不貞腐れたままのマットがつくしの前に座ったのを合図に桜子が口を開いた






「で、先輩どうしたんですか?」







桜子に聞かれて私はもう一度、マットとの会話の内容を話した・・




マットは相変わらず不貞腐れたままで横を向いている




「先輩はOKしたんですか?
 そんなウソついてもすぐにバレると思うんですけど。」






「分かってるわよ!けど、彼女がカンクンまで来てるって言うのは事実だし。
 とにかく彼女と話してみないと・・」





「おい、ケイト!お前は何にも話さなくていいって言ってるだろ!
 黙った座ってるだけでいいんだからな!
 お前が話すとややこしくなるだけだろーが!」







「あのね・・もう充分ややこしくなってんのよ!」






「ややこしくしてんのはお前だろーが!
 それに俺と付き合ってるって事にしといた方が後々お前の為にもなるんだよ!!」





「ちょっと・・私の為ってどういう事よ?!」





なんだか会話の流れでつい口走ってしまったような感じで

いきなり慌てだすマット・・・

この二人が大学生の時から見てるけど・・

俺からすればこいつらは恋人同士って言うより

出来の悪い弟と何だかんだ言いながらもついつい世話を焼いてしまう姉の

ような感じがしている・・


普段の態度はいい加減で軽い印象を持たれる事の多いマットだが

実際は誰よりも自分の生きていく道を真剣に考え行動している男だ

そしてそのマットが誰よりも信頼し頼りにしているのがつくし・・・


相変わらずの二人のやり取りを聞きながらそんな事を

考えていた・・・


二人のやり取りはまだ続いている・・・





「・・だ、だからお前だって俺と付き合ってるって事に
 しとけば変な見合い話がこねぇだろって言ってんだよ!バカ!」




「バカ?バカはあんたでしょーが!
 変な見合い話って何よ?あんた何か知ってんの?」





「お前の見合いの話なんて知るかよ!
 けど、お前だっていい歳なんだからそんな話があったっておかしくねぇーだろ?
 それにお前、まだ結婚する気ねぇんだろ?だったら、俺と婚約するか?
 そうすれば俺もお前も無駄な見合いしなくてすむぜ!」




「ハァ〜・・どうしてそんな理由であんたみたいなバカと
 婚約しなくちゃいけないのよ!もう〜本当にバカ!」





「・・睨むなよ!」






つくしはマットを睨んだまま携帯電話を取り出している





「お前、今頃誰に電話すんだよ?」




「弁護士!今すぐパートナー解消する!!」





「あっ・!ちょ、ちょっと待て!!」






「待って欲しかったら今すぐあんたの知ってる事全部話なさい!」




「・・なんにも知らねぇーよ!」





「うそ!」





「ウソじゃねぇーよ!本当に何も知らねぇーんだよ!」





押し問答を続けているとつくしが手にしていた携帯電話がいきなり鳴った





『キャッ!』



いきなり鳴った携帯にビックリしたつくしが思わず携帯を落としてしまっている






慌てて携帯を取り直し電話に出ると相手はエドからだった





「Hello〜?」





『Hi!ケイト?』




「どうしたの?」





『マット何処にいるか知ってる?』





「うん、目の前に居るけど。」





『そっか、ちょうどよかった。マットに替わってくれる?
 マットの携帯にいくら掛けても繋がらなくて困ってたんだ。』






「OK。ちょっと待ってね。」





つくしは携帯から耳を離すと



「マット、あんた携帯どうしたの?」




「あん?」



間の抜けた返事を返しながらマットは自分の携帯を取り出している




「バッテリー切れ。」





「そう、エドから電話よ。
 あんたに代わってくれって。」






「何の用だよ?
 お前が聞けよ!俺はヤダ!」





「バカな事言ってないで早く出て。」





つくしに携帯を押し付けられたマットはしぶしぶエドからの電話に

出たが、二言三言話しただけで怒鳴って電話を切ってしまった





その様子を俺達は唖然として見ていた





マットがつくしに携帯を投げ返した・・・




「ちょっと!何怒鳴ってんのよ?」




「うるせぇーよ!どいつもこいつも!」




「何よソレ?」





訳が分からないと言った表情でマットを眺めていると

再びつくしの携帯が鳴った







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