パーティーは夜遅くまで続き、結局最後まで残ったのはいつものメンバー





マットもあきらも俺もかなりの量の酒を飲んでいて


流石に少し酔いが回ってきている





類はとっくにクッション抱えてソファーで夢の中だし


その横では珍しく桜子もダウンしている






司もかなり飲んでいるはずなのだが見た目は全く変化なし




滋なんてもう問題外で完全な酔っ払い・・





さっきから誰かがちょっと動いただけで大笑いしてやがる






そんな中でメイドに後片付けの指示をしていたつくしも戻ってきて



やっと一息ついている・・





けど・・





なんか微妙〜な空気なんだよなぁ〜・・





時計は深夜2時を回っている





まず最初に部屋へと引き上げたのがつくしで







「私、そろそろ寝るね。
 後は自由にやってて。」





「えぇ〜〜つくし〜!もう寝ちゃうの〜?!」





「うん、明日も朝から予定があるから。」





「え〜〜つまんな〜い!もっと飲もうよ〜〜!!」





「ごめんね、滋さん。
 また今度ね。」





つくしはそう言うとソファーで眠ってしまっている桜子と類を



引っ張り起こしリビングを出て行ってしまった







その後は楽しいんだかどうだか?


微妙〜な感じのままで気が付くと俺もベッドに倒れこむようにして眠っていた





むっくりと顔を埋めていた枕から顔を上げ時計を確認すると





午後12時を回っている







まだぼんやりとする頭のままでリビングへと入って行くと





誰も居ない・・





みんな出かけたのか?





なんて思いながらコーヒーを淹れリビングの背の低いテーブルの上に置かれていた新聞を手に取った







しばらくするとバッチリと化粧をした桜子が帰ってきた






「西門さん、おはようございます。」






「おう、お前、出かけてたのか?」






「ええ、ランチをいただきに近くのレストランまで。
 こちらではシェフも居なければお茶を淹れていただけるメイドも居ないですから。」





・・って






たしかにここは行き届いてるとは言えねぇーけど・・





俺に嫌味を言うなよ!





「他は出かけてんのか?」






「F3の皆さんはお仕事に行かれましたけど、マットと滋さんはお帰りになりましたよ。
 先輩も出かけてるみたいです。」







・・・って事は暇なのは俺と桜子だけって事か・・・







けど、今日の俺はこいつの相手してられる程の元気はねぇーな・・




そう思って飲みかけのコーヒーを持って部屋に戻ろうとした俺の背中から




キッチンから水を持って出てきた桜子の声が追いかけてきた








「今晩、また皆さんでディナーをご一緒しましょうって美作さんがおっしゃってましたけど。」







「了解!」






短く返事を返すと部屋へ戻りベッドへゴロリと横になると再び睡魔に襲われ目を閉じた・・







目が覚めたのはそれから3時間後





我ながらよく寝たもんだ・・




これじゃあまるで類じゃねぇーか・・?




寝すぎたせいか身体の節々がダルイ



ダルさの残る身体のままベッドから出てリビングへと入って行くと類が戻っていた






今夜は俺と類、桜子の三人であきらに指定されたレストランへと向かった






このレストランは最近NYで話題になっていて






うりはフレンチとエスニックの融合だとか・・





とにかくいつも一杯で予約も数ヶ月先まで取れないらしい





あきらの奴・・どうやってこんなとこの予約を取ったんだ?





入り口であきらの名前を告げると通されたのはぐるりと周囲を




囲むように背の高いソファーが配されているテーブルだった







「よお!早かったな?」





「おう!」






テーブルにはすでにあきらにマットと滋そして司の姿もあった




司は記憶が戻ってから明らかに変わった・・




いや変わったというかあの頃に戻っていた





それに今までは仕事が忙しいからという理由で




俺達ともあまり会っていなかったのに





最近では呼び出しにはすぐに応じてくる





それもこれも全てつくしに会いたいがためだろうけど・・・







「総二郎?ケイトは?」






「俺は今日会ってねぇーぞ。」






「先輩なら直接ここに来ると思いますよ。
 時間とお店は伝えておきましたから。」





「じゃあ先にやってるか。」





「そーだな。」






その言葉を合図にワインが運ばれてきて和やかな雰囲気で食事が始まった




食事が始まって10分ほどでつくしが到着した





普段はアップにしてることが多い髪を今日は下ろし



柔らかい空気を纏って現れたつくしは






"遅くなってごめんね"





なんて言いながら俺の隣に座ったがどこかいつもと様子が違っていた




おかしい・・・





いつも変なのだが




今日はどこかぼんやりしているというか・・・





何か考え事をしているみたいだった・・・






話しかけられても上の空で空返事を返してくるだけ






「オイ!ケイト!聞いてんのか?!」






「・・えっ?!・・何?あっ・・ごめん、聞いてなかった」





「ハァ〜・・ったくお前はさっきから何ボーっとしてんだよ!?」





「・・ごめん・・ちょっと考え事してたのよ!
 で?なんなの?」




「親父さんとお袋さんは元気だったのかって聞いてんだよ!?」





「あっ・・うん、元気だったけど・・
 どうして今日、実家に帰ったって分かるの?」




「お前の服装見れば分かるんだよ!」






「そ、そうなの?」





確かにマットの言うとおりだった



つくしは普段、仕事の時はカッチリとしたスーツを


休日などはラフな格好をしている事が多い




友人達と出かける時だって全身ブランド物の


それも新作を身に着けるような事はしていない




だけど今日は上から下までグッチの新作で



身に着けている宝石も明らかに普段とは違う





つくしがこんな格好をする時は大抵、実家に呼ばれた時







「で?親父さんは何の用だったんだ?」






「・・別に・・特に用があったわけじゃないわ。
 久しぶりだったからそれだけよ。」






「じゃあなんでそんなボーっとしてんだよ?
 仕事でなにかトラぶったのか?」





「なにもトラぶってない。
 もういいでしょ?なんでもないからほっといて!」





つくしはそれ以上、話しをしたくないようで彼女にしては珍しく


強い口調で話しを終わらせた




なんとなく気まずい沈黙が降りてくるけどマットは


全く気にしていない様子で話しを続けていく






「お前、日本での式に出れんのか?」





「出席するつもりだけど・・」





つくしがそう答えている時、携帯が鳴り



"ちょっとごめんね"と言い残しテーブルから離れた




5分ほどで戻ってきた彼女は再び席に戻ることは無く






「ごめん!急用が出来たから行かなくちゃいけなの。
 本当にごめんね!」






話しながらバッグを手にしたつくしに滋が慌てて椅子から腰を浮かせた





「つくし?仕事?私も行った方がいいよね?」





「大丈夫だよ、滋さん。仕事じゃないから!」





「もう車は呼んだのか?」





「うん、呼んだ。慌しくてごめんね。
 後はみんなで楽しんでね。」






そう言ってあっさりとレストランを後にしたつくし







この時点で俺達はまだ知らなかった・・・






この日、つくしに何が起こっていたのかを・・










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