遠くでアラームが鳴っている・・








無理やり引き戻される意識に抵抗しながら





隣にあるはずの温もりを手で探すけど・・





無い・・






いくら手で探ってもそこにあるのは冷えたシーツだけ・・






まだ寝ぼけたままの頭でゆっくりと上体を起こし




部屋の中を確認するけど






あるはずの彼女の姿は見当たらない・・






・・ったく・・今、何時だ?






時計の針は午前5時を指そうとしている







はっきりと意識が覚醒してくると夕べの事の全て





俺の都合のいい夢なんじゃないかと思えてきて






ベッドから飛び起き床に脱ぎ捨ててあったローブを拾い上げ








袖を通すと彼女の姿を求めてベッドルームを出た







リビングにもダイニングにもバスルームにも・・





トイレも覗いてみたけれど愛おしい彼女の姿は無い






だけどリビングのテーブルに置かれたままのワインボトルとグラスが







夕べの出来事が俺の都合のいい夢じゃなかったと教えてくれている







夕べ・・・牧野からのプロポーズに応えて






やっと彼女を腕の中に納め口唇を重ね





そのまま当初の目的通り押し倒してやろうと思ったのに






追いかける俺の口唇から逃れるように離された彼女の口唇






彼女は俺から身体を離すと






脇に置いていた小さなパーティーバッグの中から婚姻届を取り出した






俺の目の前に広げられた婚姻届には





既に牧野のサインがされてあり





保証人の欄には親父とババァのサインが記されていた






あまりの用意周到さに唖然とする俺にサインしろと迫る牧野・・・








「・・な、なんでこんなもん持ち歩いてんだよ?
 それに・・保証人が親父とババァってどういう事だよ!?」








「メープルを辞める時に退職金代わりにお二人がサインしてくださったの。
 これは私にとってお守りみたいな物だから・・いつも持ち歩いてたのよ。」






クソッ!





二年も前から親父もババァも認めてたって事じゃねぇーかよ!





差し出されていたペンを奪い取ると唯一空欄になっている場所に署名し




婚姻届と彼女の腕を同時に掴み部屋を飛び出した・・・









「ちょ、ちょっと!今度は何処行くのよ!?」






「今から届け出しに行くんだよ!」







「い、今から?!」






「そーだよ!この届けは24時間いつでも受け付けてんだろ?!」






「そ、そうだけど・・・あんた・・よくそんな事知ってたわね・・」








「俺だってそれぐらい知ってんだよ!
 ウダウダ言ってねぇーで黙って付いて来い!」








彼女の腕を掴んだままエントランスを出ると




待機させたままだった車に彼女を押し込み




役所の夜間受付と書かれている小さな窓口のインターフォンを押すと





面倒くさそうに対応に出てきた奴に右手に掴んだままだった




婚姻届を叩き付けた







届けがちゃんと受理された事を確認し




晴れて夫婦となり







再びメープルへと戻ってくると部屋ではあきら達が待っていた・・




















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