半年後、つくしはロンドンの高校を卒業し





悩んだ結果そのままロンドンの大学に進学した








住んでいる所はロンドンから地下鉄で20分程の郊外の住宅地で







高校時代からのホームステイ先にそのままお世話になっていた







ロンドンに来た当初は言葉も上手く話せず





ホストファミリーとの意思の疎通にも苦労したけど





元来の根性とホストファミリーの粘り強いレッスンのおかげで






英語だけの生活にもじょじょになれだんだんと笑顔が戻り始めていた






忙しくしているせいか最近では道明寺の事をあまり考えなくなっていた







日本を出てからは一度だけ優紀に手紙を書いただけで






他の誰にも連絡はしていない









ロンドンでの大学生活も順調に一年が過ぎた頃





私にNYの大学への編入のチャンスが巡ってきた







NY─────道明寺がいる街








いい思い出のない街・・・







最近やっと彼への気持ちが落ち着いてきたところだ







彼の事忘れたわけじゃない





きっと一生忘れることはないと思うし






私はこの先もずっと彼の事を愛し続けていくだろう。







今の私はそれが自分らしいと思えるから・・






行こうNYへ








彼の住む街で私もやってみよう!











*******










NYへ来た当初はやはり大変だった、言葉の問題は無いとは言え






同じ大都会でもロンドンとは全く違う雰囲気には戸惑う事も多かった








NYに来てあっという間に半年が過ぎようとしている








その間、友人も出来ピザ屋でのアルバイトも始め、






忙しいけれど充実した日々を送っていた










道明寺の事は何度か新聞や雑誌なんかで恋人発覚の記事を目にしていたけど・・







でもそれだけ・・・






今の私には何も関係ない事・・・









今日は大学が早く終わりバイトも休みだったので、






久しぶりにセントラルパークへと足を伸ばしてみた








道明寺に会いたくて、一人でNYに来たあの日・・









"帰れ"と言われ迎えに来てくれた花沢類と座ったベンチ・・・









確か・・ここに座っている時に・・








あのおじさんにも会ったんだっけ?










なつかしいな〜!元気かな?おじさん








う〜ん、いいお天気!思わず伸びをしたくなる!









見上げた空の向こう・・・




この空って日本まで続いてるんだ










みんな、元気かな?











"ねぇ、花沢類 今でも非常階段でお昼寝してる?"







"ねぇ、美作さん 相変わらずマダム一筋なの?"






"ねぇ、西門さん あの日空港でがんばれって言ってくれてありがとう。"






"ねぇ、滋さん おいしいケーキ屋さん見つかった?"







"ねぇ、桜子 かっこいい彼氏見つかった?"








"ねぇ、道明寺 私ね今でもあんたの事大好きだよ"





"きっとこの気持ちは変わらないから"






"だからいいよ。あんたが忘れてても、
 私が覚えておいてあげる二人で過ごした時間を・・"






"ねぇ、道明寺 私もう振り向かないよ・・いいよね?もう・・・・"












「あ〜 お腹すいてきちゃったなぁ〜
 ホットドッグでも買ってこよっと!」










そう思ってベンチから立ち上がりかけた時





名前を呼ばれた・・・・









「・・・へっ・・・?」










声のしたほうを確認するとそこには・・








「つくし〜!」









「お、おじさん!!」











いつかのキア〜イのおじさんだった









確かこのおじさんって偉い会長さんだったんだよね・・?









おじさんが私の名前を呼びながら駆け寄って来て





おじさんの後ろからは秘書の人だろうか一緒に走ってくる










「Oh!つくし〜!」








目の前まで来たおじさんにいきなり抱きしめられた









ぐ、ぐるしぃー!!











「・・お、おじさん!!ぐ、ぐるしぃ〜です・・」










「Oh〜!つくし〜!久しぶりですね〜、どうしたんですか?
 こんな所に一人で、今日はあの彼と一緒じゃないんですか?」









「あっ・・はい!一人です。」








「そうですか、じゃぁこの前約束していたランチに行きませんか?」









「・・・えっ?・・・あっ・・ハイ!行きます。」










急だったから戸惑ったけど空腹には勝てなかった・・








私ってやっぱり食べ物に弱いのかも・・・







それにおじさん・・・って失礼だよね?








このおじさんはライズコーポレーションというアメリカでも





5本の指に入る大企業の会長さんで実はとっても偉い人なのだから









会長さんが連れて行ってくれたのはフレンチのお店で






普段の私からは想像出来ないくらい豪華なランチ








同じ大企業の会長さんでも魔女とは違って






ライズ会長は物腰も柔らかく人の話を聞くのが上手で、





私は会長に聞かれるままに今までの事を話していた・・











***********












私の話を聞き終えた会長は大きく一息つくと







「ハァ〜 つくしは若いのに大変な経験をしてきたんですね。」








「はい。いろいろ経験しました。でも、今はよかったと思っています。
 だって、あの時があったからこそ私は今、ここにいるんですから。」








「Oh〜!つくし〜!やっぱりあなたは素晴らしい女性だ!」








「・・・そ、そんな、私なんてまだまだです・・」







「No!No!つくしはもっと自信を持つべきです。
 今のつくしはすごくいい笑顔してますよ!」







「ありがとうございます。」









手放しで褒められて照れてしまう・・







和やかに食事は進みデザートが出てきた頃









「ところで、つくしは今何処に住んでいるのですか?」







「・・・えっ・・住んでいるところですか・・?」








「ええ、この後、私は会社に戻らなければならないので、
 つくしを送っていく事が出来ません。
 だから車で自宅まで送らせますから住所を教えてください。」








「そんな結構です、私、地下鉄で帰りますから。
 食事をご馳走になったのにそこまで甘えられません。」









「つくしをランチに誘ったのは私です。
 レディを送るのは男の役目なんですよ。」









「・・は、はい・・」








ここまで言われて、観念して住んでいる所を伝えた。








「Oh〜!つくし〜ダメです!」








「・・な、何がダメなんですか?」







「つくし〜、そんな危険な所に一人で住んでいるのですか?」







確かに私の住んでいる地域はお世辞にも治安がいいとは言えないけど・・





いくら奨学金を貰っているからと言ってもバイトをしながら





物価の高いNYで生活していくにはどうしても住む所は限られてくる








「はい・・・」









私が返事をすると会長さんは何か考え込んでいる様子だったが、




すぐに









「つくし、やっぱり年頃のお嬢さんを一人でそんな
 危険な地域に置いておくのは心配です。
 どうですか、私の家に来ませんか?」









「・・・へっ?!」








今・・何て言ったの?









「つくし、そうしましょう。
 私の家にホームステイすればいいですよ。」








「そ、そんな、そこまでお世話になるのは・・・
 それにご迷惑になります。」








「ハハハハ・・・迷惑なんて掛かりませんよ。
 それに、迷惑だなんて思ったらこんな事言いませんよ。」










「・・・はぁ?」










予想外の展開・・






確かにホームステイさせてもらえるのはありがたい事だけど・・・





やっぱりそこまで甘えられない






そう思って断ろうとすると








「私の家族は妻だけなんです。私達夫婦には子供はいません。
 だからつくしが我が家に来てくれたら妻もきっと喜ぶと思います。
 それにね妻もあなたに会いたがっていたんですよ。」









「奥様が私に・・?」










「ええ、以前セントラルパークであなたに言われた"魔法の言葉"の話を妻にもしたんです、
 そうしたら彼女もつくしの事を気に入ったみていで是非会いたいって言ってました。」








「でも、そんなお世話になるなんて・・・」








「では、こういうのはどうですか?
 学校が休みの時などは私の仕事の手伝いをしてみませんか?
 それに妻の話相手もしてもらえるとうれしいんですがね。
 それでしたら、つくしも遠慮しなくてもいいでしょ?」








そう言ってライズ会長はイタズラっぽく




私にウインクをした









「つくし、人の好意には素直に甘えていいんですよ。」







「・・はい。分かりました。それじゃ お言葉に甘えさせていただきます。
 私、がんばって会長さんのお手伝いさせていただきます。
 それと奥様の話相手も。」









笑顔で答えると会長さんも笑顔を返してくれる








「それじゃぁ、決まりですね。
 さっそくつくしのアパートから荷物を運ばせましょう!」







「い、今からですか?」








「そうですよ、つくし、善は急げです!」









結局、私は会長さんに押し切られる形で




その日の内に会長さんのお宅へと引っ越してしまった







引越してみてびっくり会長さんのお宅も道明寺のお屋敷にひけをとらない・・





それ以上の豪邸だった・・






一体いくつ部屋があるんだろう・・?





こんな広いお屋敷に夫婦二人だけで住んでるの?






会長さんの奥様もとっても素敵な人で





いきなり押しかけた私を笑顔で大歓迎してくださった






奥様が私のために用意してくださったお部屋は






日当たりのいい南向きの角部屋で






バスルームだけで今まで住んでいたアパートよりも広い・・かも・・






なんだか落ち着かない・・・







会長さんのお屋敷にお世話になるようになってから




私はそれまでしていたピザ屋のバイトを辞め、





大学の講義が少ない日などは会長さんのお手伝いや





奥様のお手伝いなどをして過ごしていた







お手伝いといっても雑用のような仕事ばかりで、




正確には会長の秘書のドナのお手伝いをしている






ドナは私と年も近いのにすごく優秀な女性で





彼女について仕事をしていると本当に勉強になった








奥様にもかわいがっていただき、




たまにお友達のお宅で開かれるホームパーティーなどにも





連れて行ってもらったりしてテーブルマナーや礼儀作法などを





さりげなく教えていただいた






本当に私の知らない事ばかりで、






少しづついろんな事を憶えていくのはすごく楽しかった


















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