俺はつくしの事で司にとやかく言うつもりはなかった




さっきの司の言葉も恐らく本心から出たものだろうし・・




ただ、俺はこれ以上つくしの悲しそうな表情を見たくないだけだ




つくしとマットが席を移ってから誰も口を開かない・・


滋と桜子はずっと俯いたままで涙を堪えているようにも見える






そんな中、類は一言"眠い"とだけ言うと席を立ち、つくし達に声を掛けて店を出て行ってしまった






その類の後を追うように滋と桜子もホテルへと戻ってしまった






その場に残ったのは俺とあきらに司の三人だけ・・








「総二郎!お前も俺に何か言いたい事があるんじゃねぇーのか?!」





その妙に嫌味ったらしい物言いに思わず切れそうになるのを

グッと堪える



「・・・いいや、お前に言いたい事なんてなんもねぇーよ。
 お前こそ何をそんなにイラついてんだ?」





「俺がイラついてる?何で俺がイラつく必要あんだよ!
 イラついてんのは総二郎、お前の方だろーが?!
 お前、あの女に惚れてんだろ?
 お前もあのマットとか言う野郎と同じで俺に怒鳴りたいんだろーが?!」






「・・確かに俺はつくしに惚れてるけど、それとこれとは関係ねぇーよ!
 お前にあいつと仲良くしろなんて言わねぇーけど、
 あいつは俺や類のダチなんだよ!お前が俺の事ダチだと思ってんなら
 ダチのダチにぐらいもうちょっと敬意を払ったらどうなんだ?
 それすらも出来ねぇーほどあいつの事気になんのか?」






総二郎が真っ直ぐ司の目を見たままで話している




その態度で総二郎の牧野に対する想いが痛いほど伝わってくる・・・





・・ったく・・どういつもこいつも・・・

なぁ・・牧野・・お前は大した女だよな・・

総二郎にこんな顔させんだもんな・・・








総二郎に類・・

親友の二人が決して自分の気持ちを押し付ける事なく、

ただひたすら愛しい女の側で静かに支え続けている・・・




いつの間にか出来上がってしまった奇妙な三角関係に

身動きが取れなくなってしまっている・・・



なぁ・・総二郎?類?

お前らこの先どうするつもりなんだよ・・?

・・きっと、お前らの事だから・・

どうもしないんだろうけどな・・


いいのかよ?

本当にそれで・・





総二郎はそれだけ言うとまだ睨みつけている司を

そのままに店を出て行ってしまった





総二郎の後ろ姿を追いかけていた俺の視界につくし達の座るテーブルが入った

テーブルにはエドと見知らぬ女性が一緒にいた・・


後姿しか見えないが・・

あれがマットの見合い相手か・・













総二郎は俺の挑発に乗ることなく言いたい事だけ言うと席を離れてしまった




これなら怒鳴られた方がマシだ!




総二郎の言葉に何も言い返せなかった




俺が知りたいのはこの胸のモヤモヤの原因・・




自分でもおかしいぐらいにイラ立っているのが分かる




くそー!!頭痛までしてきやがった!




あきらもさっきから一言も話さない・・





そんなあきらとの沈黙から逃げるように俺も店を後にした




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