着替えると言って席を立った彼女が心配で後を追って部屋へと戻った



彼女はリビングのソファーに座りぼんやりと



窓の外に広がる雲一つない空を見ていた






「大丈夫?」




声を掛けながらゆっくりと彼女の横に座る





彼女からの反応はすぐにあった




僕の心配など杞憂だったのだろうか?






思いのほか晴れ晴れとした表情で僕を見つめている






「大丈夫だよ。ちょっとびっくりしただけだから。
 心配してくれたの?ありがとう、類。」





彼女に見つめられてこっちが照れてしまう







「そうだね。僕もびっくりした、まさかこんな所で
 あいつらと会うなんて予想もしてなかったから。」







「うん、でもね又みんなと会えて嬉しかったよ。」





「・・・司とも?」





「うん、道明寺とも・・ね。」
「類、私ね、道明寺とも次に会った時は又友達ぐらいには
 なれるかなって思ってたんだけど、それも無理だって事が今日分かった。
 ちょっと寂しいけど・・でもさっきの態度にしたって何だか彼らしくない?
 変に優しくされても逆に戸惑っちゃうだけだから、これでよかったんだよ。」







「そっか、ねぇつくしはもう司の事、好きじゃないの?」









「好きだよ。」







まっすぐに僕の目を見ながらの告白・・・



思わず自分が好きだと言われているのかと勘違いしそうになる・・



そのまま彼女から視線がはずせない・・・







「もう、そんな顔しないでよ!」






僕は今どんな顔をして彼女を見てたんだろう・・?







「道明寺の事は今でも好きだよ。
 でもね、あの頃抱いていた気持ちとは少し違うかな・・
 それにね、あんな強烈な奴忘れろって言われても
 忘れられないでしょ?」







「そうだね。」






「そうだよ。」







笑いながら再び視線を窓の外へと移した彼女の横顔に見惚れてしまう・・・







いつの間にか大人の女性へと変身していた彼女と



時折覗かせる少女のままの彼女・・







女と少女を巧みに同居させている彼女の瞳に映るモノは



一体何なのだろう?







「私、そろそろ着替えるね。滋さん達あんまり待たせても悪いし。」






ソファーから立ち上がった彼女の髪を



窓から吹き込んできた一陣の風が掻き揚げた






「うん。」






ずっと彼女から視線を外せないままで



そう返事するのがやっとの状態・・






でも、彼女は気付かない・・




そんな僕の事に・・・






「ねぇ 類はこれからどうするの?」






「疲れたから、少し寝る。」







「そう、じゃぁおやすみなさい!」





「おやすみ。」









着替えを済ませてロビーへ降りると滋さん達は



すでに着替えて待っていてくれた







「お待たせ〜」






「つくし〜 私達も今来たとこだよ。」






そう言いながら又、抱きつかれる・・




本日、2回目・・







「滋さんいちいち先輩に抱きつかないでください!」






桜子は私に抱きついたままの滋さんを引き剥がしながら






「行きましょうか?」






「うん、行こう!」







ホテルに隣接しているショッピングモールで



ひとしきり買い物を楽しんだ後、歩きつかれた私達は



三人でカフェに立ち寄った







「ふ〜 疲れた〜」



「本当、疲れました・・」





お茶を飲みながら一息ついていると桜子が








「ねぇ、先輩そろそろ教えてくれませんか?
 ケイトって呼ばれてる訳とさっきからずーっと私達の後
 付いてくるあの男の人達の事。」








「・・・桜子・・あんた、気付いてたの・?」





「えっ・・何?何の事?」





「滋さん、気付いてないんですか?」





「だから、何が?」






「買い物してる間中ずーっと私達の後を付いてくる
 男の人が三人程いるんですよ。」








「えーーーどこ?どこ?」





滋さんが周りをキョロキョロと見回している







「ごめんね、気分悪いよね・・・
 彼ら私のSPなんだ。先に言っておけばよかったね。」






「先輩、どうしてSPなんて付いてるんですか?
 何やったんですか?」







「何もしてないわよ!
 もう!二人共そんな顔で見ないでよ!
 今からちゃんと説明するから。」







「つくし、早く教えて!」






「うん。」







二人に日本を離れてからの私の8年間を話した








「じゃぁ先輩の今の名前はケイト・ライズなんですね?」






「はい。」







「で、ずーっと西門さんと一緒だったんですね?」






「う〜ん、ずっとってわけじゃないけど・・・」







「でも実際には西門さんと花沢さんとNYで一緒だったんですよね?」







「・・だから・・ずっとってわけじゃないって
 言ってるでしょ・・・」








「ねぇ つくし、今まで一度も日本に帰って来なかったの?」







「・・ううん・・年に一回はパパとママのお墓参りに帰ってた・・」







「じゃぁ、どうして連絡してくれなかったの?」









「・・ごめんね・・何度も電話しようと思ったんだけど・・
 どうしても勇気がなくて・・・」







「・・ごめん、つくし、責めてるわけじゃないの。
 ただね、ずっと会いたかったから。」







「分かってるよ。私ね自信が無かったの・・
 パパとママが死んじゃって、ライズ家の養女になって、
 私を取り巻く状況が一変しちゃって、それに対応するのに
 精一杯で・・あの時、手紙に書いたように私らしく
 生きられてるのか分からなくて・・・」







「・・つくし・・ごめん・・ね・・」






「謝らないで、滋さん。
 私も・・会いたかったの、みんなに・・
 すっごく会いたかった・・・」







話しているうちに涙が溢れ出す・・・



こんなに泣くのは久しぶりかもしれない・・




三人とも涙で顔がぐちゃぐちゃだった






「プッ・・やだ、桜子あんまり泣くと化粧落ちるわよ!」






「先輩だって人の事言えないですよ。」





「本当〜 つくし、ヒドイ顔してるよ〜!」







慌ててコンパクトで自分の顔を確認してみる・・




確かにヒドイ・・








「もう〜ヤダ!」








「先輩、パウダールーム行きますよ!」








「賛成!」













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