空港にむかう車の中から西門さんに電話をかけた







「・・にしかどさん?」








名前を呼ぶと少しの間をおいて聞こえてきたのは懐かしい声






「・・牧野か?!」








なるべく冷静に状況を伝えなきゃと思うけど上手く言葉に出来ない






なんとか病院の名前を告げ




電話を切ると前方には空港のターミナルビルが見えてきた








ターミナルビルにはすでにライズ会長の秘書である





ドナが到着していて私達を待っていてくれた








「つくし!」






「ドナ!」







「こっちよ!準備は出来てるから急いで!」






VIP専用のゲートを通り、車に乗り込み滑走路へと出て




そのまま飛行機の側まで行く







座席に着き離陸を待っている時に西門さんから電話が掛かってきた







彼は病院に着いたという事とパパとママの状況を教えてくれた







"パパとママが手術中・・・!!"








無意識の内に電話を切っていた








指先が冷たい・・







血の気が引いて震えが止まらない体を奥様がずっと抱きしめていてくれた







日本に着くまでの10数時間の事をよく覚えていない







結局、パパもママも生きて手術室から出てくる事はなかった・・・







私の家族は進だけになってしまった・・







悲しすぎると涙も出てこない・・・







何も考えられない







悲しいのかさえも分からない







両親を自宅へと連れ帰り、布団を敷いて寝かせる





外傷はほとんどなく顔は穏やかで二人共ただ眠っているだけのように見える








私は二人の枕元に座りぼんやりと顔を眺めていただけ・・








ただじっと見ていた・・







もしかしたらパパもママも目を覚ましてくれるんじゃないかと思って









結局、私は日本へ向う飛行機の中から一週間程の記憶が定かではない






自分がどのように過ごしていたのか覚えていない





身じろぎもせずずっと座っていただけのような気がする






お葬式の準備などは西門さんが全部手配してくれた





途切れ途切れの記憶の中で覚えているのは西門さんが





美作さん達に連絡するかと聞いた時私は








「・・今は・・誰にも会いたくない・・」







と告げていた・・






誰にも会いたくなかった・・・






彼は一言







「分かった。」








とだけ言って私の望みを聞き入れてくれていた・・













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