一日の激務を終え帰宅した俺を出迎えたのは







妻の大きな溜息だった









「ただいま。」








「ハァ〜〜〜〜〜〜〜」







妻の口から盛大に零れ落ちた溜息・・







でっけぇ溜息だな・・







「どうしたんだよ?」







上着を脱ぎネクタイを緩めながらソファーに座る妻の横へと






腰を下ろすとやっと俺に気がついたようでゆっくりと俺に凭れかかると







「おかえり・・恋わずらいなの・・」








恋わずらい・・?







お前の場合わずらってるのは恋じゃなくて何か別のもんだと思うぞ!







などと思ってしまう本心には固〜く蓋をして








「恋わずらいがどうかしたのかよ?
 お前が俺に惚れてるのは分かってるけど
 俺だってお前に死ぬほど惚れてんだし上手く行ってんだから悩む事なんてねぇーだろ?」








「あんたの事じゃないのよ・・
 ジョージが冷たいのよ・・もう少し優しくしてくれればいいのに・・」








悩ましげな溜息と共に他の男の名前を吐露した妻・・











俺様じゃなくてジョージだと?!









「誰だその男!ぶっ殺してやる!!
 オイ!その男どこに住んでるんだ?!教えろ!
 今すぐ行って俺様がぶっ殺してやるからな!!」











「いきなりなんなのよ?!
 大きな声出さないでよ、びっくりするでしょ?!」










大げさに耳を塞ぎながらマジで驚いたように俺から身体を離した妻








びっくりしたのは俺様の方なんだよ!











「びっくりしたのはこっちだ!
 浮気しやがって!許さねぇーからな!さっさと答えろ!!」








怒鳴りまくる俺の剣幕に押され気味の妻は






少し身体を仰け反らせたままで







10秒ほど固まっていたやがったが・・やがて








"ハハハ・・浮気って・・ア〜ハハハ!"と






大口開けて笑い始めた








「笑ってんじゃねぇーよ!ブス!」








ムカついて頭突きをお見舞いする俺






「イタ〜イ!なにすんのよ!?」








「うるせぇー!ドブス!
 笑ってねぇーで俺様の質問に答えろ!」










「ジョージに恋してるのは私じゃないわよ。」









はぁ?









「だから私じゃないって言ってるの!
 私は浮気なんてしてないわよ!」








その言葉と同時にゴツンと鈍い音が鳴って目の前に火花が散った・・








「イテッ!何すんだよ?!」








「私を疑ったバツよ!バカ男!」









「お前が紛らわしい言い方するからだろ!
 俺は悪くねぇーからな!」










「いいや!ちゃんと私の話しを最後まで聞かないあんたが悪い!
 バツとしてしばらく一緒にお風呂に入らないからね!」








「勝手に決めんな!
 俺様は悪くねぇーんだよ!
 悪くねぇーけど・・とりあえず謝ってやるから風呂は一緒に入るぞ!!」












「ねぇ?ジョージに会いたい?」







バスタブで背中から包み込むように抱きしめていた妻が






顔だけで振り向き言った言葉・・






会いたいかって・・






会ってどうするんだよ?









「明日、お休みでしょ?」









「そうだけど、俺がそのジョージって奴に会って何話すんだよ?
 ・・ってか・・ジョージって誰だよ?いい加減ちゃんと説明しろよな!」









「明日、会えば分かるわよ!」








説明する気ねぇーんだな・・







明日、会えば分かるといった妻はお腹の辺りにあった俺の手を解くと





向かいあうように身体を入れ替え俺の膝の上に座ってきた






俺の首に両腕を回しぴったりと身体を密着させた妻が耳元で囁く







「ねぇ?無人島ごっこしない・・?」








押し付けられる柔らかな胸の感触がたまんねぇー・・








  "ねぇ、目を閉じて想像してみて・・

   私達は今、無人島に居るの・・

   乗ってた船が難破して助かったのは私達二人だけ・・

   誰もいない珊瑚礁に囲まれた無人島で夜になると空には一面の星が浮かんでて・・

   誰にも邪魔されない・・二人だけの時間を過ごすの・・"













こうやって俺は今夜も妻に翻弄されて行く・・・







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