先に一人帰った総二郎はつくしを見送るために





自ら運転してきた車で空港へと向っていた








夕べ、優紀ちゃんからの電話で






今日、牧野が留学する事を聞いた









見送りはいらないと言っていたらしい・・・・








だけど・・俺が会いたかったんだ







約束はしていない




だから空港まで行っても会えるという保証はどこにもない






だけど・・なぜかその時の俺は牧野に会えるような気がしていた







空港に着いたのは午後3時






優紀ちゃんから牧野の乗る飛行機は








夕方に出発する便だという事だけ








広い成田空港の北ウイング







なんとなくこっちだと思った







行きかう大勢の人々の間を縫って歩いて行くと







やがて俺の目に見慣れた後ろ姿が飛び込んできた







「牧野!」







後ろ姿に声をかける






あいつは俺の声に驚いた顔を向けている








「・・・西門さん・・・?」







あいつの元へと駆け寄り、もう一度名前を呼ぶ







「牧野!」








「・・・ど、どうしたの・・・?」








「見送りに来たんだ。」







「・・へっ・・?!」








「夕べ、優紀ちゃんに電話貰った。
 お前、見送りはいらないって言ったんだろ?」








「・・・う、うん。」









「俺はお前を見送りたいから来た。」








「・・・うん。」







「逃げるんじゃねぇよな?」









俺の言葉にだんだんとうつむいてくる牧野は涙を堪えているみたいだった・・・







「・・うん、私ね、自分らしく生きる為に行ってくる。」






「そうか。
 何処へ行くのかは聞かない、けど、必ず帰って来いよ。
 待ってるから。」









「・・・うん、分かった。」









「こら、泣くな!顔を上げて、前を向いて胸を張って行ってこい!
 俺が見ててやるから。」









「分かった。ありがとう。」





「行ってくる!」







「おう!」







「コレ、お前に渡しておく。」














西門さんがそう言って私に渡してくれたのは小さな紙切れ







「何?コレ。」






二つ折りにされていたそれを開いてみると数字が書いてある







「俺の携帯の番号だ。何かあったら連絡して来い。
 何もなくてもいいから掛けて来いよ。」










「ありがとう。
 じゃぁ、そろそろ時間だから行くね。」










「ああ、元気でな。」









「西門さんもね。」















そう言って歩き始めたあいつの背中へエールを送る








「がんばれよ!勤労処女!」









周りの人が驚いて俺を見ているけどそんな事どうでもいい・・・







牧野も驚いて振り返ってやがる・・








けどその顔はすぐに笑顔に変わって








「バ〜カ〜!」








再び前を向いて歩き始めたあいつの背中にもう一度声をかける









「がんばれよ!牧野!」









あいつはもう振り返らずに手だけを上に挙げて左右に千切れそうなほど腕を振っている










俺はあいつの姿が見えなくなっても




しばらくその場から動けなかった








空港を出て車を滑走路が見える位置に止め






屋根のハッチを開けオープンカーにするとエンジンを止める。






どの飛行機が牧野の乗った飛行機なのかは分からない






けどそんな事どうでもいい・・・









何本かの飛行機が飛び立つのを見送った








ただ、この先の彼女の人生が幸多からんことを・・・・









フッ・・








こんな心配あいつには必要ないな







なんて言ったってあいつは雑草なんだから









がんばれ!牧野!










俺はここで俺らしくがんばるから



















  
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