ガキと牧野を車に乗せて屋敷へと向かう


普段ならどんなに短い時間でも車に乗ったらすぐに眠ってしまう牧野が
珍しく起きてやがる!



それに隣に座っている俺と微妙〜に間隔が空いているのが気に入らねぇー!


足を組みなおす振りをしてさりげなく距離をつめる


牧野はガキを膝に抱き自分と向き合うようにして座らせてニコニコしてやがる!!


オイ!二人の世界に入り浸るんじゃねぇー!!


それにしてもこのガキには警戒心ってもんがねぇーのか?
さっきだって突然現れたあいつらを一向に怖がる様子もなくキャッキャと声を
上げて笑って愛想を振りまいてやがったし



・・って・・オイ!ガキ!お、お前、どこに手置いてんだよ!?


お前!そこは、む、胸じゃねぇーか!!



気安く牧野の胸に触わんじゃねぇー!!


そこに触ってもいいのは俺様だけなんだぞ!!



いくらガキといえども許さねぇーかんな!!


あっ!今度は顔かよ!!


それ以上、顔近づけんな!!



俺が睨みを利かせているのをものともせずにガキが牧野の胸に顔を埋めた・・


まぁ〜埋めるほどねぇーけどよ・・


って・・そういう問題じゃねぇんだよ!!


くそー!このガキは俺様がしたくても出来ねぇーことをいとも簡単にしやがる!!


マジでこいつ喧嘩売ってんのか?


オイ!・・と声を上げようとした瞬間・・


よりによってガキが牧野のTシャツをたくし上げはじめた・・


信じられないその光景にしばしフリーズ・・


おっ!?もう少し・・




「ちょ、ちょっと、こうちゃん!
 ちょっと待って!!」




チェッ!いいとこだったのに!止めんなよなぁ!


・・って・・俺・・何考えてんだ?



ハッ!と我に返り自分の思考に妙な恥ずかしさを感じながらも
それを牧野に悟られまいとしてワザと少し強い調子で牧野の膝からガキを奪い取った



「ちょっと道明寺!乱暴にしないで!!」



「これぐらい大丈夫だ!」


「それにこうちゃんお昼寝の時間で眠いのよ!
 いつもならママにおっぱい貰いながらお昼寝してる時間なんだもん。
 だから優しくしてあげて!!」



「分かってるよ!もうすぐ屋敷につくからギャーギャー騒ぐな!
 それにその貧相な胸、ちゃんと・・・」



『バコッ!』



最後まで言わせてもらえなかった・・



思いっきり顎にクリーンヒット・・一瞬意識が遠のいたぞ!!
手加減しろよ!!




「イテーな!何で殴んだよ!!」



「あんたが失礼な事言うからでしょ!?
 もう一発殴られたいの?」



「お前なぁーあんま車の中で暴れんな!
 ガキがびっくりしてんぞ!」
「オイ!ガキ!見たか?今の!
 あれがこの女の正体なんだぞ!ダマされんなよ!」



『バコッ!』



「あんたこうちゃんに何てこと言ってんのよ!」



「イテーな!いちいち殴んな!この暴力女!!」



リムジンの中で始まってしまった俺と牧野の言い争い



屋敷について出迎えのメイド達の前をギャーギャー言い争いながら通り抜ける



屋敷のメイドにしたっていつもの事・・今や道明寺家の見慣れた光景だ



ギャーギャー言い合っている間も俺に抱かれたままのガキは大声をものともせずに
ウトウトしかけている・・



「あっ!こうちゃん、寝ちゃった?」



「ああ、多分な・・」


「ねぇ、あんたん家ってベビーベッドってあるの?」



「普通のベッドじゃダメなのかよ?」



「ダメだよ!落ちたら危ないでしょ!?
 だからちゃんと柵の付いた赤ちゃん用のベッドじゃないと危険なの!」


「そんなもんか・・だったら姉貴のガキが使ってたのがあんだろ?
 あれ用意させる。」



「司坊ちゃん、お帰りなさいませ。」


屋敷の長い廊下に立ち止まって牧野と話をしているとふいの背後から聞こえてきタマの声・・




「坊ちゃん、こんなところで何をされてるんです?
 先ほどからリビングで坊ちゃんのご友人方がお待ちでございますよ。」



はぁ?


ご友人だとぉ?


あいつらーー!!


追い出してやる!!



タマの言葉を聞いて一瞬で頭に血が上る!!


「ちょ、ちょっと!道明寺――!」


走り始めた俺の背中から牧野の叫び声が聞こえてきたが止められない!!


ガキを抱いたままなのを忘れてリビングに飛び込むと・・


大きな音を立てて扉が開いたのを合図に能天気な奴等がいっせいにこちらを向いた・・


「おう!司!遅かったな?」



遅かったな・・・だと・・?



「よお!先にやってるぞ!」


何を先にやってんだよ・・!


「司、牧野は?」


類・・牧野は俺のもんだ!!



「キャー司が赤ちゃん抱っこしてる〜!!」



うるせぇーんだよ!!
俺がガキ抱いてちゃ悪りぃーのか?


口々に声を掛けてくるご友人とやらに怒鳴り声を上げようとした瞬間
息をきらせた牧野の怒鳴り声が聞こえてきた


「ちょっと!!道明寺!
 こうちゃん抱えたまんま走んないで!!
 落っことしたら危ないでしょ!!」


牧野が俺の腕の中からガキを奪い取った



よし!これで両手が空いたぞ!!



「テメーら!人ん家で何やってんだ!!
 出て行けーー!!」


怒鳴りながらとりあえず一番近くにいた総二郎を締め上げる



「うぉ!司!落ち着け!!
 話せば分かる!!」


「うるせー!とっとと出て行け!!」



総二郎の胸倉を掴むと力一杯締め上げる・・


「ま、牧野!司なんとかしろ!!」


うるせぇー!牧野は俺の見方なんだよ!!
おめぇーらの頼みなんか聞くかよ!!



『ガン!!』



聞きやがった・・



あっさり恋人の俺を裏切って・・ガキを抱えたまま俺様にケリ入れやがった!!


「道明寺!やめなさいよ!
 西門さん、死んじゃうわよ!!」



ケリをくらい体勢が崩れた拍子に総二郎が俺の腕を振り払った


「イテーな!なんでケリ入れてくんだよ!!」


「あんたが乱暴するからでしょ!」


「うるせぇー!!とにかくおめぇーら全員出て行け!!」


あいつらを一人ずつつまみ出してやろうとした瞬間・・ガキが俺の大声に反応した・・


突然、リビングに響き渡る泣き声・・


そして全員の非難の視線が俺に集中する・・


「あ〜あ、司が泣かした。」


「司、お前、大声出しすぎなんだよ。」


「こうちゃん、かわいそう〜」


な、なんだよ!!


お、俺が悪いのかよ!!


じょ、冗談じゃねぇーぞ!!


だけど・・一瞬で形勢逆転・・お、俺かよ!?



そして留めはこのバカ女!



「だから大きな声出さないでって言ってるでしょ!!
 もういい加減にしてよ!!大声ばっかり出すんだったら
 私、帰るからね!!」



そう言うとあっさりと回れ右をしてリビングから出て行ってしまった・・


唖然と立ち尽くす俺にご友人どもが追い討ちをかけてくる



「牧野が帰るんだったら俺も帰る。
 牧野、送ってこ!」


「え〜つくし〜!つまんな〜い!」


「そーだな、司も帰れって言ってるし俺らも帰るか!」



ニタニタした顔で俺の様子を伺っているあきらと総二郎にケリを入れてから
慌てて牧野を追いかける・・



「オイ!ちょっと待てよ!
 なんでおめぇーが帰んだよ!!」


エントランスで追いついた牧野の肩を掴み
強引にこちらに振り向かせた



牧野は上目使いで少しにらむ様に俺を見ている


「だって、あんたさっきから怒鳴ってばっかりじゃない。
 こうちゃんの事が気に入らないんでしょ?だから機嫌悪いんでしょ?
 私がこうちゃんを預かったのが気に入らないんでしょ?
 だから久しぶりに会えた滋さん達にも八つ当たりして追い返そうとしてるんでしょ?」



「そ、そんなんじゃねぇーよ。」


「だってずーっと機嫌悪いじゃない!
 私がこうちゃん預かったからなんでしょ?」


「ちげーよ!大声出したのは悪かったけどお前に怒ってるんじゃねぇーよ。
 なぁ〜機嫌直せよ。」


肩を掴んだままゆっくりとガキごと抱き寄せた


すっぽりと腕の中に納まった牧野に満足・・



ハァ〜惚れた弱みか・・あっさりと白旗を揚げた俺・・
だけど・・久しぶりのこいつと喧嘩したくない・・


「本当?本当に怒ってないの?」


俺の腕の中から見上げる瞳が艶を帯びていて・・
いつの間にこんな色っぽい瞳するようになったんだ・・?
そう思いながらも黒目がちなその大きな瞳に吸い寄せられるように瞼に口付けをおとした



「ああ、怒ってない。怒鳴ってばっかで悪かったな。」



「ううん、じゃぁみんな帰んなくていいでしょ?
 久しぶりに会えたんだからみんなで楽しもう?」


はぁ?

何言ってんだこいつは?


「ねぇ・・ダメ?
 私、滋さん達に会えたの久しぶりなの・・だから・・
 ねぇ、道明寺・・お願い!」



うぉ!?

腕の中の牧野の俺を見上げる視線に降参・・


我ながら情けない・・なんでいつもいつもこうなるんだ?


だけど・・このまま簡単に降参したんじゃおもしろくねぇー


だから少しぐらいならいいよな?
大げさに溜息をついてから・・



「ハァ〜分かったよ。あいつら追い返さなけりゃいいんだろ・・」



「本当にいいの?」


「ああ、だけど条件がある!
 お前、俺の事好きか?」


「・・う、うん。」



「だったらちゃんと言えよ!
 俺の事愛してるって。
 それから道明寺って呼ぶな!名前で呼べ!」



「・・へっ?」



「どうしたんだよ?言えねぇーのかよ?
 お前、本当に俺の事愛してんのか?
 どーなんだよ!?」


「・・えっ・・あ、あの・・い、今言わなきゃ・・ダメなのかな・・?」



急にワタワタしだす牧野・・


「言えよ!」


「こ、ここで・・?」


「そーだよ!ホラ!さっさと言え!」



ほとんど脅迫だな・・
だけど素直に言わねぇーこいつが悪いんだぞ!!


「・・わ、わかった・・言うわよ!
 いい?今から言うから・・よーく聞いてなさいよ!」


「前置きはいいから、さっさと言え!」


「・・・ど、じゃない!つ、つ・・司・・あああああ・・後でね!!」


最後は聞き取れない程の早口で言うとスルリと俺の腕から逃げ出し
リビングの方へ走り去ってしまった・・



唖然として固まってしまった俺の背後から聞こえてきた笑い声


「プッククククククッ・・・ククククッ・・」


振り向かなくても誰だか分かる!!


俺の神経をトコトン逆なでする笑い声に
振り向きざまに一発お見舞いしてから牧野のあとを追うようにリビングへと足を踏み入れる・・


するとそこでは・・・


牧野とガキを取り囲んでやがるあいつらの姿が・・


全く何事も無かったかのように和やかな空気を作り出しているあいつらに
早くも後悔・・やっぱ追い出しとくんだった・・


あ〜あっ!!

もしかして俺・・牧野に軽〜くハメられたのか・・?



今頃になってそんな気がしてきたぞ!!


こうなったら一秒でも早くこいつらを追い返してやる!!



覚悟しとけよ!!












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☆あとがき☆

ん〜・・まいった!!
このお話し・・ブログでは確か前・中編としたハズ・・
だからこれが後編でめでたくHappyEndのはずなのに・・
終わりませんでした(T_T)

そして前の2話以上の駄文←これは自信を持って言えます!
ラブラブの甘甘にしようとすればするほど
おバカモード全開の司君になってしまって・・

司君ファンの皆様ごめんなさい!!
Upしようかどうか迷ったのですが、出し惜しみするほどの
物でもないし・・
えーい!出しちゃえと勢いだけでUpしてしまいました。

最後までこんなくだらないお話読んでいただきありがとうございます。

管理人逃げます!!


                2005.09.02  KiraKira

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