「今までのが昔話だ。
 今度はこれから先・・少し未来の話をしてやるよ!」









「・・未来の話?
 お前、預言者にでもなるつもりか?」








預言者なんて・・軽口のつもりだったのにマットは意外と気に入ったようで

口角を少し上げて笑っている・・・







「預言者か・・いいかもな・・
 でもな、今から俺が話す事は予言でもなんでもない、少し考えれば誰にだって簡単に予想がつく結末だよ。」









「エドが来年、親父の跡を継いでペリー財閥の総裁に就任する。
 正式な発表はまだ少し先になるけどな。」










「その話の何処に俺達が関係あるんだ?」









「まぁ、聞けよ。エドは来年30歳だ、親父の跡を継いで財閥のトップにもなる。
 仕事だって出来るし、人望だって厚い、顔だって・・まぁ〜俺には劣るけどそこそこいい男だ。」








「・・?お前、一体何が言いたいんだよ?」










俺の問いかけには答えずにマットは悠長に言葉を繋いでいく・・・









「なぁ〜総二郎、後エドに足りない物って言ったらなんだ?」








「今度はなぞなぞかよ・・?」








「足りねぇもんだよ!お前らなら分かるだろ?」








そう言われて考えてみる・・・








「・・足りない物・・ねぇ〜・・?」






「・・・・あっ!」





「やっと気付いたか。」








マットのイジワルそうな笑顔がちょっと気になるけど・・








「ああ、結婚か?」







「そうだよ!俺が見合いさせられたんだぜ。
 あいつに見合い話がこねえわけねぇだろ?」








「・・そうだな・・」








「でもな、エドは見合い話をことごとく断ってやがる!
 会う事すらしないでな!」










「どうして?」










あきらは先程見たエドの顔を思い出していた

マットのような強烈な個性は見せなかったが、

穏やかな瞳で人を包み込むようなやさしさを感じさせる人物








「なぁ あきら。お前、今エドの事や優しそうないい奴とか思ってるだろう?」









「えっ・・・!?」






見透かされてる・・






「まぁな、あいつのあの穏やかそうな外見から騙される奴は多いけど
 言っとくがエドだってただの男だぞ!」









「どういう事だ?」










「確かにエドは性格も穏やかだし女にも優しい、俺が言うものなんだけど、まぁ〜いい奴だと思う。
 けどなあいつは俺と違って策士だ!」








「お前は当たって砕けろだもんな・・」






「ああ、でもあいつは砕けないかわりに当たりもしない。
 少しづつ外堀を埋めていくタイプだ。」









「エドが初めてケイトに会ったのは学生の時だ。
 お袋が嫌がらせで開いた俺の誕生日パーティーに招待された時だったんだ。
 その当時、エドは大学院に通ってたからN.Yには居なかったのに、
 俺の誕生日パーティーだからってわざわざ帰ってきてケイトに会った。
 俺はすぐにエドがケイトに惚れたって分かったけど、ケイトは未だにエドの気持ちには気付いてない!」










「・・なぁ、外堀埋めて行くって・・どう言う意味だよ?」








「まずエドはケイトに嫌われるような事は絶対にしないし、
 傷つけるような事も絶対に言わない、たまに食事に誘ったり
 してるようだけど二人っきりで会うような事はしない。」








「なんで二人っきりで会わないんだ?」









「二人っきりなんて分かったらケイトが来ない可能性が大きいだろ。」






「・・ああ・・そうだな・・」






「だから毎回、屋敷に呼び出すんだよ。
 ディナーの席には親父とお袋も同席している、特にお袋はケイトの事気に入ってるからな。
 ケイトが屋敷に来ると大喜びしてるぜ。だからケイトは兄貴の結婚相手として何も問題ない。
 残るはライズ家のほうだけど、それも問題はないだろう。なんてたってペリー財閥とライズCo.は業務提携してるし、
 お袋とライズ会長婦人はハイスクールの同級生で昔っから仲がいい。」







「けど、つくしはOKしないだろ?」






「そうか?俺はOKすると思ってるぜ。」





「だけど、ライズ会長はつくしに政略結婚みたいな事させないだろう?」





「ああ、多分ケイトの親父さんもお袋さんもエドとの結婚を強制したりはしない。
 だけどケイトの性格からしてあいつは自分の気持ちより周りの人間の気持ちを優先させる。」







「・・確かに・・あいつはいつも自分の幸せより他人の幸せを優先するな・・」





あの時だってそうだ・・・


司のお袋さんからの圧力で優紀ちゃんや和也の家に迷惑が掛かりそうになった時

あいつは自分から司の元を離れて行った・・






「進の結婚相手の職業がライズCo.の顧問弁護士だって事は知ってるよな?」





「ああ。」






「進はライズCo.の時期社長の第一候補だ。
 本来ならあいつが政略結婚しても何もおかしくないのに、進とモニカは恋愛結婚だ。モニカは一般家庭の娘だろ。
 進の結婚はライズCo.にとって何のメリットもない。」






「・・だから・・OKするってか?」






「ああ、ケイトは両親が亡くなった後、自分達姉弟を引き取ってくれた親父さんとお袋さんに本当に感謝してる。」







「後はエドがいつ言い出すかだけだ。答えは99%決まってるな! 
 まぁ〜ケイトがエドの事を愛せるかどうかは分かんねぇけど、少なくとも愛されてるって事は事実だ。
 恐らく来年の今頃は俺達、エドとケイトの結婚式に招待されてんじゃねぇか?」








つくしがエドと結婚する・・・・?





マットの自信満々の言葉に何故だか体中の血液が逆流していくような感覚に襲われる・・





「お前、どうしてそんな話を俺達にしたんだよ?!」






あきらが俺が一番聞きたかった事を口にした・・




そうだ・・どうしてだ・・?







「どうしてかって・・どうしてだろうな? 
 ただ、あいつとエドが結婚したら、ケイトは俺の義姉って事になるんだぜ!
 それだけは勘弁してくれよ!ますます俺の人生お先真っ暗じゃねぇーか!!」






「・・そ、そんな理由なのか・・?」






「ああ、そんなとこだな。」







「・・ウソつけ!お前がそんな理由だけでこんな話するような奴じゃねぇーだろ!?」







「俺は自分の人生が一番大事なんだよ!」
 じゃぁな、俺はいろいろと忙しいんでな。」







言いたい事だけ言うと軽く手を挙げてマットは再びビーチへと歩いて行ってしまった





その後姿に問いかけてみる・・・





なぁ、マット、本当は何を俺達に言いたかったんだ・・?




お前は俺達にどうしろって言うんだよ・・?





どうしようもないんだ・・





それが牧野つくしなんだから・・





「総二郎、お前どうするんだ?」





「どうもしねぇーよ!」





「いいのか?お前、本当に指くわえて見てるだけなのか?」







「さっきも言っただろ。
 俺はあいつの決めた事だったら笑って背中を押してやるだけだ。」








「総二郎・・・」






呆れたようなあきらの声・・・






「・・なんだよ?」





「お前、バカだな・・」







「お前に言われたくねぇよ!」






「・・・そうだな・・俺達、みんなバカだよな・・・」




「・・ああ、その中でも一番は司だな・・」






「ああ、確かに・・あいつが一番だな・・」







←BACK/NEXT→
inserted by FC2 system