親父の放った言葉にブチ切れ啖呵を切って


親父のオフィスを飛び出してきたけど




実際のところブチ切れ過ぎてて何んて言ったのかよく覚えていない・・





耳に残っているのは親父の笑い声だけ







とにかく残り5日間、分刻みで組まれているスケジュールをこなし



最後の会食を追えその足で空港へ向かい日本へと向けて飛び立った





日本のオフィスで牧野の出迎えを受けて



やっとこいつが本当に俺の秘書になったんだと実感する事が出来たけど・・




当然、俺は牧野を第一秘書にして何処に行くのも一緒で




朝から晩まで四六時中行動を共にしようと目論んでいたのに




親父によってあっさりと俺の目論みは却下されてしまった





第一秘書は今まで通り 森田



牧野は表には出さない




理由は警備上の都合





これが道明寺の方針だとの一言で



親父からの電話は一方的に切られてしまった





牧野はライズ家の娘で既にメープルで実績を残し



顔と名前が世間一般に認知されてしまっている今、



俺の秘書として公の場にSP無しで姿を見せることなんて出来ない




現実に秘書として仕事を始めている今だって



目立たねぇーようにSPがついているし




仕事の行き帰りはもちろんだがプライベートでも




電車はおろかタクシーさえ使わない徹底ぶりだ




俺にしてもSP無しで行動する事は出来ないから




親父から警備上の都合だと言われてしまえば




牧野の安全の為に従わざるを得ない



四六時中、牧野と一緒という野望はあっさり崩れてしまったが



仕事は楽しい!





毎日、出社するのがすんげぇ楽しい!




オフィスに入るとすぐ牧野がコーヒーを持ってくる




牧野が秘書になってから俺はあいつが淹れたコーヒーしか飲まない




内線でコーヒーを持って来いと伝えると



すぐに牧野がコーヒーを持ってやって来る





あいつの顔が見たくて毎日何回もコーヒーを頼んでしまう俺






「あんた、毎日、何杯のコーヒーを飲めば気がすむわけ?
 今日はこれで8杯目よ!いい加減にして!」





「うるせぇー!上司の命令には黙って従え!
 それより、この資料の続きはまだ出来ねぇーのかよ?!」





「それだったら6杯目のコーヒーと一緒に渡したでしょ?
 資料ぐらいちゃんと管理してよ!」





「そ、そうだったか・・?」




すっげぇバツが悪くて慌てて話しを逸らす





「それよりも五代とのプレゼンどうなってんだよ?!
 俺が指示した修正も進んでねぇーだろ?!
 プレゼンは来週なんだぞ!分かってんのか?!」




バツの悪さを誤魔化す俺を


冷ややかな目で見下ろしながら牧野は言葉を続ける





「本番用の資料は明日、完成の予定です。
 支社長より指示がありました修正箇所ですが、
 こちらで必要無しと判断しましてので修正しておりません。」






はっきりと言い切った牧野・・



勝手に判断してんじゃねぇーよ!





「秘書の分際でいい度胸してんじゃねぇーかよ!?
 これでプレゼン失敗したらお前に責任取れんだろーな!?」





「はい、もし失敗した場合は喜んで責任を取らせていただきます。
 それでは私は今からNYへ行ってまいりますので失礼致します。
 帰りはプレゼン当日になりますので後は森田さんの言う事を聞いて
 スケジュール通りにちゃんと仕事してね。」






はぁ?



NYへ行くだと?!



聞いてねぇーぞ!!






言いたい事だけ言うとあっさりとオフィスを出て行こうとする

牧野を呼び止める






「お、おい!NYへ行くなんて聞いてねぇーぞ!
 何しに行くんだよ?!」





「もちろん仕事ですが。」




「お前の仕事は俺の秘書だろーが!
 勝手に動くんじゃねぇーよ!
 明日っからコーヒーは誰が淹れんだよ?!」






「私は支社長の代理としてNYに行くの。
 コーヒーなら他の人に淹れてもらってね。」





"それでは行ってまいります。"と一言残すと俺を置いて


一人NYへ行ってしまった



牧野が何故、俺の指示を無視して修正の必要は無いと言ったのか


一人で俺の代理だと言ってNYへ行ってしまったのか・・


その理由を俺はこの後、知る事となる









牧野が秘書になってからあいつがスケジュールを管理するようになり


どういう訳か俺は暇になった




こなしている仕事量に変化は無いが


牧野は第一秘書でこれまでスケジュール管理を任されていた森田に


無駄が多いと一喝するとどんどんスケジュールを削り


他に三人居た秘書のうち二人を化粧ばかり上手くて


資料整理もまともに出来ないという理由で子会社に飛ばしてしまい


新たにメープルから一人そしてNYから一人秘書を呼び寄せてしまった





あいつは人事権まで持ってのかとも思ったけど



俺としてはあいつさえ居れば後は誰が秘書をしていようと


興味ねぇーからそのままにしてある





今までタイトなスケジュールをこなしてきたから


帰宅が深夜になる事も多く




休日も1ヶ月に一度取れるかどうかの状態だったのに




今では深夜になる事はほとんど無く



休日だって毎週日曜日には完全オフになっている





プライベートな時間が取れるのは嬉しい



NYで大学に通いながら仕事を始めた頃より



休日はおろか睡眠時間を確保するのも難しい毎日だったので




いざ時間が出来るとやる事がねぇなんて情けねぇ・・

















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