それに何よりこいつに正気に戻ってもらわないと俺の仕事が進まない・・







秘書が出て行ったので話しを再開する








「落ち着いたか?」






「・・う、うん・・」







「続き話せよ。
 司になんか言われたんだろ?」







「う、うん・・言われたんだけどね・・」








何故か肝心な部分になると牧野の歯切れが悪い・・





なかなか話そうとしない牧野に溜息を付きつつも




彼女からの言葉を待っていたが・・





俺はこの後、人生で最悪の醜態を牧野に晒す事となる






お気に入りのジャスミンティーも全て飲み干してしまい





少し落ち着いた牧野が氷だけが残るグラスをストローでカラカラと回しながら







「道明寺にプロポーズされた・・」







ちょうどアイスコーヒーを口に含んだばかりだった俺は






牧野の発した言葉に飲んでいたアイスコーヒーが気管に入ってしまい





思いっ切りアイスコーヒーを噴出しむせ返る・・






俺の慌てた姿に今度は牧野の方が冷静になったみたいで







「鼻からアイスコーヒー出てるわよ。」







・・って・・すんげぇ恥ずかしい・・








「ねっ?やっぱそうなるでしょ?
 私が走ってきた理由が分かったでしょ?」








「あっ・・ああ・・」







鼻をハンカチで押さえながらなんとか返事を返す・・・





それにしても司の奴、なに考えてんだ?







「なぁ?お前・・こっちに帰ってきてから司とは会ってねぇーよな?」







「日本でって言うよりもう8年会ってないわよ!」






「そうだよな・・」








「ぎゃーー!もうこんな時間じゃない!」






な、なんだよ!いきなり!!








「次の会議まで30分ないじゃない!?」






やっと気がついたんだな・・






「資料は全部読んだ?」






「いや・・まだ途中だ。」







「早く読んじゃって!」







読んでる途中にお前が飛び込んできたんだろ!







「分かってるよ!」







「じゃあ、お願いします。
 私も会議の準備しないと!」







それだけ言うとあっさりとオフィスを出て行こうとする牧野を慌てて呼び止めた








「オ、オイ!それでどうすんだよ?!」






「何が?」







何がって・・






「ボケてんじゃねぇーよ!
 プロポーズだよ!」







「どうするって・・どうもしないけど?」





「ほっとくのか?」







「だって・・なんて返事すればいいわけ?
 道端でいきなりプロポーズされてOKなんてしないわよ!」







「なぁ、お前・・司の事は本当にもういいのか?」







「いいも悪いもないでしょ?
 それに・・分かんないわよ・・今さら彼の事どう思ってるかなんて聞かれても・・」






それだけ言うと牧野は俺の返事を待たずにオフィスから出て行ってしまった




小さく呟いた"そうか・・"という俺の言葉がドアに跳ね返ってくる・・





そうだよな・・





もう8年だもんな・・





ハァ〜・・






大きく息を吐き出し頭を仕事モードに切り替える

















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