進の結婚式がホテルの中庭を借り切って行われた


綺麗に刈り込まれた芝生と雲一つ無い青空のコントラスト

喜び一杯の新郎・新婦とそれを見守る人々


色とりどりの花々に囲まれ陽気なリズムを奏でるバンド


どの顔にも笑顔を浮かんでいる


その中で何故か新婚カップルよりも目立っているのが女三人組


三人共にスタイル・ルックス共に申し分はないし
家柄にしたって同じ


だからあの三人の外見だけに惑わされ騙されてしまう奴も多い・・

だけどはっきり言ってあの三人・・
一筋縄じゃあいかない・・・


一人は口を開けばちょっと気の弱い男なら泣いてしまうんじゃないかって思うくらい
ピンポイントで痛いところを突いてくるし

一人は次に何が飛び出すか分からない
突飛な行動と言動で周囲を振り回し
かき回していくハリケーンのような女だし


最後の一人は超〜が付くほど鈍感で
呆れるほどお人よしなのに気が強くて涙もろい
強さを弱さを巧みに同居させて俺達を翻弄する女



日除けテントがいく張りも張られている中庭でダンスをしたり
談笑したりそれぞれが楽しいひと時を過ごしている

そんな中であの三人組はと言うと・・

桜子はこんな場所だと猫被るからコロリと騙されている男と
にこやかに話しをしている

滋はと言うとまず嫌がるつくしの手を引っ張り中央のダンススペースに引き摺って行き
無理やりダンスを踊った後はバイキング形式で用意されている食事テーブルの前で
自分の皿だけでは飽き足らず牧野の皿にまで目一杯食べ物を乗せ喜んでいる


やがて皿一杯に食べ物を乗せた滋と牧野は俺達の座るテーブルへと戻ってきた

二人に気付かれないように軽く溜息をついた俺と総二郎

類はと言うと暑いくらいの陽射しを浴びてすでに半分夢の世界へと旅立ってしまっている・・




「滋さん、乗せすぎ!こんなに食べられないよ!」


「え〜大丈夫だよ〜!まだデザートが残ってるんだから
 つくし早く食べちゃわないとあの美味しそうなガトーショコラがなくなっちゃうよ!」


「食べられるかなぁ?
 でもあのガトーショコラ美味しそうだしなぁ〜・・
 よし!頑張って食べちゃおう!」


ハァ〜・・それってそんなに悩む事か?
この二人・・共に資産数千億を誇る財閥の令嬢なのに・・


「お前らケーキぐらい何時でも喰えるだろ・・
 いい加減にしとかねぇーと腹壊すぞ!」


「進の結婚式のガトーショコラは一生に一回だけだよ!」
「進君の結婚式のガトーショコラは一生に一回だけだよ!」


綺麗に重なった二人の声・・

あ〜この二人って基本的に同じなんだなぁ〜って思った・・


返す言葉なく目の前でチキンにかぶりついている滋と牧野を眺めていた・・

程よく冷えたシャンパンが照りつける日差しで火照った身体を冷やしてくれる


カンクンに来て初めての穏やかな一日だった・・・



だけど・・穏やかだったのは本当にその一日だけで・・

次の日から3日間はただただ滋に振り回されていただけ


牧野が一緒じゃなかったら俺も総二郎も類も確実に日本に帰っていただろう・・


まず披露宴パーティーの最中に進達がこの後、新婚旅行でカリブ海クルーズに出かける事を知った滋が
自分も行くと言い出したが桜子にこの後は先輩についてNYへ行くんでしょ?の一言のお陰で
何とかカリブ海行きは回避されホッとしたのもつかの間・・

その後はノンストップでイルカウォッチングにホエールウォッチング、
海にプールにショッピングにと息つく暇無しに連れまわされ
夜は牧野の部屋で大宴会・・



日本に帰ってやっと女達・・って言うか滋から解放された・・



日本へ帰る俺と総二郎と類はライズ会長が用意してくれたチャーター便を一旦ロスで乗り換え帰国した


NY行きのメンバーはそれぞれが自家用機を持っているメンバーばかり・・

ライズ会長とエドが自家用機を持っているのは当たり前だとしても
マットとつくしがそれぞれ持っているとは思ってもみなかった・・


カンクン国際空港からそれぞれNYへ向かって離陸していく
四機の自家用機を見送ってから俺達もチャーター便に乗り込んだ


危機管理というものが徹底しているアメリカで大会社の経営者一族が同じ機に同乗する事は
有り得ないけれどあの貧乏牧野と自家用機は恐ろしくミスマッチだった・・


日本に帰国して2週間、再び日常が始まっていた

正月気分もすっかり抜け、カンクンでの出来事もすっかり落ち着いていた1月の中ごろ
屋敷の書斎で仕事をしていた俺の携帯が鳴った


ディスプレイに表示されているのは見覚えの無いナンバー

この携帯はプライベート用だから番号を知っている人間は限られている

不審に思いながらも電話に出ると掛けてきていたのは椿姉ちゃんだった・・













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