親父の最後の一言にキレた!!







「うるせぇー!俺をバカにしに来たんだったら出て行け!
 俺様は忙しいんだよ!!」






「ハハハ、そうか邪魔して悪かったね。
 僕もこれから予定があるのでそろそろ失礼する事にするよ。」






楽しそうに笑いながらソファーから立ち上がり



ドアへと向かいかけた親父が立ちどまり振り返ると







「そうそう。僕はこれから食事をする約束をしてるんだけど、
 相手が若い女性だから堅苦しいフレンチよりもイタリアンの方がいいかね?
 君はどう思う?」






「はぁ?そんな事知るかよ!?好きにしろ!」





「どうも最近は年のせいか若い人の好みっていうのが分からなくてね。
 君なら好みも合うんじゃないかと思って聞いてみたんだけど無駄だったね。」







睨みつけている俺に全く動じず親父は楽しそうに言葉を続けている






「あ!そうだ。君も一緒にどうかね?
 君となら年も近いし彼女だってこんなおじさんと二人っきりで食事をするより
 君が居たほうが楽しいと思うんだがね?」





女と一緒に食事だと?!






「俺に見合いさせようとしてんのか?!」




「君にお見合い?僕はそんなに暇じゃないよ。」





どういう意味だよ!?






「今の君に無理やりお見合いさせても道明寺の名前に泥を塗られるだけだからね。
 総裁としてそんな無駄な事はしないよ。」






「俺は見合いもしねぇーし、食事にも行かねぇーんだよ!
 分かったらさっさと出て行け!!」






怒りのあまり手にしていた万年筆を親父向かって投げつけると



親父は降参するように両手を挙げタメ息を一つつくと最後に




「残念だよ。せっかくつくしちゃんの再就職のお祝いを三人でしようと思ったのに。
 それじゃあ、君は仕事頑張ってくれたまえ。」












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