両親と進との食事を終え、部屋に戻るとマットに無理矢理飲みに連れ出されてしまった





それだけでも充分機嫌が悪いのに席につくなり彼が言った一言に完全にキレてしまった







「どういう事なの?!」






「だから恋人のフリしろって言ってるだけだろ!
 そんな怒んなくてもいいだろ?」






怒っているのは私よ!!




なのにどうしてあんたが怒鳴るのよ!!







「だから、どういう事か聞いてんのよ!」







「ちょっとの間だけでいいから、なぁ、頼む!」






「それが人に物を頼む態度なの?
 とにかくどうして恋人のフリしなきゃいけないのか答えなさいよ!」







「・・・どうしても、知りたいか?」






「当たり前でしょ!さっさと答えなさい。
 寝ぼけた事ばっかり言ってるとぶっ飛ばすわよ!」






「・・分かったよ。話すけど・・・怒るなよ!」







「そんなの聞いてみないと分かんないわよ!
 いいからさっさと話しなさいよ!」








私がそこまで言ってもマットはまだ話そうとしない・・





「ねぇ、話さないんだったら、私、ホテルに帰るわよ。」





そう言って席を立ちかけると




「分かったよ。ちゃんと話すから座ってくれよ。」





彼は私の腕を引っ張りながらやっと話す気になったらしい・・





仕方がないのでとりあえずもう一度スツールに腰を掛けた








「俺、この間見合いさせられたんだ・・・」





「知ってる。」






「・・・えっ?」







「さっきエドに聞いたのよ。
 で、その見合いがどうしたのよ?」







「マーガレット・ヘインズって名前で大学生らしいけど・・・」





「それも知ってるから、話を先に進めて。」







「ああ・・俺、即効で断ったんだけど・・
 なんか気に入られてるみたいで・・・」






「付きまとわれてんの?」






「いいや、そこまではいってないけど・・
 先月、彼女がオフィスまで来たんだ。」







「知ってるわよ。
 あんたが本気で怒ってたやつでしょ?」






「ああ・・見合い断った理由を聞かせてくれって言われたんだよ。」






「何て答えたの?」





「そのまま正直に答えたぜ。
 まだ、結婚するつもりはないからって・・
 言ったんだけど、全然納得してくんなくて。
 付き合ってる人がいないんだったら、自分との事を考えてくれって言われた。」






「それのどこが問題なわけ?
 考えてあげればいいじゃない?」





「考えたよ!考えたうえでちゃんと断ったんだよ。
 だけどあんまりしつこいんでつい、お前と付き合ってるって言っちまったんだよ!」






「はぁ〜〜〜〜?!
 あんた、バカじゃないの?何でそんな事言ったのよ!」





「仕方ねぇだろ!あの女がお前とはどういう関係なんだってうるさかったから、
 ついお前と付き合ってるって言っちまったんだよ!」







「つい・・って・・エラそうーに言うんじゃないわよ!
 どうしてそんなすぐにバレるようなウソつくのよ!」






「だからバレねぇように恋人のフリしろって言ってんだろ!」





「だからエラそーに言うんじゃないって言ってんのよ!」





「なぁ〜 頼むよ。もうすぐ此処にあの女が来るんだよ。」






「はぁ〜?来るって・・どうして・・?
 ・・って、ここメキシコだよね?」





「俺だってそれぐらい分かってるよ!
 さっきホテルで会ったんだよ。
 今日、こっちに着いたって言ってたけど・・俺が一番イヤな言葉言いやがった!」





「・・彼女、何て言ったの・・?」




「俺の顔見るなり“来ちゃった”って・・言いやがった!」






「・・・・・・・」

つくしが肩を震わせて笑っている






「笑うんじゃねぇよ!」





「クッククク・・で、そう言われてあんたは何て答えたの?」






「何も。とにかく今夜10時に此処で会う約束だけして別れた。」





「10時って・・後、30分程しか無いじゃない!
 やだ、私、帰る!あんたの問題なんだから自分で何とかしなさいよね!」





「ダメだ!あの女がお前にも会いたいって言ってんだよ。」





「どうしてよ?何で、彼女が私会いたいわけ?」




「知らねぇーよ!
 だからお前も此処に居てくれないと困んだよ!」





「・・信じられない・・
 何で、そんな話になってんのよ!私を巻き込まないでよ!」







「悪いと思ってるよ。だから話は全部、俺がするから
 お前は横に居てくれるだけでいいから。なぁ〜頼むよ。」




何なのよ〜・・一体・・




「・・ハァ〜、分かったわよ!
 でもね、今回だけだからね!いいわね!」





「分かってるよ、Thanks!」






「ねぇ 一つ聞くけど、彼女・・来ちゃったって・・
 もしかして一人で此処まで来たの?」






「あん?・・知らねぇ。」





私のOKが出たからだろうか、マットは気の無い返事を返しただけだった




「知らねぇ・・って・・あんたねぇ〜!」




マットのあまりの素っ気無さぶりに私が声を荒げると






「何だよ!どうして、そんな事気にすんだよ?」




「普通、気にするわよ!バカね。あんたはどうして気になんないの?
 彼女・・ヘインズ家のお嬢様なんでしょ?だったら、そんな彼女が
 一人で海外へ旅行なんてする?彼女、ちゃんとご両親にメキシコに
 行くって事話してきてるのよね?」





「知らねぇーよ!そんなに気になるんだったら自分で聞けよ!
 それにガキじゃねぇんだから大丈夫だろ?
 現に此処まで一人で来てるじゃねぇか!」





「・・そうだけど・・もし、彼女が黙って此処まで来てたら、
 今頃、NYで大騒ぎになってるんじゃないの?」





「さぁ〜な?だとしても俺には関係ねぇよ!」




「・・はぁ〜・・」





「何だよ!ババくせぇな!ため息ばっかつくんじゃねぇよ!」





「吐きたくてついてるんじゃないでしょ!
 ねぇ どうして彼女の事そんなに毛嫌いするの?
 お見合い相手だから?」




「違う。」





「じゃぁ 一度ちゃんと付き合ってみたら?
 案外、彼女が“運命の女”かもしれないわよ?」






「そんな訳ねぇだろ!
 あの女は俺の相手じゃない!!」




「そんなの付き合ってみなきゃ分からないでしょ?」




そう言ってグラスに口を付けているとマットが横から抱きついてきた


なに・・・?




「ちょ、ちょっと・・くっ付くんじゃないわよ!
 うっとおしい!」




マットを押し返そうとするがなかなか離れようとしない・・・






「ちょっと・・いい加減にしてよ!」




「いいだろ?!俺達恋人どうしなんだから。」




「フリでしょ!フリ!」






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