「オイ!なんかいい方法ねぇーのかよ!?」




猛獣の怒鳴り声が響き渡る俺のオフィス


この理不尽な要求をわざわざ仕事中に付きつけてくるのは



猛獣なりに切羽詰ってるからだと思うけど・・





迷惑だ!!






「知らねぇーよ!てめぇーの女房ぐらいてめぇーでなんとかしろよ!」




「お前、俺様とダチだったよな?」





到底ダチだとは思えない威圧的な態度で何が言いたいんだよ?






「ダチならつくしの事なんとかしろ!」






もしもまた人間に生まれ変れる事があったら



こいつとだけは友達になるのを止めようと思う・・







「ダチだからって何で俺なんだよ!?
 お前が一言謝れば済むことだろーが!
 それが出来ねぇーんだったら一生、欲求不満でイライラしてろ!」





「俺様は悪くねぇ!それに欲求不満でもねぇ!!」





嘘つけ!




牧野に相手にしてもらえなくてイライラしてるくせに!




「なんでもいいからさっさとあいつを引き取ってくれよ!」




「それが出来たらとっくにやってんだろーが!
 出来ねぇーからわざわざ俺様がこんなとこまで出向いてやってんだろ!」





もう頼むから帰ってくれ!






「頼んでねぇーだろ!帰って仕事してこいよ!」






「うるせぇー!この状況で仕事なんかしてられっか!
 俺様に仕事して欲しかったらいい案考えろ!!」





そう言うとドッカリとソファに座りテーブルに脚を投げ出してしまった猛獣・・・






どう言っても帰るつもりはねぇんだな・・





ハァ・・





現在、猛獣使いは俺んちに家出してきている





そして猛獣が俺のオフィスに居座っている・・





俺って呪われてんのか?





昨年末の牧野の誕生日を日本で祝うために帰国した猛獣夫婦は





猛獣の仕事の都合で2ヶ月程日本に滞在する事になり






世田谷の道明寺邸で暮している





帰国して牧野の誕生日を仲間達で祝った時は多少のトラブルはあったものの





気心の知れたメンバーの集まりで牧野もご機嫌だったのに・・・





年が明け夫婦揃って出席したパーティーを機に牧野の機嫌が






エアポケットにすっぽりと落ちたように急降下してしまった・・






出席したパーティーはあるブランドショップのオープニングイベントで






政財界のような堅苦しい物では無く芸能界からの出席者も多く





ショップの宣伝の意味合いも大きいので





取材に来るマスコミも多い






司がわざわざそんな華やかなパーティーに牧野を連れて行った理由は・・




司は牧野を見せびらかしたかったからで





マスコミも多く取材に来るオープニングパーティーはうってつけの場所だった





今の牧野は10代の頃のようにパーティーに出席しても臆する事なく・・




慣れているとは言えないが・・






それでも道明寺司のパートナーとしてそつなくこなしている






司としては堅苦しくないパーティーで





何より女が大好きなブランドのパーティーだから





豪華で牧野も楽しめるだろうと思って連れて行ったんだろうけど・・






牧野は普通の女じゃない!







道明寺家に嫁いだ今でも定番スタイルはTシャツにジーンズの女だ





まぁ昔ほど拒否反応を示めさないにしても全く興味の無いブランドのパーティーで





牧野は退屈な時間を過ごしていた






そこで一つ・・?






いや・・二つ三つ・・






事件が起きぶち切れた牧野が鴨とヤギを引き連れ俺んちに家出してきてしまった







パーティーの翌朝、俺がダイニングで朝食を食っていた時に






突然現れた牧野はどっかりと俺の横に腰を下ろすと一言






"家出してきた!もう帰らない!"と宣言しパンにかぶりついてしまった





家出の理由を聞こうにも時間が無いし




何より俺の頭痛の種である母親が







"つくしちゃんなら何時でも大歓迎よ〜!
 気の済むまでゆっくりして行ってね。"




"そうだ!滋ちゃんと桜子ちゃんも呼びましょう!
 今日はみんなで楽しく過ごしましょうね。ママ楽しいぃ〜♪"





いきなりトップスピードで暴走を始めてしまい制御不能






俺は逃げるように迎えの車に乗り込み司に連絡すると






この時点では司も牧野に対してかなり怒っていて





"あいつは我が儘なんだよ!
 邪魔ならさっさと追い出しゃいいだろーが!"






などと電話口で怒鳴っていたが・・






牧野の家出から3日しか経っていない今日







早くも牧野欠乏症が発症し







俺のオフィスで理不尽な要求を突き付け居座ってやがる!








「なぁ?結局、理由はなんなんだよ?」







「はぁ?お前、そんな事も知らねぇーのかよ?!」









知らねぇーよ!






知りたいけど聞けねぇーんだよ!








「知ってたら聞くわけねぇーだろ!?
 お前こそ知らねぇーと思うけどあいつが家に来てから滋と桜子がずっと家に居るんだぞ!
 夕べなんて椿姉ちゃんまで居て・・そんな状況で詳しい話しなんて聞けるわけねぇーだろ!」









「・・な!なんで姉ちゃんまでいんだよ!?」






「それこそ知らねぇーよ!
 お前、夕べ屋敷に帰ってねぇーのかよ?!」







「あいつのいねぇーとこ帰ったってしょうがねぇーだろ!」








くだらねぇーとこ威張ってんじゃねぇーよ!






「お前、夕べどこ泊まったんだよ!?
 まさか!?他の女んとこ・・」






「んなわけねぇーだろ!!
 メープルに泊まったんだよ!」







言い終わる前に被せてきた猛獣・・







「俺様はあいつにしか興味ねぇーんだよ!
 他の女なんて気持ちわりぃーこと冗談でも許さねぇーぞ!」








許してくれなくていいから出て行ってくれ!





思わず口をついて出そうになった心の叫びを封じ込める








「ハァ〜けど牧野が家出した原因はお前の昔の女の事なんだろ?」







「知ってんじゃねぇーかよ!なんで俺様が昔ちょっと遊んで
 顔も名前も覚えてねぇーような女の事で
 あいつに家出までされなきゃなんねぇーんだよ!?」









知らねぇーよ・・そんな事・・









「知ってるって言ったって酔っ払った滋が呂律の回らない口調で
 一方的に捲くし立てただけで詳しい事は知らねぇーんだよ!
 俺に協力して欲しいんだったらちゃんと順序立てて説明しろ!」








「しょうがねぇーな!一回しか説明しねぇからよ〜く聞けよ!」








どこまで偉そうなんだこの男は?





一発ぶん殴ってやろうか?!










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