その後、しばらくは日本に居る三人ともそれぞれ仕事が忙しく
連絡も儘ならない日々が続いていた



NYでも変化は無いようで時折、総二郎の元へと掛かってくる
牧野からの電話の声も変化は無かった




カンクンでの奇跡のような再会から3ヶ月が過ぎた頃
あきらの元へ桜子から連絡が入った




用件は来月の頭にNYへ行く事が出来るかと言う事だったが
急な話しだったので難しいと伝えると受話器の向こうからは
落胆したような桜子の声が響いてきた





「どうしても無理ですか?」




「ああ・・難しいな。
 どうしたんだ?NYで何かあったのか?」




「私もよく分からないんですけど、集合かけてるのが滋さんなんです。」




「滋?」





「ええ、どういう用件なのか詳しく教えてくれないんですけど
 先輩のスケジュールも確認してあるみたいですし
 ちょうどその日は花沢さんも西門さんもNYに居るみたいなんです。」






「滋の奴・・今度はなに企んでるんだ?」






「分からないんですけど・・
 とにかくその日の夜だけ空けてくれればいいって言ってましたから。」





「そうか・・なぁ、司にも連絡したのか?」





「多分・・全員集合って言ってました。」






滋が何を企んでいるのか分からないが司の記憶が戻っている事は
まだ桜子も滋も知らないはずだよな?





「どうしたんですか?美作さん?」






「ああ・・いや、なんでもない。」






「道明寺さんの事ですか?」





まさか知ってんのか?



そんな俺の小さな動揺には気付かないで桜子は言葉を続ける





「それなら大丈夫ですよ。」





なにが大丈夫なんだ?

そう思ったが口には出さずに桜子の次の言葉を待つ





「滋さんが先輩も道明寺さんもお互いが出席する事の了解は
 得てるみたいですから。」







恐らく桜子も滋もカンクンでの司の態度を知っているからだろうけど・・





司にとっては滋からの呼び出しに牧野も来るという事は
願ってもないチャンスだろう




こりゃどんな無理してもNYに行かないとな・・





「分かった、スケジュール調整してみるよ。」





「よろしくお願いします。」





結局、渋い顔をする秘書を何とか押し切ってNY行きを決めたが
休暇が取れたわけではなくしっかりと仕事を入れられてしまった・・





行きは桜子と共にNYへ向かう





社会人になって何の用件なのかも聞かずにとりあえず呼び出されて
NYまで行ってしまう自分にも多少呆れているが
やっぱり仲間達の事はほってはおけない・・
そんな自分も嫌いじゃない






ただ呼び出したのが滋だという事に嫌な予感はするのだが・・





桜は本当に何も知らないようだった
もしかしたら二人で組んでなにか企んでいるのかもしれないと
思っていたが隣に座る桜子の様子からはそんな印象は受けなかった





飛行機で俺の隣に座っている桜子は先ほどからずーっと
滋からの無理やりの呼び出しを受けた時の状況を愚痴っている





この二人が何も企んでいないとすると何があるんだ?





後2時間ほどでNY・ケネディー国際空港に到着する
空港には総二郎が出迎えに来てくれる予定になっていた






「美作さん?どうしたんですか?」





「えっ、何が?」





「なんだかずっと考えこんでいるみたいなので。」





「そ、そうか?」





「はい。ずーっと眉間に皺が寄ってますよ。」





あ〜あ〜そうだった・・
桜子は妙に勘がよくて・・
そして容赦が無かった・・





だけど女三人の中で歳は一番下だが一番しっかりしていて頼りになる




あのハチャメチャな滋と鈍感な牧野をなんだかんだ言いながらでも
上手く纏めているのは桜子だ





こいつには話しておいたほうがいいかもな・・






「なぁ・・桜子?」





「はい。」





「司の記憶が戻ってるんだ。」






隣で桜子が一瞬息を呑んだのが分かった
だけどそれもすぐに終わり、今度は質問攻め・・






「いつですか?」





「カンクンから戻ってすぐだ。」






「どういう状況でですか?」





いつ、どこで、どうして・・という質問が続き
最後には俺を少し恨めしそうな瞳で睨みながら




「多分、滋さんは道明寺さんの記憶が戻ってるって事は
 知らないと思いますけど・・
 そういう重要な事はもっと早くに教えておいてくださいね!
 私にも心の準備ってものがあるんですから!」







「悪い・・」






「それで先輩も知らないんですよね?」






「ああ・・恐らく。」






「分かりました。」






桜子はそれっきり何も話さなくなってしまった







俺達を乗せた飛行機は予定通りケネディー国際空港へと到着した










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