「総二郎、何やってんだ?あいつら?」





「知らねぇーよ!俺に聞くな!」





マットが牧野に抱きついているのを見て総二郎の機嫌が悪い・・



もちろん類も・・





類は普段から無表情だから分かりにくいけど・・



長い付き合いの俺には分かる・・



類は今、最高に怒ってる・・






「西門さん、先輩とマットさんって二人の時はいつも
 あんな感じなんですか?」






急に桜子に話しかけられてビックリしてしまった






「・・あっ!い、いいや・・仲はいいから、よく付き合ってるって間違われるけど・・
 マットがつくしにあんなにベッタリくっ付いてるところなんて初めて見た。」







「じゃぁ、今の二人の姿ってものすごくレアな光景なんですね?」





「ああ・・」






俺達が同じ店でそんな会話を交わしているのも

知らずにマットはまだつくしに抱きついている





「ねぇ!いい加減離れてくれない?」





「ヤダね!」




「・・ヤダって・・私はあんたにくっ付かれてるのがイヤなの!
 離れなさいよ!」




抱きついているマットを押し返そうとするのだけど・・

ますますマットは私の腰に巻きつけている腕に力を込めている・・・




「・・もう!
 ねぇ、いい加減ちゃんと答えなさいよ。
 どうして彼女と付き合うのがイヤなの?」





「・・別に理由なんてねぇーよ!」




「ウソ。」




「じゃぁ お前だったらどうするよ?
 見合い相手って言うだけで好きでもない相手と付き合えるか?」




「私がお見合いしたわけじゃないでしょ。」




「だから、もしもだよ。」




「私は・・・」




「ほら、お前だって好きでもねぇ相手ととりあえず付き合うなんて出来ないだろ。」



「今、私の事はどうだっていいでしょ!
 あんたの事よ。彼女がオフィスに来てた時も怒鳴って
 追い返してたみたいだけど、どうして彼女にそこまでするの?」





オフィスでの話が出るとマットは私から身体をはずし、

前を向いてグラスを手に持った


手元でグラスを遊ばせたまま・・・



「話したくない。」




「どうして?もしかして、それも私が関係してるの?」




私の問いかけにも彼は答えようとしない



「大丈夫だから、話してみて。」




少し考えているようだったが、しぶしぶマットが話始めた



「・・あの女、お前の事調べてた。」




「調べてた?・・って私の何を調べてたの?」



「あのお見合いはどうやらあの女の希望だったらしいんだ。
 相手の親は俺との見合いにはあんまり乗り気じゃなかった
 みたいだけど、まぁ、ペリー家の次男って事でOKしたみたいだ。」




「どうして其処に私が登場するわけ?
 関係ないでしょ?」



「ああ、けど向こうの親が人使って俺の事調べさせたらしい。」



「・・あんたの私生活って大抵の人は引くものね。」




「うるせぇーよ。そんでお前の事が出てきたらしい。
 最初に俺とお前の仲を疑ったのは向こうなんだよ。」





「疑ったって・・そんなのちょっと調べれば何でもないって事分かるでしょ?」




「けど、考えてみろよ。俺はお前の部屋の合鍵持ってるし、
 それにたまに泊まってる。そう言う関係だって思われても
 おかしくないだろ?現に俺達はよく恋人同士に間違われる。」




「何呑気に言ってんのよ!信じられない・・もう!合鍵返して!!」



「ヤダね!それにまだ話は続いてんだよ!」




「まさか・・それで私の事を調べたって言うんじゃないわよね?」




「そのまさかだよ!向こうはお前がライズ家の娘だって事まで
 調べられなかったみたいで、正体不明の怪しい女って事になってるぞ!」





「何それ?確かに私の情報は伏せられてるけど、
 正体不明の怪しい女って言うのは失礼じゃない?」




「分かってるよ。」





「その他には何、調べられたのよ?」





「後は総二郎と類の事ぐらいだな。
 あの女がオフィスまで来て、俺がお前と付き合ってて、
 お前は俺の他にも付き合ってる男がいるんじゃないかって言ってたからな!」



「ちょっと、おかしいでしょ?いくら総二郎や類の事調べたからって、
 あんたの事だって調べてあるんでしょ?だったらあんたが夜な夜な
 繰り返してる事だって知ってるわけよね?」




「そうだけど。俺が付き合ってる女って一回きりで
 名前も覚えてないような女ばっかりだろう?」




「えらそーに言うんじゃないわよ!
 そんな事、自慢にならないでしょ!」




「けどお前は違う、仕事だって一緒だし、付き合いも長いから気になったんじゃねぇか?」





「だから私と付き合ってるって言ったの?」





「そうだよ。あの女がオフィスにまで押しかけてきてウザかったし、
 お前と付き合ってるって言えば諦めると思ったんだよ!」




「・・だからって・・」




「イヤなんだよ!俺は!お前の事でとやかく言われんのが!
 お前は俺にとって大切な存在なんだ。総二郎や類にしたって同じだ!
 俺の大事なダチの事をちょっと調べたぐらいで
 とやかく判断されんのは我慢ならねぇーんだよ!!
 だからあの女は俺の“運命の女”じゃねぇーんだよ!分かったか!!」




一気に話終えたマットはずっと手元で遊ばせていたグラスに口を付けている






「・・・マット」







俯いてしまったまま顔を上げようとしない彼の横顔が

いつも私に見せる彼の顔とは全く違っていて戸惑ってしまう



確かにマットの彼女に対する態度は冷たいと思う反面、彼らしいとも思ってしまう





けど、彼が私や総二郎達の事を大切に思ってくれている事がなにより嬉しかった











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