プレゼン当日は朝から雨で時折、雷も鳴る悪天候




今日の先行きを暗示しているようでムカつく





午前10時から始まったプレゼンは午前中が五代




昼食を挟んで午後からが道明寺




結果は一週間後に連絡が入る予定になっている






プレゼンの会議場には五代グループの創設者である会長も出席していた






五代グループ会長 五代達雄 68歳


戦後、鉄鋼業を興し




朝鮮戦争、ベトナム戦争、高度経済成長期を経て



グループ社数50を超える五代グループを一代で築きあげた豪傑





政財界に大きな影響力を持つ




これが表向きのプロフィールで裏に回れば




有形無形の黒い噂が絶えない人物




身長は180pを越えていて



この年代の日本人にすれば大柄で好色




家族は妻と息子が二人





強引で金に物を言わせるタイプで同郷の某大物代議士と蜜月なのは有名で




典型的な古いタイプの経営者だ








五代グループにとってもこのプロジェクトは社運を賭けた一代プロジェクトで




会議場で顔を合わせた会長と表面上は


和やかに挨拶を交わしプレゼンの進行を見守っていた






今日、帰国予定の牧野は既に帰国しているはずだが


会場には姿を見せていない














ピーンと張り詰めた空気の中、無事プレゼンも終了し




プレゼン会場となっていたビルを出て



スーッと目の前に滑り込んできた車に乗り込むと



車内には牧野が居た




俺が乗り込むとすぐに滑り出した車






「お疲れ様でした。」





「ああ、疲れたぞ!」





一人で勝手にNYへ行きやがって




一週間近くも俺様を一人にしやがったこいつへの嫌味をたっぷりと込め



けだるそうにネクタイを少し緩めシートに深く腰を沈める





「お疲れのところ申し訳ございませんが、
 本番はこれからですよ、支社長。」






たった今、プレゼンが終了したばっかりなのに何言ってんだこの女は・・?






「本番なら今、終わったばっかだろ?!
 後は結果を待つだけだ!」






「いえ、本当の本番はこれからです。」






眉一つ動かす事なく冷静にそう言った牧野が




訝しげな表情を浮かべる俺には構わずそのまま言葉を続ける





「時間があまりありませんので端的にお伝えします。」






「まず、今夜ですが、深夜に室田代議士が
 心臓発作で○×総合医療センターに入院される予定になっております。」





はぁ?



室田代議士が心臓発作で入院だと・・?





プレゼンとはあまりにもかけ離れた内容に俺の中で警戒音が鳴り始める















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