東京にも北風が吹き始め街はクリスマスイルミネーションに彩られ





人々の装いも冬の物に変わり始めた１１月







先週からお袋は双子を連れて親父の元へと行ってくれているお陰で





俺、美作あきらは広い屋敷で誰にも邪魔されず






精神状態もすこぶる良好の充実した日々を過ごしていた






誰も俺に問題を持ち込まない・・






まぁ、持ち込んでくるのは主にＮＹ在住の二人だが・・





誰にも惑わされない気持ちいい朝






ダイニングで一人、ゆっくりと朝食を摂る俺の時間を邪魔するように




脇に置いていた携帯が鳴った







着信相手はＮＹ在住の猛獣使い








たった今、問題を持ちこまないって考えていたばっかりで






嫌な予感に着信ボタンを押す指が止まる







しばらく鳴り続けていた電話が留守電に切り替わった






どんな用件か分からないが伝言を残しておくだろうから





緊急なら掛けなおせばいいかと電話を再び脇に置き





コーヒーカップを持ち上げた瞬間再び電話が鳴った







ハァ〜出るまで掛け続けるつもりだな・・








どんな用件か知らねぇーけど覚悟を決めて今度は着信ボタンを押した








「もっしも〜し〜！美作さん？」









時差と距離を飛び越えて俺の耳に飛び込んできた猛獣使いの声に





一瞬だけクラリと眩暈を覚える








「お、おぅ！元気か？どうしたんだ？」







「うん、こっちはみんな元気だよ！そっちはどう？」







「ああ、こっちもみんな忙しいけど元気みたいだぞ！
　類は相変わらず眠そうだし総二郎はデート三昧で
　滋と桜子は先週も合コンしたって言ってたぞ！」







「合コンか〜いいなぁ〜私はしばらくしてないなぁ〜」








当たり前だろ！



恐ろしい事言わないでくれよ！










「お前はもうしなくていいだろ！？
　それよりなんの用だよ？」









「あっ！そうそう！
　あのね今度の日曜日の夜１０時からのテレビにピーちゃんが出るの！
　絶対見てねぇ〜！」







ピーちゃん？





ピーちゃんって何だよ・・？








ピーちゃんって何だよ？って疑問をぶつけようとしたのに







電話の向こうのマイペース女は





"それじゃあ忙しいのにごめんねぇ〜またねぇ〜♪"






と一方的に電話を切ってしまった・・







わざわざ掛け直してピーちゃんって何だ？って聞くのもなぁ〜・・







とにかく日曜夜１０時にピーちゃんとやらが出る番組を見ればいいんだな















そんでもって・・






案の定と言うか・・







呼んでもねぇーのにきっちりと日曜の夕方には俺んちに集まってくる奴ら・・






こいつら全員、暇なんだな・・







夕方から始まったパーティーは番組が始まる頃には最高潮で





滋なんて立派な酔っ払いと化し





先ほどからしきりに寝ている類にちょっかいを出している





ちょっかい掛けられている類の方はハエでも追い払うかのように





うっとおしそうに滋を手で払いのけている・・










「オイ！そろそろ始まるぞ！」








総二郎の掛け声と共にテレビの前に集まるメンバー







始まったのは日曜日の夜にやっている情報バラエティー番組で





ニュースやら芸能情報やらグルメやらを扱う番組だった






番組が始まって30分







俺にとってはどうでもいい話題ばかりで





そろそろ飽き始めていた頃







ようやく牧野が言っていたピーちゃんが登場した








番組内では女性アナウンサーの






　　　"続きまして世界中から集めた面白い動物の特集です。"






の言葉に続いて始まったVTRにはドイツの動物園で人気の白熊の子供や






中国のパンダ保護センターのパンダ幼稚園や







とにかく日曜の夜にまった〜りとする事このうえない映像が画面から溢れ出している





滋と桜子は画面の中のチョコチョコよく動く小さな生き物に




かわいい〜と歓声をあげているが





昔っからクマさんだのウサギさんだの囲まれて生活している俺にとっては






今さらの映像だ・・








　　"続きまして・・今、ＮＹで大変話題になっているインコが居るとの噂に
 　　墨田アナがわざわざＮＹまで取材に行って来てくれました。
 　　それではＶＴＲをどうぞ！"






というフリで始まったＶＴＲに映し出されたのは



よ〜く見知ったＮＹ・セントラルパークの風景




画面の中に登場したのはよく知る女性アナウンサーで





　　　"私は今、ここＮＹはセントラルパーク内にあります動物園に来ております。"






あ〜そう言えばパーク内に小さいけれど動物園があったな・・






行った事ねぇーけど・・







　　　"今日はここで今、ＮＹ中で話題となっている大人気のある動物に会いに来ました〜"








もしかしてこの動物ってのがピーちゃんなのか・・？











　　　"それでは行ってみましょう！"






・・で画面はどんどん動物園内を進んで行き






鳥舎の前で立ち止まったアナウンサーは







　　　"こちらには色とりどりの綺麗なインコが沢山飼育されていますが、
　　　 その中の一羽が流暢に日本語を話すとして話題になっています。"









飼育員の腕に掴まって出てきたのは真っ赤な羽を纏ったド派手で





普通に想像するより大きなインコ








　　　"このインコの種類はコンゴウインコと言って
 　　　名前がサンディーちゃんと言います。
 　　　実はこのサンディーちゃんが流暢に日本語を話すインコなんですよ。"








　　　"このサンディーちゃん、実は１ヶ月ほど前に動物園から逃げ出してしまい、
 　　　ＮＹ在住の日本人の方に保護されていたそうなんです。"









この保護してた日本人ってのが牧野なのか・・？







画面の中ではこのインコが動物園に戻ってきてから





日本語を話すようになったと






飼育員が話している







牧野が日本語を教えたって事だよな・・？







飼育員がインタビューに答えている間も腕に止まったまま





アナウンサーが手にしていたマイクに興味を示していたインコが





突然、大きな声で話し始めた・・











　　　"ちゅ〜か〜さぁ〜〜ぉ゛きぃ〜でぇ〜"




　　　"ちゅ〜かぁ〜ざぁ〜おぉ〜きぃ〜ろぉ〜〜〜〜"





　　　"おぉ〜〜〜〜〜きぃ〜〜〜ろぉ〜〜〜〜！"





　　　"ぴぃ〜ちゃ〜ん〜〜"






　　　"あさ゛だよ〜〜〜！ぴ〜ちゃん！"






　　　"むか〜しぃ〜むか〜しぃ〜〜あいす〜たべぇるぅ〜〜"





　　　"ちゅ〜くぅ〜しぃ〜〜あ〜ぃ〜ち〜てるぅ〜"





　　　"けだもの〜〜〜！！！！"









妙にケダモノだけちゃんと発音したインコ・・






なんだコレは？











　　　"ちゅ〜くぅ〜ちぃ〜〜〜〜！"








　　　"ぐぇ〜〜〜！"










最後の叫び声は司だな・・








なにやってんだあいつらは・・・？








あ〜ダメだ・・








笑いすぎて腹が痛い！







類なんてもう息するの忘れるぐらい笑ってやがるし








総二郎も桜子も滋も腹を抱えて笑っている









俺ももう・・








笑いすぎて・・










ダメだ腹痛ぇ・・・















〜Ｆｉｎ〜







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