マットがビーチへと出て行った後、

入れ替わるようにプールサイドに司がやって来た





「よぉ!」





「ああ・・」




「どうしたんだ?」





「・・俺、明日NYへ帰る。」






「・・・・はあ?」







「仕事が入った。」





「・・そ、そうか・・分かった。」





「お前らは楽しんでくれ。」






「ああ・・・」






「じゃぁな、俺は連絡が入ることになってるから、部屋に戻ってる。」





「・・ああ・・・・あっ・・ば、晩飯は一緒に食うだろ?」






「ああ・・」






部屋へと戻っていく司の後ろ姿を見送りながらあきらがため息をついている






「あいつ、相当気になってるみたいだな?」






「そうだな、大方、仕事が入ったなんてウソだろうな。」





「多分な・・けど、今さらどうしようもない事だからな・・」







総二郎はそれ以上なにも答えなかった





再びデッキチェアーに寝転がり腕を頭の下に入れ目を閉じている






俺もデッキチェアーに寝転がりゆっくりと目を閉じた










何だって言うんだよ!





どいつもこいつもみんなあの女に気使いやがって!






今さらあんな女がなんだって言うんだ・・?





だけどあの女が俺の前に現れてから胸の奥にずっと隠し続けていた

モヤモヤが顔を出してきやがった!



あきら達は何も言わねぇけど俺の記憶の一部が欠けてるって事は分かっている






その記憶ってのがあの女の事なのか?






類はあの日以来あきらかに俺を見る目がおかしい




類だけじゃない・・





あきらも総二郎もそうだ




時折何かを探るような目つきで俺を見てやがる






くそーーーー!





イラつくんだよ!









部屋に戻りベッドに身体を投げ出す





余計な事を考えてしまうのは疲れているせいだと思い

少し眠る為に目を閉じた







目を閉じても何故かあの女の顔が浮かんでくる・・





軽く頭を振り枕に顔を埋め無理やり眠りについた・・







目を覚ました時、部屋の中は真っ暗になっていた


サイドボードの時計を確認すると7時を回っている




いつの間にか眠っていたらしい・・・



ずーっと夢を見ていたような気がする・・





夢の内容は覚えていない・・





イヤな感覚だけが残っている・・





部屋には空調が効いているから、

暑いわけじゃないのに身体中に汗をかいている



汗を流すためにシャワーを浴びて着替えていると携帯が鳴った



「よお!お前今何処にいるんだ?」




「部屋にいる。」





「そうか、俺達メシ食いに行くけどお前どうするよ?」




「ああ、俺も行く。」





「じゃぁ、ロビーで待ってるから、降りてこいよ。」





「分かった。」






ロビーへと降りて行くと待っていたのは総二郎達だけだった




あの女は居なかった・・



何となくホッとしている自分がいる・・





「お前らだけか?」






何となく口をついて出たセリフ・・




何言ってんだ・・?




俺は・・?




俺の言葉を聞いた瞬間、あいつらが一斉に俺を見た・・




類なんてすごい顔で俺を睨んでやがる・・




「司、何言ってんの?
 僕達以外に誰がいるの?」






「・・えっ!?・・あっ、ああ、何でもねぇよ!」




慌てて返事をすると滋達は歩き始めた



どうやらレストランは決まっているらしい




一番後ろを着いて行く様に歩いていると類が並んできた・・





「つくしは今夜は家族で食事してるよ。」





「・・・何で俺にそんな話するんだ?
 俺には関係ねぇーだろ!」





「そう?気になってるみたいだったから教えてあげたんだよ。」




「関係ねぇーよ!」




「だったらいいけど。」





それだけ言うと類は意味ありげな微笑みを浮かべ俺の前を歩き始めた









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