どうして私は彼女が気になったのだろう・・?




その答えは何となく分かっていた・・




道明寺が心血を注いでいるプロジェクトの競合相手が五代



桜子のお見合い相手も五代



お茶会でも五代





短期間の内に何度も出てくる名前


耳にしていた数々の噂




それらが私の中で引っ掛かっていた





人のプライバシーを興味本位で探るのは性に合わないけど



どうしても気になり五代綾香について調べてみた







「お前、その女の事調べたのか?」



「ええ。」




「珍しいな、お前がそんな事するなんて。」




「そうね・・」





「それで、その女の事で何が分かったんだ?」






「特別な事は何も出てこなかったんだけど、
 彼女も被害者だったって事が分かったわ。」






「被害者?」






「そう、被害者・・彼女は五代聡介と結婚する直前まで付き合ってた男性が居たの。
 父親の政策秘書だった人で交際してる事は代議士も知ってたし認めてたのよ。」






「別れさせられたって事か?」





「ええ、この縁談に彼女はかなり抵抗してたみたいだし代議士の方も最初は
 一人娘だからって断ってたみたいなのよね・・
 けど五代側が強引に進めたみたいで最終的には代議士も断れなかったってところね・・」






一人娘を自らの後援会会長の長男と結婚させる



ありがちな事なのだろうけれど



親の都合で愛情の無い相手を押し付けられる子供の方は堪らない




割り切ってしまえる性格なら少しは楽かもしれないが



それでも現実は変わらない・・







「それでね、調べてるうちに面白い事が一つ出てきたの。」




「なんだ?」





「室田代議士が五代と手を切りたがってるって話しよ。」





「今まで散々、世話になっておいて今さらムシのいい話だな。」






「そうね、でも室田代議士の方は以前から五代のやり方には難色を示してたみたいだし、
 実際、かなり無理難題を押し付けられてたみたいでいい加減嫌気が差していたところにきて、
 娘の結婚が決定打になったみたい。」





「それでお前が手を切る手助けをしてやったってわけか?」





「手助け?そうね・・結果的にはそういう事になるかもしれないけど・・
 こちら側としては室田代議士に五代と道連れになってもらうわけにはいかないしね・・
 まぁ代議士にもそれなりのリスクは負ってもらうけど。」





「リスク?」





「ええ、室田代議士には病気を理由に国会議員を辞職してもらう事になってるわ。」





「リスクってそれだけか?」






「それで十分よ。不用意に追い詰めても何の得にもならないし。
 それに室田代議士のお陰で今回のプロジェクトのからくりが見えてきたんだもの。」







「からくりだと?」





「そう、からくり。
 今回のプロジェクトは全部茶番だったのよ。
 受注は最初っから五代に決まってたの。」






「なんだと?!じゃあ、俺様はコケにされてたって事か?!」




「私に怒鳴らないでよ。」





「お前、いつからそれ知ってたんだ?!」





「う〜ん・・半年以上前・・からかな・・?
 五代が受注するにしても道明寺と競り合って勝ったとなればプロジェクトにハクが付くでしょ?」





「なんで先にそれを言わねぇーんだよ!?」





「あんたが努力してるの知ってたからよ・・
 日本に赴任して初めて最初っから任されたプロジェクトで
 俺様のあんたがクソ真面目に本気で頑張ってる姿をずっと見てきたから・・
 許せなかったのよ!」






まっすぐに俺の目を見ながら話す牧野から目が逸らせない・・







「ビジネスで奇跡は起きないわ。
 だからこそ努力した人間が報われるべきなのに
 人の努力を影で手を叩いて笑ってるような卑怯者が許せなかったのよ。」






昔っから正義感だけは人一倍強い女だからこその考え方なのだろうけど・・




やべぇ・・




なんかマジで嬉しい・・







「喜んでる場合じゃないわよ!
 さっきも言ったでしょ?本番はこれからだって。」





「分かってるよ!俺は何をすればいいんだ?
 お前の思うとおりにしてやるから言ってみろ!」






「何もしなくていいわ・・ただ一言・・
 分かったって言ってくれれば全てが動き出すから。」






「そうか・・」






最終的な決定を俺に委ねてくれた牧野に敬意を表して



ここで一旦言葉を切り気合を入れなおす






「分かった。お前のやりたいようにやれ。
 失敗したら骨は拾ってやるからよ!」





「失敗なんてしないわよ。」








そう答えると牧野は初めて微笑むとどこかへ電話を掛け始めた
















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