「ねぇ マット。ありがとう。」




俯いたままの彼の頭を抱え込んで抱き寄せ頭に軽くキスをした







私のキスに驚いて顔を上げたマットだったが・・・


すぐに・・・







「俺、お前にキスされんのって・・久しぶりかも・・
 なぁ〜 そんなんじゃなく本当のキスしよーぜ!」





そう言ってまた私に抱きついてきたマットの顔は

もういつもの表情に戻っていた・・・




「もう、調子に乗るんじゃないわよ!」




彼を押し返しながら言っても一向に離れようとしない・・







もう!本当に離れてよ!

だけどどれだけ力で押し返しても負けるから!





「ねぇ 合鍵返して!」





「お前なぁ〜〜」






ほら!離れた!!







「情けない声出すんじゃないわよ!
 それとこれとは別でしょ。」








「ヤダかんな!俺はぜったぇー返さねぇからな!
 とにかく、あと少ししたらあの女が此処に来るから、
 お前は俺の横に居るだけでいいからな。」






「・・・分かってるわよ。
 何回も同じ事言わないでよ!」









もう!

めんどくさい・・




そう思ってマットを睨みつけるけど・・・






「お前なぁ〜もうちょっと愛想良く出来ないのか?
 そんなぶっちょう顔してたら怪しまれるだろーが!」







「うるさいわよ!
 横に居てあげるんだからどんな顔してようと私の勝手でしょ!」







【ウォッ!】







横に座っているマットがいきなり変な声を出したと思ったら、

派手な音を立ててイスから転げ落ちている




慌てて横を見ると今までマットが座っていた場所に類が座っていた・・・






「・・る、るい・・?」







「何してんの?」







「・・えっ!?な、何してんの・・って・・」






な、何・・?

なんだか・・ものすごーく怒ってるみたいなんだけど・・・


どうして・・・?







「・・る、るい・・こそどうしたの?
 こんな所で一人?」








横にいる類に問いかけたのに・・・


後ろからもう一人・・




聞き覚えのある声が聞こえてきた・・







「ちげぇーよ!俺も一緒だよ!!」






振り向くとマットを助け起こしている総二郎が目に入った






「・・へっ!?総二郎・・!」






「ちなみに俺達だけじゃない。」






そう言って総二郎が指差した場所は・・


店の一番奥のテーブルには美作さん達・・






私と目が合うと彼は笑いながらこちらに軽く手を挙げている・・

桜子も滋さんも笑っているのが見えた・・

サイアク・・






「ねぇ、いつから居たの?」






「お前らが店に入ってくる前から。」







「・・ウソ!サイアク・・だったら声掛けてくれればいいじゃない!」







「で、お前らは何やってんだ?」





「二人で飲んでるだけだよ!・・ったく類!
 お前手加減しろよな!イテーだろうが!」








マットの抗議の声も類は全く無視したままで、私はまだ彼に見つめられたままだ・・






そんな類の態度に総二郎はマットの肩に手を置いたままで






「マット、諦めろ。」






マットはそれでもまだ何か言いたそうだったが、

とりあえず類の隣に腰を下ろした






マットが座ったのを見届けると総二郎も私の隣へと腰を下ろす







私の左に総二郎、右には類・・


二人に囲まれて・・


何だか居心地が悪い・・


マットは類の隣で不貞腐れたままだ・・






「なぁ 類!其処どけよ!
 もうすぐ人が来るんだよ!」






「人が来るのにどうして席替わらなきゃいけないの?
 そこでもいいだろ?」






「ダメなんだよ!俺がケイトの隣じゃないと不自然なんだよ!」






何とか類と席を替わろうとしているマットに総二郎が疑問を投げかける






「マット、お前何言ってんだ?
 お前の方が不自然だぞ!?」






「いいんだよ。今日だけなんだから。
 とにかく類、席替われよ!」





「ヤダ!」






「ヤダ・・って・・類・・」






『ハァ〜』





マットと類のやり取りを黙って聞いていたつくしが

大きくため息をつくと事情を話し始めた





話を聞き終えた類はつくしの腕を取ると・・・






「そんな話に協力する必要ないよ!
 おいで。」




さっさとつくしの腕を掴んであきら達の元へと引っ張って行ってしまった






「・・えっ!?ちょ、ちょっと、類!
 イタイってば!」







強引につくしを引っ張って行く類の後姿を見ながら

今度はマットがため息を付いている







「マット、くだらないウソついてないで彼女にはっきりとその気は無いって言えよ。」






「言ったよ。何度もな!けど全然、諦めない・・・
 挙句の果てにはこんな所まで追いかけてきやがった!」







「まぁ 諦めてお前もこっちに来いよ!
 それとも一人で彼女と会うか?」






「・・分かったよ!!」





マットもしぶしぶ俺の後を付いてくる










←BACK/NEXT→
inserted by FC2 system