眠れなかった・・・






今日から牧野が俺の秘書として毎日、朝から晩まで一緒に居られると思うと




妙に興奮して眠れなかった・・・






結局、一睡もしないままいつもより一時間も早く出社してしまった






オフィスへ入ると俺の早い出社に





第一秘書の森田が慌ててコーヒーを持って来た







「なんでお前が持ってくんだよ?!」





「毎朝、私がお持ちしておりますが・・」





「今日から牧野に持って来させろ!
 それから牧野を第一秘書にするからな!
 お前は牧野のサポートに回れ!!いいな!?」






「そ、それは・・出来かねます・・が・・」







「ああーー?!
 秘書の分際で上司の指示に従えねぇーって言ってんのか?!」











今まで一度も俺に逆らった事の無かった秘書の言葉に




一瞬で額に青筋が浮かぶ





「い、いえ・・決してその様な事はございませんが・・
 総裁からご指示がありまして・・
 ケイト様は今朝一番の便で先に日本に帰国されております。」









はぁ?




今、なんつった?




親父の指示ってなんだよ?









「親父の指示ってどういう事だよ?!
 あいつは俺の秘書だろーが!?」






「は、はい・・ですが・・昨夜、
 総裁からのご指示で既にケイト様は出国されております。」







牧野が俺を置いて先に日本に帰っただと?!



今にも暴れだしそうな俺の怒りに目の前の秘書は同じ答えを繰り返すだけ




俺のNY滞在予定は後5日もある







「オイ!今すぐジェット用意しろ!
 日本に帰るぞ!!」








「そ、それは困ります!
 総裁よりスケジュールの変更は禁止されております!」








「オメェーは一体誰の秘書なんだよ!?
 クソッ!直接、親父と話しつけてやる!」








二言目には総裁、総裁言いやがって!




親父の野郎!





一体、どういうつもりなんだよ!






親父によって牧野を遠ざけられてしまい怒りMAXのまま




親父のオフィスへと飛び込んだ







飛び込んで来た俺に驚く様子も無く



読んでいた新聞から顔を上げただけの親父は







「ノックぐらいしたらどうかね?」





「オイ!親父!なんで牧野を俺に無断で日本に帰してんだよ?!」





「はぁ〜オフィスでは総裁と呼べんかね?」







大げさな溜息を付き手にしていた新聞を折りたたみデスクに置いた親父は



ゆっくりと立ち上がると内線でコーヒーを2つ持ってくるよう告げると



俺に目線だけでソファーに座るよう促し自らもソファーへと腰を下ろした







「さて、あまり時間も無いので単刀直入に話しをしようか。
 君は何をそんなに怒ってるんだい?」





「牧野の事だよ!なんであいつを勝手に日本に帰らせてんだよ!?」






「その必要があると私が判断したから・・じゃダメかね?」







「あいつは俺の秘書だ!あいつをどうするか決めんのは俺だ!
 横から余計な口出しすんじゃねぇーよ!」






「君は何か勘違いしてないかね?
 道明寺のトップは私であって君じゃない。
 誰であろうと道明寺の社員である以上は私の指示に従ってもらう、それだけの事だ。」








「道明寺の社員だとしてもあいつの上司は俺様なんだよ!
 勝手な事すんな!」







「その俺様の上司は私なんだがね。」







「いつまでも俺をガキ扱いしやがって!
 今にそこから引き摺り下ろしてやるよ!」







「ハハハ・・」








啖呵を切った俺の言葉に親父は笑い始めてしまった・・






「なにがおかしいんだよ?!」






「今の君には無理だよ。」






口元は、はっきりと笑っていたはずなのに・・





目は全く笑っていない親父の冷徹な言葉が



俺の鼓膜を通り抜け神経の奥深い場所を刺激する





こめかみの辺りを針で刺されるようなピリピリとした刺激を誤魔化すように




親父を睨みつける









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