ゴチャゴチャと五月蝿い牧野の腕を






強引に掴んだままエレベーターに押し込む






エレベーターが上昇し始めると諦めたのか大人しくなった牧野






逃げられないように腕は掴んだままだったが





少しだけ力を抜くと上昇し続ける階数表示を見ていた







チーンと一度だけ高い鐘の音が鳴ると同時に開いたエレベーターの扉







無言のまま部屋へのドアを開け中へ入るよう軽く背中を押すと










牧野は抵抗する様子は見せず大人しく従った






そのまま牧野の背中に手を添え室内へと歩みを進める











「ねぇ?パーティーはまだ終わってないんだけど?」









「分かってるよ!」








「パーティーに戻ったほうがいいと思わない?」









「思わねぇ!」









「そう。」











思わないと言った俺の言葉に諦めたようにソファーに座った彼女の隣に座る・・









本当はこのまま押し倒したいけど・・・








部屋に入って5分と経っていないこの状況で流石にマズイだろ?








俺にだって多少の理性と常識は持ち合わせているから







取りあえずは・・・









「お前、腹減ってねぇか?」








「食事しに来たわけ?」








「い、いや・・じゃあシャンパンでも飲むか?」








「お酒ならパーティーでも飲めたじゃない?」









ムカつくなこの女!










「俺はお前と二人だけで飲みたかったんだよ!」






「なら最初っから正直にそう言えばいいのに。」







「うるせぇーよ!
 正直に言ったところにでお前は来ねぇーだろ?!」








「試してみればよかったのに。
 もう一回やり直してみる?」








「やり直さねぇーよ!」









二人っきりの状況に俺だけがドキドキしてるみたいで





なんかかっこ悪ぃ・・



ソファーから俺を見上げ余裕の表情を浮かべている牧野に気付かれないように





落ち着く意味も込めて小さく息を吐き出すと







彼女の隣にゆっくりと腰を下ろした








目の前にはメープルの売りでもある






東京の夜景が圧倒的な迫力で広がっていて






眺めていると光の洪水の中に吸い込まれて行きそうな感覚に襲われる














しばらく夜景を眺めている牧野の横顔に見惚れていたのに・・










「ねぇ?私、秘書辞めるね。」








不意に俺の方を向き







放った牧野の言葉に完全にフリーズ・・








「ねぇ?聞いてる?」








雇ってくれと言ってきたのも突然なら





辞めると言い出したのもあまりに突然で・・











「・・おまえ・・い、いきなり何言ってんだよ?!」








「いきなりじゃないわよ。
 最初っから2年って契約だったし。」







当たり前のように言い放った牧野・・








「そんな契約認めねぇーからな!」









「今さらそんな事言わないでよ。」








「とにかく俺は認めねぇーし秘書を辞めるのも許さねぇ!!」







「じゃあ最初にした約束は覚えてるわよね?」







「なんの約束だよ!?覚えてねぇーよ!そんなもん・・・」








卑怯だぞ!





この状況でそんなもん出してきやがって!





覚えてるけど・・覚えてねぇーんだよ!





くそっ!









「これが私の願いなんだから叶えてね。」







「覚えてねぇーって言ってんだろ!」







「私ね、夢があるの。」






勝手に話し進めてんじゃねぇーよ!





認めねぇーって言ってんだろ!!





俺の話しを聞けよ!








「夢って何だよ?!秘書やりながらでもいいだろ?!」








「う〜ん・・働きながらっていうのも考えたんだけどね・・
 私ってそんなに器用じゃないしあんたの秘書だと忙しいでしょ・・
 だから無理かなぁって思ったの。」








「無理じゃねぇーよ!
 どんな夢か知らねぇーけど秘書やりながら出来ねぇーんだったら諦めろ!」









「勝手な事言わないでよ!」








「勝手なのはお前の方だろーが!
 とにかく俺は認めねぇーからな!」







「私ももう31歳なのよね・・
 そろそろ結婚もしたいし子供だって欲しいのよね・・
 だからあんたの秘書は辞めて
 今度はあんたの奥さんになりたいって思ってるんだけど。」













ん?







今、こいつ・・何て言ったんだ?







なんかサラッとすんげぇ言葉を聞いたような気がするぞ!?






















「だから、私と結婚しない?」


















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