会場中に響く俺の怒鳴り声に全く動じない妻





そしてあんたこそなんなのよ!と返されて




少なからず動揺してしまう俺様・・






情けねぇーぞ!!





情けねぇーけど・・






理由は分かんねぇーけど妻が本気で怒ってるって事は分かる・・・







「許さなければどうするわけ?
 
 離婚でもする?」







「なっ!んなわけねぇーだろ!
 
 お前が別れたいって言っても俺様はぜってぇー別れねぇーからな!」





「じゃあ何なのよ?」






「だから!このパーティーはなんだ?って言ってんだよ!
 
 あんな恥ずかしいパネルまで作りやがって!」






「ふ〜ん、パネルの事に怒ってるんだ?」





「パネルだけじゃねぇーよ!今夜のパーティー全てに怒ってんだよ!
 
 昔の女ばっか集めやがって!おめぇーは何がしたんだ?!」








「昔の女だって事は認めるんだ?」











「お前はなにかって言うと俺様の過去にこだわるけど

 今はお前と結婚してて浮気だってしたことねぇんだからOKだろーが!」







そうだ俺様は妻の事を思い出してからは





全く他の女に興味が向かないし本心から






妻以外の女なんてどうだっていいと思っている







なのに妻は事あるごとに過去を引っ張り出してきて





俺様をチクリチクリと攻めてくる







俺様はそんなに酷い男か?








「どうなんだよ!?なんとか言えよ!」





「そんなこと言ってないでしょ!」






攻め立てる俺に妻の瞳に涙が溜まり始める






卑怯だ!






泣けば俺が何も言えないと思ってやがる!






「泣いたって無駄なんだよ!いつもいつも泣き落としが通用すると思うなよ!

 卑怯なんだよ!言いたい事があるんだったらはっきり言えよ!」





俺様がそう言い終えた瞬間、妻は履いていたヒールの片方を手に取ると




なんのためらいもなく俺にふりおろしてきた






「言いたいこと?言いたいことなんて何もないわよ!

 あんたが何も言わないから怒ってんでしょ!」







強いようで脆く




繊細なようで大胆な妻は俺様に暴力を振るう事を躊躇しない…







「涙の次は暴力かよ!?いい加減にしとけよ!」





「いい加減にすんのはあんたの方よ!

 なんか問題が起こる度に美作さんに頼ってるでしょ!?

 今回だって私はあんたが迎えに来てくれたら帰ろうと思ってたのよ!

 それなのに美作さんに泣き付いてくだらない嘘つかせてどういうつもりなのよ!?」





ウッ…!






「…お、お前…知ってたのか…?」






「知ってたわよ!言っとくけど美作さんに聞いたんじゃないからね!

 誤解して美作さんに八つ当たりしたら離婚だからね!」








「おまっ!離婚はしねぇって言ってんだろ!

 それよりお前…嘘だって分かってたんだったら

 なんでこんな馬鹿げたパーティー開いたんだよ?!」








「あんたが素直に謝らないからでしょ!?」






妻の口から出た意外な言葉…





昔の女を集めたり一番見られたくないバニーガール姿をパネルにしたり




全て妻のヤキモチだと思っていたのに…






「あのね、はっきり言っとくけど私は記憶の無かった時のあんたを

 あんただって思ってないしましてやあんたと付き合ってた女なんてどうだっていいのよ!

 それよりもあんたのその余裕ぶった態度がムカつくのよ!」







壇上ではまだ二人のいい争いが続いている




形勢有利なのは牧野





それよりも・・・





バレてたのかよ・・




俺の口から勢いで出た嘘だって・・・





なんでバレたんだ?




俺・・なんかヘマしたか?





司がオフィスに乗り込んできてから今日までをざっと思い返してみるけど



それらしい事は何も思い浮かばない・・





一人思考を巡らせているとパーティーが始める前から



ず〜っと笑い続けていた類が


やっと一息ついたのだろう・・



俺の横に移動してくると話しかけてきた




「やっぱりあきらだったんだね・・クククッ・・」





「笑ってんじゃねぇーよ!

 お前も知ってたのかよ!?」





「俺は知らなかったよ・・けど何となくそんな予感はしてたけどね。」





「どういう事だよ?」





「だって司が自分から誕生日のパーティー開いてくれなって言うはずないもん。」





まぁ・・言われてみれば確かにそうだわな・・



けどよ・・




あの時はそれしか思い浮かばなかったんだよ・・





相変わらず続いている二人の言い争いは益々司の形成が不利な状況になりつつある・・











「あんたが素直に謝ったらパーティーなんて中止にしたのに、

 美作さんの嘘に乗ったのはあんたでしょ!

 私は目障りな物を自分で排除しただけよ!」






妻の真意が始めて分かった・・ような気がする





妻は単純にヤキモチを妬いていたわけじゃないし





俺の過去にこだわっていたわけでもなかった・・・





ただ今回のパーティーは俺が夫婦の問題を他人任せにした事を怒っていたんだ・・




けどよ・・






勝手に切れて家出して携帯に電話かけても出ねぇし





あきらんちに電話してもお袋さんにブロックされてて




マジで他に方法が無かったんだよ・・・




別に問題をないがしろにしたわけじゃねぇーぞ・・





俺様は3日が限界なんだよ!!











分かってるくせにシカトしたおめぇーも悪いんだろ!





けどよ・・





今、それを言うほど俺様はバカじゃねぇーぞ!






「・・わ、悪かったよ・・」





半分泣きながら




でも・・





残りの半分は怒りながら文句を言っている妻の手をそっと引き寄せ





腕の中に閉じ込めると




他の奴らには聞こえないように耳元で小さな声で囁いた・・







「本当に分かってて謝ってるの?」





ムカつくな・・




分かってねぇーよ!




分かってねぇーけど・・




なんか・・




誕生日にこれ以上、喧嘩したくねぇーんだよ!












それに・・





何となくだけど・・





妻の言いたい事も理解出来るような気もするから・・






ここは大人な俺様が折れてやるか






「分かってるよ。分かってるからもう機嫌直せよ。」





「うん・・分かった・・ごめんね・・司のバニー姿を世間に広めて。」






おぉ・・忘れてた・・




いや・・正確には・・





忘れたかったのに・・





思い出させてんじゃねぇーよ!






「・・いいよ・・どうせTVにも写っちまってんだし・・

 今さらだろ?」







「そーだね、今さらだね・・クスッ」






「笑ってんじゃねぇーよ!」





「ハハハ・・ごめん・・

 ねぇ司?お誕生日おめでとう。」






「おう、サンキュ!」








抱きしめたままの妻のしっとりと濡れたような口唇に



吸い寄せられるように口唇を寄せた・・・










〜Fin〜






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