「う〜ん、すっきりした!
 やっぱり総二郎の言う通りにエステに行って正解だったのかも?」







思いのほか気持ちのよかったエステを終えて



部屋に戻った頃には時計の針はもうお昼を指していた







リビングで総二郎に電話しようかなぁ〜なんて思っていた所へ


自分では昔みたいに寝てばっかりしていないと



言っている花沢類が起きだしてきた







頭には寝癖がついていてまだ目が半分しか開いていない・・







「おっはよ〜 類!」







「・・はよ・・・とっか・・いって・・きふぁの?」






あくびをしながらの返事が帰ってきた・・







「うん、エステに行ってきた。
 ねぇ、類はお腹すいてない?」







「う〜ん、少しすいてるよ。」





「じゃぁ、総二郎も呼んでお昼にしない?」







「うん。ねぇ、総二郎はどこに行ったの?」








「午前中はプールサイドにいるって言ってたけど、今から電話してみるね?」




「ふぁ〜〜」







あくびで返事された・・




まだ眠そうに目を擦っている花沢類を見ながら総二郎の携帯にダイヤルしてみる








「ねぇ、水着に着替えてプールに来い!って言って
 電話切られちゃったんだけど・・類は水着持ってきた?」






「持ってるよ、つくしは?」







「う〜ん、持ってることは持ってるんだけど・・・
 あんまり着たくないんだけど・・」







「どうして?」







「だって、その水着ってここに着いた日にドナがくれたビキニなんだもん!」






「いいじゃん、ビキニでも。何が問題なの?」






「何が問題って・・だ、大問題でしょ!」






花沢類は本当に分からないと言うように不思議そうな表情を浮かべている・・




「だから、どうして?」





「・・・だ、だって・・む、胸ないし・・ずんどうだし・・」




「なんだ、そんな事だったら気にする事ないよ、みんな知ってる事だから。」








気にする事ないよ・・・?



みんな知ってるから・・?




・・って言ったわよね?


私の聞き間違いじゃないわよね・・?



彼の言葉に唖然としてしまい次の言葉が思い浮かばない・・・





「だから早く着替えちゃって僕も着替えるから、
 あんまり遅くなるとまた総二郎の機嫌が悪くなるよ。」





言いたい事だけ言うと類はさっさと自分の部屋へと入っていった






その後ろ姿を呆然と見送っていたけど


あんまり遅くなると本当に総二郎の機嫌が悪くなると思い



自分の部屋へと戻ってはみたけど・・






ドナがくれた真っ赤なビキニを手にとり眺めてみる・・




絶対に似合わないよ〜・・これだけは確信を持って言える・・・







あ〜っ・・どうしよう・・・?






いくらビキニを眺めながら考えたところで何も浮かんでこない・・・






「あ〜 もう!
  どうせ見せるのって言ったって類と総二郎ぐらいなんだから!ヨシ!」




自分に言い聞かせて着替てえる・・





水着姿の自分を鏡で確認してみるけど・・・





・・・やっぱり・・似合ってない・・・!




もうすぐ27歳にもなるのに



私には一向に色気とかそういう物が備わってこない・・・



どうしてだろう?



何がいけないのだろう?




水着の上にパーカーをはおりホットパンツをはいてみる




まぁ〜 何とかごまかせる




下っ腹に力を込めて覚悟を決めリビングへと出ると



着替えを済ませた類が待っていてくれた




類にしても総二郎にしても二人とも贅肉なんて少しもなくて




引き締まったキレイな身体してる・・



絶対、神様は不公平だ!





「・・・お待たせ・・・しました・・」





「いいじゃん、似合ってるよ。」



彼の言葉も今の私には嫌味にしか聞こえない・・・





「それって・・嫌味・・?」



「違うよ、本心。」





睨んでいる私などお構いなしで類はいつもの微笑みを浮かべている・・




「早く行こう!総二郎が待ちくたびれてるよ。」




「・・・う・・・ん・・・」


彼はいつまでもウダウダと言っている私の手を強引に引っ張ってプールサイドへと出た




日差しがキツイ・・



せっかくエステに行ったのにまた昨日みたいなのはツライから



今日はちゃんと日焼け止めを塗らないとなんて考えながら



花沢類に手を引かれてプールサイドを歩いていた







プールサイドには総二郎にマット、そして今日着いたばかりのエドも一緒だった





「Hi!」



「おせぇーよ!」




「何よ!いいでしょ・・着替えてたんだから!」




やっぱり総二郎の機嫌は悪いだけどいつもの事だから・・無視よ!ムシ!






「エド、久しぶりね。」






久しぶりに会う彼に話しかけながら彼の前へ一歩足を踏み出すと



彼は穏やかな笑顔で私に歩み寄りやさしく抱きしめられた





いつものHUGだと思って私も軽くHUGし返したんだけど・・・




やわらかく滑らかなシルクで包まれるように抱きしめられていて・・



いつもはすぐに終わるはず抱擁も今日はなかなか終わらない・・




・・・?・・・



・・は、離して欲しいんだけど・・・





無理に身体を離すわけにもいかずしばらく彼の腕の中でじっとしていたけど・・




私の背中に回っている彼の腕に力が込められて・・



驚いて思わず身体に力が入る・・




どうしていいのか分からずエドの腕の中で戸惑っていると




いきなり後ろから花沢類に引っ張られた・・



背中から花沢類に抱きとめられた私は今度は類の胸の中にいる・・





・・・何んなの?








花沢類とエドは共に無表情で視線を合わせたまま



しばらく沈黙だけが流れていた






誰も何も話さない・・・



先に口を開いたのは類だった




表情はすっかり元に戻っている・・・





「エド、久しぶり。」






一体、今までの緊張感はなんだったんだ?



って言いたいぐらいエドもいつも穏やかな表情に戻っている





「やぁ 類、久しぶりだね。また、会えてうれしいよ。」





笑顔で握手をするために手を類に差し出している・・





類はつくしを抱え込んだままエドと笑顔で握手している




つくしはわけが分からないと言う表情で二人の顔を交互に見比べている・・





そんな状況をじっと見ていたマットが俺の耳元で囁いた





「オイ!総二郎!あの二人とだけは絶対に喧嘩すんなよ!!」




「ああ・・」




微妙な空気が流れているプールサイドで



どうしてエドと類がいきなりつくしを取り合っているのか考えた



まぁ〜 考えなくても答えは簡単なのだが・・




それは、つくしが水着姿だからで・・・



・・ったくいい歳した男が二人でつくしの水着姿に欲情しやがって・・・



・・それにしても何でこんなにライバルが多いんだ・・?





あ〜あ、当の本人はまったく気付いていない・・




「オイ!類、いい加減、つくしを離せよ!」




いつまでも類の腕の中でキョトンとしているつくしの腕をつかんで


俺の隣のデッキチェアーに座らせると





類の腕から解放されたつくしが何事も無かったかのようにサンオイルを塗り始める・・




おろしていた髪をアップにしながら




「ねぇ 総二郎、背中塗ってくれない?」




なんて言って俺にサンオイルを手渡してくる・・




指名してもらえるのはうれしいのだが・・


あの二人の視線がイタイ・・・





それにしてもこいつ分かってんのか・・?


分かってねぇよな〜







総二郎は降り注ぐ太陽の光の元で

彼女の背中にサンオイルを塗りながら残り少ない理性を総動員していた・・









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